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    なつだ

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    なつだ

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    前書いたやつの続き。アニメで2人がしゃべった(?)記念に加筆修正して書きました。蛇足感がありますが…とにかくアニメ良かったので祝いたい気持ちです‼︎

    ちゃんと仲直りした 途中しっかりタクシーを使ってシンジュクに降り立った頃にはすっかり夜で、カブキ町はこれからが本番、といったようにギラつくネオンが幻太郎を迎えてくれた。正直派手に人工的にギラギラしている様子はあまり得意ではないが、それでも彼がいる街、と考えると途端に愛おしくなるから不思議だった。

     タクシーに揺られている間もずっと一二三のことを考えていた。

     少しずつ冷静になっていく頭で考えるのは、もう一度一二三に会えるならなんと言葉を告げるか、と、まだ間に合うだろうか、ということだった。あの日の一二三は今まで見たことのない冷たい眼差しだった。いつもとろけるような甘い眼差しからあんな冷たいものが出るのか、というのも驚きだが、今から会えたとしてまたあの冷たさに耐えられるか自信がなかった。

     あの日のことを考えると気持ちが落ち込んできてしまって、歩く速度が遅くなる。これから飲みに行くであろう人たちにぶつかられながら人混みをとぼとぼと歩く。

     そういえば、勢いで来てしまったが店の場所を知らない。今日出勤かも知らない。出勤時間は?同伴とかがあればもっと遅い時間に入店するのでは?本当に自分は一二三と付き合っていたのか?と思うくらい、実は一二三のことを知らない自分がいた。


     とぼとぼ歩いているうちに、一二三の顔が映ったどデカい看板があって、その先にお店が見えた。
     ホストクラブには初めて入ることになるので緊張してくるが、ここは正念場だと自分を奮い立たせ、店の中に入った。



    「……ふう」

     通された部屋はいわゆるVIPルームだった。
    店に入った瞬間受付の黒服が驚いた表情で自分を見た後、インカムでなにかを連絡していた。
    その後こちらから特に何も言っていないがあれよあれよとこの部屋に通された。

    よくよく考えれば敵チーム、しかも二番手同士因縁の相手だ。敵城視察、挑発行為、一触触発。それは皆驚くだろう。
    そんなこと百も承知だったのに、すっかり頭から抜けていた。

     一二三に用がある、と告げれば黒服たちは顔色を変えて、少し待つように言ってきた。
    脅かすつもりはない、との意思表示も兼ねてこの店で一番高い酒を、と頼むと、小さく悲鳴が上がる。背に腹はかえられない、一二三の時間をなるべく確保するためには。

     ボトルが来てもそれを開けることはしなかった。本来はヘルプがつくらしいが、それも全て断った。2人で、自分はシラフで伝えないといけないと思ったからだ。


    「うん、大丈夫。僕がいいと言うまで人避けをしてくれ」

     一二三の声が聞こえて顔を上げると、ホストモードの一二三がドアを閉じているところだった。
    1ヶ月も経っていないがずいぶん久しぶりに感じた。

    「やあ、久しぶりだね」

     隣、座っても?

     自分に向けられているのにどこか他人行儀に聞こえるのは、一二三が恋人としてではなく、客として対応しているからだとすぐ分かった。

    「向かい側でお願いします」

     目を見て話したかったのでそう頼むと、少し目を細めて微笑んだ後、わかったよ、と一二三は向かい側の席に座った。

    「何か飲む?既にリシャールは入れてくれたみたいだけど」
    「いえ、お酒は結構です」
    「その様子だと疲れていそうだね。ノンアルコールもあるからホットを頼もうか」

     幻太郎の返事を聞く前に一二三は部屋にある電話でホットのノンアルコールを頼み始めた。

    「あなたの分も何かどうぞ」
    「ありがとう。……じゃあ同じ物をもう一つ頼むよ」

     電話の向こうに告げて、取りに行ってくるね、と部屋を出て行く。

    そこでひと息ついた。

    久しぶりに会うが彼自体は当たり前だが変わらず、自分ばかり緊張しているようだ。


    「どうぞ、熱いから気をつけて」
    「ありがとうございます」

     優しく差し出されたそれを見るに留める。手を付けない幻太郎を見て一二三が、飲める温度にしてあるよ、と少し笑う。

    「ありがとう、ございます」

     その笑顔がいつもの一二三だったから、不覚にもときめいてしまい誤魔化すようにコップに口を付けた。


     それから、部屋に落ちるのは沈黙だった。いざ行かん、と勇んで来たはいいが、肝心の言葉がまとまらず作った拳を見つめるだけしか出来ない。

     一二三は指名されたためか接客として話しかけてはくるが、客として扱われるのが嫌になり、こちらが話すまで話さなくていい、と告げた。

     そうなると一二三も何をするわけでもなく座っている。いつまでここにいられるか分からない。とりあえずもう一本くらいはボトルを入れたほうがいいだろうか。

    「……すいません、もう一本シャンパンを入れたいのですが」
    「飲まないのに入れなくてもいいんだよ」
    「今小生は客なのであなたを買うにはこれしかないんです」
    「……それもそうだね。じゃあ、どれがいい?」

     そしてまたボトルが入り、一二三が取りにいって戻ってくる。

    「今日は、どれくらいここにいられますか」
    「そうだね……平日でそこまで指名もないはずだから、それなりにはいられると思うよ」
    「そうですか」
    「ただ、店が終われば帰ってもらうことにはなるけれど」

     そう言われた瞬間、分かってはいたが今は完全に恋人ではなくホストと客なのだ、と実感した。それだけでは嫌だ、と自分の胸が強く痛む。

    「……嫌です」
    「嫌、って……どういうこと?」
    「だって……もっとあなたといたいと思います」
    「そう、なんだ。ねえ、それはどうして?」

     顔を上げると一二三がこちらを見ていて、その視線に熱がこもっているように感じた。

    「それは……」

     思わず言い淀んでしまうと、一二三が卓に手をついて身を乗り出した。

    「言って。言って欲しい、夢野くんから」

     懇願にも聞こえる声だった。その瞬間、口が動いた。

    「……好き、だからです。あなたのことが」
    「だから一緒にいたいし、この前のことも悪いと思っています。この前は……ごめんなさい」

     あの時は恥ずかしさや矜持など様々なものが邪魔して言えなかった言葉たちが驚くほどすんなり口から出てきた。
     しかし恥ずかしさから顔を上げられないでいると、突然腕を引かれた。一体なんだ、と思うとそのまま気が付けば一二三の腕の中にいた。

    「ちょ、なに……」
    「もーーー!中々言ってくれないからびびったじゃんかあー!」

     どうやらジャケットは脱いだようで、腕の力ばかりが強くなっている。

    「なんの話ですか!」
    「俺っちずっと待ってたんだよー!中々来てくれないし時間だけ経つし焦った焦った!」

     要領を得ない言葉に困惑もするし苦しくなる息に、流石に背中を叩いて合図をする。一二三は腕を離すとそのまま隣に来て座り、幻太郎を引き寄せてから説明した。

     あの喧嘩の後、すぐ謝ろうかと思ったがこれではいつもと変わらない、本気で心配している気持ちも分かって欲しい、けど幻太郎が来なかったらどうしよう、と思い考え過ぎて段々動けなくなってしまったというのだ。

    「いやー、連絡も全然来ないし正直焦った!ひどくね?」
    「あなたこそ、普段のアクティブなあなたはどこにいっちゃったんですか!」
    「だって!怖いじゃんか!」
    「こわい?あなたが?」
    「……俺っちをなんだと思ってんの?」
    「なにって……デリカシーがなくてすぐ動く……」

    言いかけて幻太郎は言葉を止める。

    「……いえ、これもありますがこれだけではないですね。大切な守りたいもののために努力を惜しまない、少し臆病なところもあるようだ」
    「……うるさいなあ」

    少し照れたように目を伏せた一二三が咳払いをした後に、言葉を続けた。

    「……俺っちも、考えたよ。幻太郎に言われた通りだな、って。別に俺っちに食事とか生活管理について言われる筋合いないよなって。付き合うってそういうことじゃないっつーか、まあご飯は食べた方がいいとは思うけど俺っちの押し付けだったかな、とか思って。それに、なんか少し考えたら正気になったっていうか……」
    「正気?」
    「うん。すぐ謝ろうとも思ったけど、ここで幻太郎の本音を聞けないと、今は良いかもだけどこの次、とかこの先続かないと思った。でもだからって試すようなことになるのも違うしな、みたいな……」

     ほんとごめん、と傷付いた表情の一二三に、幻太郎も自分の張った意地で一二三にこんな表情をされるのは本意ではない、と口を開いた。

    「あの時は小生も意固地になってしまいました。実際、あなたに食事の用意をしてもらわないと管理出来てないですし、あなたの言うことが真っ当過ぎて悔しくなってしまったんです」
    「……というのは?」
    「嘘じゃありません」
    「そっかあ。……俺っちさあ、幻太郎には元気で健康でいて欲しいんだよね。それで仕事とかポッセの活動して欲しい。俺っちといるときは元気じゃなくてもさ、幻太郎が頑張りたい時に頑張れる状態でいて欲しいんだよ」
    「……不思議なことなんですが」
    「うん?」
    「うるさいな、とか思ってたんですよ、生活のこと言われるの最近までは」
    「え、ひどい」
    「それくらいしつこく言ってますよ、貴方。言葉の羅列に過ぎないと思っていたんですが、どうしてその言葉が出てくるかを考えたら、まあ良いかと思ってしまって」
    「……ほんとに?」
    「ついでに言えばあなたといるときだって楽しみたいですしね」
    「ほんとに!?」

    キラキラした笑顔になる一二三に、こうやって絆されてしまうんだな、と幻太郎は頷く。

    「今回はあなたの気持ちをうまく受け取ってあげられなかった小生の至らない点が出てしまいましたね、すいません」
    「ううん!そんなことないって!俺っちも押し付けがましくてごめん。じゃあ、これからも幻太郎の家に行ってご飯作って丁寧な生活出来るようにサポートすんね!」
    「ていねい」
    「うん、そう。1人でやるのは大変だから、俺っちはお手伝いしたい。嫌なら嫌って言ってもらっていいけど、俺っち諦めないから」
    「……それは、嫌と言ってもあまり意味はなさそうですね」
    「あはは、気付いた?」

    一二三がいたずらっ子がいたずらがバレた時のような表情を浮かべる。

    「でも、俺っちだって、こんなことで喧嘩して幻太郎が離れて行くのは嫌だな、って思ったから気をつけるよ」

     仲直り。幻太郎の手を持って、甲に口付ける。

    「……さすが、ナンバーワンホスト様は違いますね」
    「ほんとはもっとしたいけど、ここはジゴロのお城だから。続きは幻太郎のお家でね」

     そう言いながらジャケットを羽織って、幻太郎に向き直る。

    「さて、幻太郎くん。君には一足早く君のお城に戻って僕を待っていて欲しいのだけれど…お願いしてもいいかな?」
    「はい……なるべく早く来てくださいね。今まで会えなかった時間を取り戻したいです」

     これも嘘じゃないですよ、と告げれば一二三はぎこちなく幻太郎に近づき両手をとった。

    「……あまり僕を翻弄するのはやめてくれないか」

    ここでは皆に愛を捧げたいのだから…と戸惑いながらぎゅう、と力を入れて、扉まで幻太郎をエスコートした。





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