「お兄ちゃん…太った?」
「え…」
夕食後リビングでぼんやりとテレビを観ていたら、風呂から上がってきた葵にいきなり切り出された
「え?いや、多分変わってないと思うけど…てか、ちゃんと髪乾かせって」
「いーや、ぜっったい太ったって!!」
ほら!と半袖からのぞく旬の二の腕を軽くつまむとムニッと餅の様な触感がした
「前はもっと鶏皮みたいだったじゃん!」
「とりっ…!?」
「お兄ちゃん姿勢悪いし、服装もダボッとしたの着てるから確証無かったけど、うん、太ったね」
容赦なくシャツを捲られ今度は脇腹をムニムニと摘まれ
る
「一体隠れて何食べてるの?私の分は?!」
「うっわ!!やめろって!!」
ムニムニといつまでもつまんでいる手を引っ剥がし、騒ぐ葵を他所に旬は、風呂!と叫んで脱衣所に消えた
うーーん
「やっぱ、太った…よな」
脱衣所の鏡で己を観察しながら一人ごちてしまう
葵に指摘される前から自覚は、正直あった
ここ最近、協会に立ち寄ると監視課の人や要請された先で何故か昼食を一緒にとったりだ、試作なので食べて感想を下さいと様々なテイクアウト品を貰っていたのだ
葵に指摘されるほど見た目が変わってきてる…?
いや、言われてみれば、前より頬の肉が…と自分で頬をつまんでしまう
ムニリと柔らかい触感がする
認めたくないがこの触感で鶏皮はない
ちらりと脱衣所の隅に視線を移すとそこには体重計が鎮座している
最後に測ったのは何時だったか
認めたくないが、1番手っ取り早い確認方法である
しかし乗ったら最後、現実を突きつけられるので正直乗りたくない
暫く熟考した後、重いため息を吐いた旬は最後の足掻きとばかりに下着姿になり体重計に乗った
「…ひっっ」
結果は言うまでもないが、後日差し入れは結構です!と断りを入れる旬が目撃されたらしい