その言葉の続きを聞けなかった話。.
「あいつ、最近太り始めてん」
授業の合間の休み時間。
飲み物を買おうと自動販売機へ向かっていると、廊下の角から聞こえてきた話し声につい足を止めてしまう。
息をひそめて耳を澄ませてみると、それは大好きな彼氏の声だった。
オサムが紡ごうとしている言葉の続きを聞いてしまったら心が壊れてしまうような気がして、気付かれる前に逃げるように教室へ急いだ。
切らした息もそのままに教室の窓際から自動販売機の方へ目を向けてみると、そこにはやはりオサムとスナくんの姿があった。
スナくんの顔は呆れたように見えて、胸が嫌な音を立てて冷や汗が滲む。
…今頃、あの醜い豚をいつ捨ててやろうか、なんて話しているかもしれないと思うと、胸の奥がつきん、と痛んだ。
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