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    名無しさん

    @nanashi_hq

    25↑ 夢女🚺【書⇒HQ】【♡🔖⇒HQ.呪.青檻 】──好きなものを思いついたままに呟いてる垢。

    Xに入り切らなかったお話をこちらに投稿しています。

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    名無しさん

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    Xに投稿したアツム夢のお話です。

    #HQプラス
    hqPlus
    #819プラス
    819Plus

    誓いの話。「何イライラしてんねん、いい加減うざいんやけど」

    この頃は何も上手くいかない気がしていて、ご飯を作ったり片付けをしたり、いつも通りの行動にもイライラが伴ってしょうがない。

    八つ当たりなんて子どもみたいな事はしたくない、やっちゃだめ、と自分では分かっているのに、胸の中で渦巻く苛立ちのぶつけ先が分からなくて泣き出しそうになってしまう。

    「ごめん、なんか分かんないけどイライラして…」
    「…やとしてもその態度はあかんやろ。俺にぶつけてどないするん、自分の機嫌くらい自分でとれや」

    全くもってその通り。アツムの言うことが正しいって分かっているのに、怒りが湧いたり悲しくなったり、感情のコントロールが出来なくなっている理由が分からなくて苦しくなる。

    「ごめんね…。買い忘れたものあるし、ついでに頭冷やしてくるね」
    「おー、それがええわ」

    時刻は17時。
    外はまだ明るいけれど、だんだんと肌寒くなってくる季節。
    スマホに目を落としたまま、私の方を見ようともしないアツムに悲しくなりながら、厚手のカーディガンを羽織って足早に外へ出た。

    外の空気を吸うと、少しだけ気が楽になったようで足が軽くなる。
    私、もしかして家にいるのが嫌になってたりするのかなぁ……。

    アツムと結婚してもうそろそろ1年。
    プロのバレーボール選手として活躍する彼を傍で支える日々は幸せで、毎日がキラキラしてたはずなのに、どうして…?
    何故こうなっているのだろう、と考えながら歩を進めていた時。

    「ぁ、もしかして…」

    頭の中に浮かんだ可能性に冷や汗を覚えつつ、近場の薬局に駆け込んで妊娠検査薬を購入した。
    焦る気持ちを抑えながら薬局のトイレで使用して、震える手で結果を見てみると、思った通り陽性のサイン。

    どうりで、イライラしたり、気分が落ち込んだりするわけだ…!
    私たちにとって待ちに待った赤ちゃん。
    嬉しくてじわじわと暖かくなる胸を押さえながらアツムに連絡しようとして、出る間際の会話を思い出す。

    「そういえば…アツムのこと怒らせたんだった…」

    アツムとの小さい喧嘩は今までも何回もあったし、同じ数だけ仲直りもしてきた。
    けれど、今はこんなにも自信がない。
    頭冷やしてこい、って、私の顔は見たくない、って意味だった?
    きっとそんなはずはないのだけれど…感情をぐちゃぐちゃに引っ掻き回されているようで、とにかく苦しい。

    アツムに合わせる顔がない、どうしよう…と悩んでいると、ふと思い浮かんだオサムの顔。
    大阪から兵庫へはだいたい30分。
    行けない距離じゃない。

    アツムと住むマンションとは反対方向にある最寄り駅へ向かいながら、冷静に考えるよりも先に体が動いてしまうのは、アツムに似てきてしまったのかな…と頭の片隅で思いながら、兵庫方面の電車に飛び乗った。

    そしてオサムのいるおにぎりミヤに到着したのは19時を回った頃。

    「…あれ、どないしたんこんな時間に。ツムは?」

    私の姿を見るなり穏やかな顔でそう言ったオサムに、緊張の糸が切れたように涙が溢れてしまった。

    「なっ、どっ、どないしたん…!」

    流れる涙を止められないでいると、お店の続きをアルバイト君に任せたオサムが駆け寄ってきてくれた。

    「とりあえず奥、入り。…お騒がせしてすんまへん、こいつ身内なんですわ」

    居合わせたお客様にそう声をかけるオサムに支えられながら、お店の奥へと通される。
    オサムに背中を摩られながら手渡されたお茶を少しずつ口にしていると、ぼろぼろと流れ続けた涙も少し落ち着いてきた。

    「…で、何があったん。ツムにはちゃんと言うてきたんか」

    ゆっくりと首を横に振り、違う、と伝える。

    「……けんか、した」
    「喧嘩ぁ?そんなん毎日しとるやろ。なんで今回は拗れとるん……あ、ついにツムが浮気したんか」

    その言葉にブンブンと勢いよく首を横に振る。

    「そらそうか…あいつ🌸しか見えとらんしな」
    「…、わかんない、アツム、今は私の顔なんて見たくないって思ってるかも」
    「んなわけないやろ。…なんやいつもと違う感じすんねんけど、ほんまにどないしたん」

    そう言うオサムに、ビニールに入れた妊娠検査薬を手渡す。
    手元のそれをじっと見たオサムが、勢いよく立ち上がりながら声を張り上げる。

    「…ッはぁ!?これ陽性やん!おめでたやん!!…え、お前腹に赤ん坊おんのにそないな薄着で電車乗って来たんか!?」

    アホやん!!そう言って慌てるオサムに肩から毛布をかけられる。
    そして、ハッと気付いたように「これもツムに言うてないんか?」と言うオサムに頷いて答え、毛布の端をきゅ、と握る。

    ぽつりぽつりと、感情のコントロールが出来なくて八つ当たりをしてしまったこと、それは妊娠初期の特有のものであったこと、でも家を出る直前に「頭を冷やせ」と冷たく言われてしまい、どうすれば良いのか分からなくなってしまった、と話した。

    「…はぁ…クソツムかて八つ当たり大王みたいなとこあるやん…自分のこと棚に上げてアホちゃうかほんま…」

    そう言って項垂れて、はぁ…とため息を零すオサム。
    そんな姿を見て、やっぱりアツムに言わなきゃダメだ、どう伝えよう…とまた心配が膨れ上がる。

    するとオサムのスマホが鳴りだして、「ちょお待ってな…」と画面を見るなり「げぇ、ツムや」と顔を顰めている。
    そういえばスマホ見てなかったな、と通知を切っていたスマホを開けば、アツムからの不在着信が何件も入っていた。それは私が家を出てから15分程の時刻から始まっていて、アツムが心配してくれた事に嬉しくなる。
    それでも、つい体が強ばってしまい、通話の声に耳を傾けてしまう。
    すると聞こえてくるアツムの叫び声。

    『サム!!!🌸が帰って来ん!!どないしよ!!!』
    「…ッアホ!電話で大声出すなや!」
    『そんな場合とちゃうねん!🌸がおらん、電話も繋がらんし、俺、俺おかしなりそうや…!!』
    「ッハァ〜〜〜とりあえず落ち着けや。🌸ならうちの店来てんで。さっき事情も聞いたわ。目の前におるから安心しぃや」
    『…!!!ほんまか!!!ほな良かったわ……いやちゃうわなんで兵庫におんねん!!!』

    ぎゃあぎゃあと聞こえてくる通話の声に、アツム、もう怒ってない…?と体の力が抜けていくような気がした。私をチラリと見遣ったオサムが、ふぅ、とひとつため息をつく。

    「おいツム、なに嫁一人にさしとんねん、はよ迎えに来んかい!」と言って通話を切り、「全く手のかかる夫婦やでほんま」と呟いた。

    「ツム今から向かう言うとるけど、30分くらいは掛かるやろ。とりあえず体温めて待っとき。」

    そう言って枕代わりのクッションをくれたオサムの言葉に甘えて、奥の部屋でアツムを待つことにした。

    激しい感情の起伏に翻弄され、冷たい風にさらされた体は疲れていたのか、体を横たえると間もなくして眠気が襲ってくる。
    そうしてしばらく微睡んでいると、バタバタと慌ただしい音に意識が浮上した。

    「🌸ッ!無事か!」

    部屋に入ってくるなり私を見つけて傍に駆け寄ってきたアツムが、私の存在を確認するように頬を撫でている。
    その瞳は家を飛び出す前の冷たさなどどこにも感じなくて、ただ私が心配だと言うようにそこにあった。
    大好きないつものアツムに安心して、涙が滲む。

    「アツム、ごめんね…私少しおかしくなってて、」
    「何言うとんねん🌸はおかしない!…八つ当たりとか言うて、ほんますまんかったわ…何があったか聞くのが先やんな…」

    私を抱き起こしてぎゅう、と抱きしめてくれるアツムの背中に腕を回しながら、その大好きな香りを胸いっぱいに吸い込んだ。
    少しだけ汗の香りが混ざっていて、慌ててきてくれたんだなぁと嬉しくなった。

    そして、言うべきか迷っていた赤ちゃんのことを伝えようと胸に決め、アツムの肩をトントンと叩いて体を離す。

    「アツム、あのね、これ…」
    「なん?」

    手にした検査薬をおずおずと手渡すと、それにじっと目を落としたまま、アツムは黙り込んでしまった。
    少しの間、私の方が沈黙に耐えられなくなって「それね、」と声をかけた。

    「妊娠検査薬。お腹にね、赤ちゃん、出来てるの…」

    アツムの顔を窺いながら、小さな声でそう伝えてみる。
    それでも動かないでいるアツムの顔を覗き込むと、今にも溢れてしまうんじゃないかと思うくらい、目に涙を浮かべていた。

    思わず彼の名前を呼ぶと、その大きな腕で抱きしめられる。

    「……ッ、ほんまか、ありがとお、ありがとおな……!!」

    喜びを噛み締めるように言葉を紡ぐアツムに、私も涙を誘われながらその首筋に顔を埋める。

    「これいつ分かったん、なんで言わへんの…」

    そう言うアツムに、家を飛び出した後の出来事と、妊娠初期特有の症状を伝えると、「アホやん、俺ぇぇぇ……!」と涙を隠すことなく更に強く抱きしめられた。

    「とりあえず明日、一緒に病院行こな、」
    「…一緒に来てくれるの…?」
    「当たり前やん!1人になんかさせへん、不安になって泣くんも今回きりや」
    「……っ、」

    また滲む涙は堪えきれずに頬に流れていった。
    受け入れてくれてありがとう、と伝えながら、ぎゅう、とその逞しく温かい身体にしがみつくと、「それを言うんは俺の方や…!」と涙混じりの声が降ってくる。

    そうして離れまいと抱き合いながら、この先ぶつかるであろう不安にも、2人で向き合っていこうね、と再びの誓いを立てたのだった。
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