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    なすずみ

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    なすずみ

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    蜜、社会人であるということに我を溶かされるの吐くほど無理そうという偏見がある というかそういうのへの抵抗として裏社会入って生きてるイメージもある(偏見)
    檸はどこにいても檸でいられる自我を確立してるので、精神的には大丈夫(俺には縁ない世界だなあと思ってる)

    これ(過去ツイ)

    ##果物

    ◯果物 ネクタイ同業者はハンバーガー屋でうまさ爆発と叫ぶだとか、塗りたくられたマスタードを食べるだとかそう言う仕事もやっているらしいが、自分たちは何でも屋の中でも荒事を看板商品にする何でも屋で、しかも狭い場所より広い場所が得意で、だから街に紛れやすくも動きやすい格好が好ましく、つまり檸檬はネクタイの結び方を知らなかった。
    インターネットで調べても良いし、仲介人のおっちゃんに聞くという手も無いではない。しかしそのどちらも選択肢として浮上することはなく、檸檬は真っ直ぐに蜜柑の住処に向かった。餅は餅屋である。
    今日こなす依頼は、裏で後ろ暗い取引きをしている会社からUSBを盗んでくるというものだ。こそこそ潜り込めれば良かったが潜入対象の会社は表向き真っ当を装っており、セキュリティシステムは一般的な大手のものを採用し、会社員の大半は裏の事情を何も知らない。セキュリティに関しては監視カメラを破壊するなりシステム管理担当者を買収するなり、いくらでもやりようはあったが問題は依頼内容だった。
    「そのUSBさえ手に入れてしまえば、あいつらはおしまいだ」
    B級映画でも今どき聞かない、陳腐な台詞と含み笑いで二人を送り出した依頼人曰く、ターゲット本社の社長デスクにあるUSBには組織の機密情報が入っており、それを暴き立てることで会社を壊滅させてやるという計画らしい。だからそのお楽しみの瞬間まで騒ぎは起こしたくない、こっそり奪えということだった。そんな都合のいい情報が本当に入っているのかと思いつつ、依頼はUSB奪取のみのため口には出さない。
    「だから会社員のフリして忍び込めって?面倒くせえな、兜の方が合ってんじゃねえか。確かやったことあるんだろ、サラリーマン」
    「家族にそう偽ってると言っていたか。だが俺たちへ直々のご指名だ。壊滅実績ナンバーワンの人間に任せたいと」
    「ナンバーワンってどこのランキング情報だよ。そういうのを貼り出してる場所があるのか?『百ます計算かけ算ランキング』みたいにか?あれって『トーマス君の台詞暗唱ランキング』が無いから不公平なんだよな」
    「そもそも依頼内容に対して見るランキングを間違えているしな。まあここのところ、大人数相手に動き回る依頼が多かった。久しぶりの静かな仕事で、この内容なら悪くはない」
    打ち合わせの帰り道、適当な総合スーパーに寄り「他の支社から派遣された若手社員」に相応しそうなスーツを購入したのが二日前。普段羽織るものより分厚い素材のジャケットに合わせ、ホルスターのベルトを調整したのが今朝である。
    特に色分けはせずに買った、深緑色のネクタイの所在を確認するために檸檬はスラックスのポケットに手を突っ込む。忘れ物は無さそうだ。
    細々とした小道具と、以前泊まった時に置いてきた消音器を受け取るため、集合場所は蜜柑の住居になった。ネクタイを結ぶ分の時間を考慮に入れることはなく、檸檬は集合時刻ぴったりに一室の前に立ちインターホンを鳴らした。

    なかなか出てこない。インターホンの不調を疑い、もう一度呼び出しボタンを押しこんで耳を澄ませる。ピンポーンと高らかな音は確かに部屋の中からも聞こえた。故障はしていない。異常を察知し、檸檬はマンションの廊下で身を屈め、部屋の扉に耳を当てる。室内から足音などは聞こえない。身体を離し、ドアノブに手を伸ばしたところで勢いよく扉が開き、檸檬は仰け反った。
    「危ねえ!居るなら居るって返事しろよ」
    「した」
    「嘘つけ」
    蜜柑の姿に異常は見られず、特に負傷した様子もない。が、顔色の悪さが見て取れた。短い返答もどこか歯切れが悪い。
    「風邪でも引いたのか?」
    「引いていない」
    調子のおかしさを指摘されるとは思っていなかった様子で、少し早口に否定する。
    そうかよ、と言いつつ檸檬は腕を組み、唇を尖らせながらぐるりと視線を回した。本人が引いていないというものを突っついても藪蛇だ。依頼の途中に動けなくなる程の不調ならば、自分も蜜柑も事前に申告する。何故なら自分の命に関わるからで、自滅願望を持たないことは互いに承知している。
    蜜柑はネクタイを締めていた。ジャケットは部屋の中らしく、白いシャツの中央に深緑色が沈んでいる。普段蜜柑が好む黒地の面積が多い格好とは少し違うが、それなりに見慣れた姿だ。ドレスコードに従って、タキシードで潜入したこともあれば喪服で護衛したこともあり、装飾の多いやたら華やかなスーツで事務所を一つ壊したこともある。
    ひとまず檸檬は自分のポケットからネクタイを取り出した。
    「はい、これやるよ」
    「おまえ、いい加減締め方を覚えろ」
    溜息と顰め面はいつも通りだ。
    「たまたま今日は手順忘れただけだ。締めてるだろ、いつも」
    「結び目がある状態からだろ。あれはただの長さ調節だ」
    「長さ調節をして、仕上げに締めてるんだろ」
    「言い直す、結び方を覚えろ」
    会話の応酬はいつものことだが、蜜柑はネクタイを受け取ろうとしない。左手はドアノブに置かれたまま、右手は自身の首元に置かれ、人差し指が結び目を弄っている。
    「サイズ合ってねえのかよ、苦しいならボタン外しちまえば?分かんねえだろ」
    白いシャツの最上部には白くて小さなボタンがある。それを指差す檸檬の第一ボタンは言われるまでもなく外されており、首元は開放されている。分かんねえだろと言いつつも、分かったところで何が問題かは分からない。ああ、と蜜柑は言葉を濁し、落ち着かなさそうに爪を弾いた。浮き足立つと表現するには、沈んでいる。
    「浮かない顔だな」
    「そう見えるか」
    「地味な仕事だから、嫌なんだろ」
    「仕事は仕事だ。関係ない」
    蜜柑は生真面目だが、臨機応変な対応は得意で頭は結構柔らかい。苦しかったらボタンを開ける。それを躊躇するような人間ではなかった。なにせ閉じているガラス窓さえ躊躇なく叩き割るのだ。
    俯いていた蜜柑の喉が、酸素を求めるように開く。少し掠れた音で名を紡いだ。
    「なあ、檸檬」
    「たまたまボタンの開け方を忘れちまったわけだ」
    「は?」
    「そういうこともあるよな。おあいこってわけだ。俺が結び方、うっかり忘れても別におかしくねえんだよ」
    怪訝そうな蜜柑の脇を狙って、ネクタイを部屋の中へ放り投げる。
    「あの依頼人のおっさん、俺たちがセキュリティゲート抜けられると本気で思ってんのか?無理だろ。どうせ警備員大勢呼ばれるだろ。んで社長室に呼び出されてな、反省文書かされるんだ。400字詰め五枚分、埋めるまで帰っちゃいけませんてな」
    「反省文で済むなら書いてやっても良いが、USBは盗れないな」
    「受付で揉めるの分かりきってんだ、正面突破なんざ面倒くせえよ」
    堂々と言ってのけながら、ジャケットのボタンを外して蜜柑にホルスターを見せる。
    「壊滅ってのやってやろうぜ。先週チンピラの事務所、壊した時と一緒だろ。サービスってやつだな。肉屋行ってコロッケおまけして貰ったら嬉しいだろ」

    事の顛と末だけ述べれば、受付には引っ掛かり、会社は爆発して依頼人は喜んだ。
    まず、案の定受付で揉めた。引っ立てられた社長室にてデスクを漁り、見つけたUSBにはこれまた案の定大した情報はなく、縛り上げた社長から弱みを引き出しボイスレコーダーに録音した。その頃には本社全体で噂が錯綜、五階建てビルの全フロアが混乱に染まり、真っ当な判断により警備員の増援が呼ばれた。住宅街から離れた立地を良いことにジリジリ鳴る警報に混ぜてマシンガンの音を景気良く響かせ、全員を建物から追い出した後に目に入った非常用なる赤いボタンを檸檬が押せば、建物は爆発炎上し、呆然と立ち尽くす社員たちの合間を縫って二人は一目散にその場を去った。
    速報が流れてしまう前にとその足で依頼人の元へ向かい、「良いニュースと悪いニュースがある」とある仲介業者を真似て前置きする。USBの中身は空同然と強調しながらボイスレコーダーを再生し、「どうだ、俺たちの仕事は」と微笑んで見せれば依頼人は手を叩いた。
    「君たちに頼んでよかったよ」と不適に笑いながら猫を撫でる依頼人は、やはりB級映画でも今どき見ない仕草であったが、依頼が達成と見なされればそれでいい。
    その晩、蜜柑の自宅でスーツを脱ぎ散らかした檸檬に、蜜柑は文句を言わなかった。スーパーで買ってきた惣菜のコロッケを頬張りながら檸檬は二本のネクタイを弄んだ。
    「次は青色にしようぜ。トーマス君みたいな明るいやつな。あと、このスーツやっぱ動きづれえよ」
    「サイズ表通りに選んだが、やっぱり試着はした方がいいな」
    静かな仕事にはならなかったが、それでも今日はこれでいい。換気のために開けた窓は初春の風を招き入れている。無茶な二人組ランキングを駆け上ったのは、間違いなかった。
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    なすずみ

    PAST蜜、社会人であるということに我を溶かされるの吐くほど無理そうという偏見がある というかそういうのへの抵抗として裏社会入って生きてるイメージもある(偏見)
    檸はどこにいても檸でいられる自我を確立してるので、精神的には大丈夫(俺には縁ない世界だなあと思ってる)

    これ(過去ツイ)
    ◯果物 ネクタイ同業者はハンバーガー屋でうまさ爆発と叫ぶだとか、塗りたくられたマスタードを食べるだとかそう言う仕事もやっているらしいが、自分たちは何でも屋の中でも荒事を看板商品にする何でも屋で、しかも狭い場所より広い場所が得意で、だから街に紛れやすくも動きやすい格好が好ましく、つまり檸檬はネクタイの結び方を知らなかった。
    インターネットで調べても良いし、仲介人のおっちゃんに聞くという手も無いではない。しかしそのどちらも選択肢として浮上することはなく、檸檬は真っ直ぐに蜜柑の住処に向かった。餅は餅屋である。
    今日こなす依頼は、裏で後ろ暗い取引きをしている会社からUSBを盗んでくるというものだ。こそこそ潜り込めれば良かったが潜入対象の会社は表向き真っ当を装っており、セキュリティシステムは一般的な大手のものを採用し、会社員の大半は裏の事情を何も知らない。セキュリティに関しては監視カメラを破壊するなりシステム管理担当者を買収するなり、いくらでもやりようはあったが問題は依頼内容だった。
    3588

    なすずみ

    PAST果物、20歳以上で出会ったからめちゃくちゃいじらしい感じになってるけど、16歳くらいで出会ってたら檸がほんの一瞬殺すの躊躇ったのを蜜が見咎めて、腕を引っ掴んで刺殺させたりして、感情の処理してから動けるはずだったのを邪魔された檸がきっちりグーパンでお返ししたりして大変だったと思う

    これ(過去ツイ一部)
    ◯果物 十代で出会ってるパターン九九さえまだ教わっていないだろう幼さにも関わらず、泣くことにも飽きたような、大人びているというには憂と諦めを内包した目をしていた少年は、檸檬を前に瞬きをした。見るからに荒っぽそうな青年を見て、既に目の前で家族を殺された少年は確かに光を目に宿した。彼が拠り所にしている朧げな記憶と重なりでもしたのだろうか。甘えを含んだ希望とも、哀願とも異なるその表情は檸檬にとってイレギュラーで、コンマ数秒程度の僅かな躊躇いを生んだ。
    蜜柑は見逃さなかった。
    檸檬がほんの小さく息を飲み、すばやく唇を噛んで呼吸を整えようとした瞬間、蜜柑はその右腕を掴んで突き出させた。反応出来なかった檸檬の手に握られたナイフは加えられた力の向きに従って少年の心臓を貫き、的確に鼓動を止める。少年が崩れ落ちるより早く、檸檬はナイフから手を離し、腕を振り解く反動を利用して蜜柑の腹部を蹴り上げた。咳き込んだ蜜柑が受け身を取らなかったのがわざとなのかどうか知らないがそんなことはどうでもいい。身体を起こしたところへ歩み寄り、シャツの首元を捻り上げて頬に拳を打ち込んだ。このまま首を折ってやろうと思った。
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