Does the sheep count the sheep クラリス、子羊は悲鳴をあげなくなったかな? ――引用:羊たちの沈黙
夜は嫌いだ。静寂が耳に煩いから。
「――みにくい羽獣の子が水の上に眼を落とすと、そこに映っていたのは、もうあの灰色の羽獣ではありません。真っ白に光り輝く羽獣でした。そうしてその羽獣は、あたらしい仲間と一緒に幸せに暮らしました。……、はあ。あなた、まだ起きていたんですか?」
ベッドサイドの椅子に腰掛けていた彼が、ベッドに横たわる私にちらと視線を向ける。全く眠る気配が見えないことに、その表情が渋いものへと変わった。コーヒーでも飲みすぎたようだった。雰囲気としては一リットルくらいだろうか。
「いや、いつ聞いてもいい話だなと思っていてね。生まれた時からその羽獣の勝ちは決まっていた、ということだろう?」
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