理由「何を観ているんだ、啓悟」
声をかけられて鷹見啓悟は顔を上げた。百九十センチメートルを超える体躯の同級生が机の前に立っていることに気付きもせず、スマートフォンの小さな画面に釘付けになっていたらしい。声をかけた同級生は若干、機嫌が悪そうに見える。
「炎司くん。一緒に観る?」
啓悟はワイヤレスのイヤホンを片方外して炎司の手のひらに握らせ、隣の椅子を自分の方に寄せた。
「何だ、それは?」
小さな画面を覗き込む炎司の前髪が啓悟の額を掠りくすぐったくて身動ぎする。
「フレイムヒーロー・エンデヴァーとウィングヒーロー・ホークスのファンミの特集動画。今日限定の特別編集版!」
「ファンミ?」
「ファンミーティングの略だよ。この二人がナンバーワンとツーになってから定期的に開かれてたってヤツ」
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