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    なつだ

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    なつだ

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    一二三から告白するひふ幻。短いギャグを目指しましたがそうはならなかったです。タイトル通り傍目から見ればどっちもどっち、な感じです。

    どっちもどっち「今日も美味しかったです、ご馳走様でした」
    「良かった、口にあったみたいで!」

    食後のお茶でも淹れてきます、と席を立った幻太郎の背を目で追いこちらが見えていないことを確認し、自分の荷物を引き寄せる。
    中身を確認し、今日こそは、と決心をする。


     なんやかんやありながら幻太郎の家に気兼ねなくお邪魔して手料理を振る舞って、楽しくお話しが出来る仲になる頃には一二三はすっかり幻太郎のことが好きになっていた。

    素直じゃないし飄々として本心が見えづらいところもあるが、時折見える本音や表情が可愛いのだ。もっと自分の前で素直になって欲しい、色々な表情を見せて欲しい、と想いは募るばかりだったので、今日は告白しようと思い立ったのだ。

    これまでの道のりは決して平坦なものではなく、人慣れしていない猫にそっと近づき距離を詰めて自分は害をなすものではない、を証明し続けてきたようなものだった。
    今では、コイツがいればまあご飯も食べれるし家も片付くし、会話もまあ悪くない、くらいには思われていると思う。

    懸念があるとすれば、一二三が幻太郎の好みのタイプではなさそう、ということだ。
    幻太郎は本来は世話を焼きたいタイプで、自分が与えるもので相手が喜んで欲しいと思うのだと思う(一二三調べ)
    だからシブヤのチーム内でも、帝統が素寒貧になり泣きついてきても衣食住を与えあまつさえお金まで貸したり、乱数が抱きついてきてワガママを言ってもはいはい、と受け入れて楽しんでいるのだ。

    それに比べると、と一二三はむう、と唸る。
    自慢ではないが料理は出来るし家事だってお手のもの。トークだって伊達にシンジュクナンバーワンの称号を持っているわけではないので知識欲の高い幻太郎を満足させてあげられているはず。
    最初からなんでも出来るわけではないが、器用な方だからある程度のことは出来るように努力も出来る。顔だって言わずもがな、百歩譲ってタイプじゃないにせよ不快には思わないだろうとは思う。

    女性恐怖症はあるが、それでも自分で言うのもなんだがそこそこの優良物件だと思うのだが、幻太郎のタイプがいかんせん少し隙のある完璧すぎない人物だとすれば、自分はそこから外れるのでそこだけどうしよう、と自信がなくなってしまう。

    しかしながらそんなことで幻太郎への気持ちを諦められるはずもないし、なにも一発で決めようとは思っていない。
    これからもゆっくりじっくり自分を売り込めばいい。

    「ずいぶん難しい顔をしていますね」
    「わ!びっくりした……」

    カムチャッカ王国の王様にもらったお茶です、なんて今日も茶目っ気のある嘘をつきながら湯呑みを差し出す幻太郎が可愛くて、今だ!と一二三ら姿勢を正す。

    「あのねゆめのん!!」
    「わあ、大きな声」
    「俺っち、ゆめのんが好き!」

    だから付き合ってください!!と言ってから、プレゼントを差し出した。
    幻太郎は、普段あまり見られないくらい呆気に取られている様子で、たまらず一二三は言葉を続けた。

    「いきなりでごめん、けどもう自分1人でこの気持ちを抑えられなくなっちゃって。友達でもいいんだけど、でももっと近くにいて欲しくて。ゆめのんにそんなつもりがないのもなんとなく分かるんだけど、だけど」
    「……お付き合い、ですか」
    「そう!友達よりもっと気兼ねなくというか、近いところにいて欲しいしいたい!」
    「分かりました、いいですよ」
    「いきなりは難しいことはわかってるから……って、え?今なんて言ったの?」
    「だから、いいですよと」
    「……あー、そうだよね、うん、嘘ですよってことね?わかってるよ、これ一回で決めようって思ってないから俺」
    「…………」
    「だからこれからも俺っちにチャンスちょうだい?」
    「……じゃありません」
    「え?なに?」
    「うそじゃ、ありません……」

    そう言う幻太郎を見ると顔を真っ赤にして涙目で一二三を見上げている。それはもう、嘘をついているようには見えなくて、一二三は思考停止してしまった。

    「え、え、え?」
    「……その、嘘じゃないですから。手に持っているものも、いただきます」
    「ええ、はあ、うん、どうぞ……」

    そうして幻太郎がプレゼントを開くと、栞が。

    「小生をイメージしてくれたんですか?」
    「うん、そう……」
    「嬉しいです、とても。これも、嘘じゃありません」

    表情を見れば嬉しそうな笑みを浮かべていて、一二三の脳内は大混乱だった。
    だって、だって!

    「あの、ゆめのん」
    「はい」
    「今ならまだ間に合うよ、嘘ですよ、ってやつ」
    「……疑り深いですね。そんなに嘘にして欲しいんですか?」
    「いや、違うんだけど、でも信じられなくて。だってゆめのん俺っちのことタイプじゃないでしょ?」
    「そのこころは?」

    怪訝そうな表情の幻太郎に一二三は説明をする。幻太郎は世話を焼きたいタイプだけど自分は焼く方だから違うタイプで、そこが心配だ、と。

    「……もしかして、自分のこと世話焼かれない方だとおもってます?」
    「え?そうだけど……」

    申し訳なく思い幻太郎を見ると、またもや呆気に取られた表情を浮かべていた。

    「貴方って人は本当に……」

    幻太郎はそう言ってから声を上げて笑った。
    一二三には笑われている意味が分からないので幻太郎が笑うのをただ見つめるしか出来なかった。

    「ええ?どーいうこと?」
    「どうもこうもありませんよ、ふふ、おかしい……!」

    幻太郎は今度は笑い過ぎの涙を浮かべている。

    「ああ、面白い。本当に貴方は飽きませんね」
    「全然意味分かんないんだけど……」
    「ふふふ。すいませんね、実は小生、世話が焼けるんです」
    「そうなんだよね、俺っちからするとゆめのんめっちゃ世話が焼けるんだよね!」
    「そうそう。あなたは世話を焼くのが得意でしょう?どうぞこれからも小生の世話を焼いてくださいな」

    もちろん任せて!と嬉しそうに飛びついてくる一二三を受け止めながら、幻太郎は笑いを堪える。
    確かに一二三は生活面をだいぶ支えてくれているが、本当は幻太郎だって一二三の世話にならなくてもいいくらいには自立出来る。それを、世話を焼きたくてたまらない、と態度に出ている一二三のために焼かせてあげているのだ。
    普段はシンジュクナンバーワンホストだなんて気取ったように聞こえる一二三も、言動があけすけで人の話を聞かないところもあったり、女性恐怖症もあって中身は言うほど完璧じゃないところが幻太郎は気に入っているのだ。

    そんな幻太郎の思いも知らずに、自分が世話を焼いてあげていて、しかもそれなりに出来た人間と思っているだなんて、ああ、なんて世話の焼ける人。自分の好みは確かに世話が焼ける人なので、あなたは好みのタイプですよ、なんて。

    今は言うのはやめておこう。それよりも手に入ったぬくもりで暖まるのが先決だ。
    幻太郎は一二三の背中に手を回して、そのぬくもりを堪能するのだった。





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