なんとか見られずに済んだ「あれ…?」
昔の…と言っても数ヶ月前の話だが、少しでも節約をしようと数年前から続けてきた弁当を取り出して、手にした軽さにふと、困惑する
今朝詰めた弁当はこんなに軽かっただろうか…?
不思議に思いながら、袋から現れた弁当箱の柄に声が漏れる…やってしまった
現れた箱は小さく、箱にはデフォルメされた黄色いゴーグルをしたキャラが様々な構図で描かれていた
「…あー…」
お兄ちゃんのお弁当が食べたい…と昨日久しぶりに言われ、今朝2人分の弁当を作ったのだが、取り違えてしまったようだ
「…、マズイ…」
葵のは少しでも見栄えを良くしようと、旬のなけなしのセンスで四苦八苦しながら弁当箱に詰めたのだ、その弁当が手元にあると言う事は、葵の元には本来旬が食べる予定の弁当箱があることに気が付き、焦る
旬の弁当は腹に入れば一緒だろうと大分…男らしい詰め方をしてあるのだ、なんなら昨日の夕飯の残りが詰まった弁当である
流石に学校であの弁当は…年頃の女の子が食べる弁当ではない…変な噂や、家庭環境に問題が…と騒がれ葵の進路に影響するのは大変マズイ
「……」
ちらりとスマホを確認すればまだ正午を少し過ぎた時間帯、まだ授業中の筈だ…間に合うか
対人で実戦はしたことがあるが、物単体で成功するか正直わからないが、今からカイセルに乗って飛んでも間に合わないだろうし、悲惨な弁当を届ける羽目になる
弁当を袋に入れ直し、最初に実戦した時より緊張しながら旬は影の交換を行った