問題と便乗「やべえな」
「そうだな」
「どうしたんだよ、これ」
「一言でいえば、火が通り過ぎた」
「俺なら四文字で言えるぜ。焦がした、な」
蜜柑宅のキッチンにて、檸檬は真っ黒な塊と対峙していた。その正体はホットケーキである。
やわらかな薄黄色とこげ茶色のふわふわした食べ物になるはずだったモノは、どこで道を間違えたか真っ黒でかちかちした塊に成り果てていた。
檸檬は、すん、と鼻を動かす。
「焦げ臭えな、換気扇付けてんのかよ」
「さっき付けた」
「焼く前に付けろって」
そんなこと書いてなかったぞ、と蜜柑が不服そうな顔をする。『まずは換気扇を回して』から始まる調理手順書など存在しないだろう。あるとすればそれを書いた者は、料理ができない人間が身近にいるに違いない。
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