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    名無しさん

    @nanashi_hq

    25↑ 夢女🚺【書⇒HQ】【♡🔖⇒HQ.呪.青檻 】──好きなものを思いついたままに呟いてる垢。

    Xに入り切らなかったお話をこちらに投稿しています。

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    名無しさん

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    Xに投稿したオサム夢です。

    #819プラス
    819Plus
    #HQプラス
    hqPlus

    その言葉の続きを聞けなかった話。.




    「あいつ、最近太り始めてん」


    授業の合間の休み時間。
    飲み物を買おうと自動販売機へ向かっていると、廊下の角から聞こえてきた話し声につい足を止めてしまう。
    息をひそめて耳を澄ませてみると、それは大好きな彼氏の声だった。

    オサムが紡ごうとしている言葉の続きを聞いてしまったら心が壊れてしまうような気がして、気付かれる前に逃げるように教室へ急いだ。

    切らした息もそのままに教室の窓際から自動販売機の方へ目を向けてみると、そこにはやはりオサムとスナくんの姿があった。

    スナくんの顔は呆れたように見えて、胸が嫌な音を立てて冷や汗が滲む。
    …今頃、あの醜い豚をいつ捨ててやろうか、なんて話しているかもしれないと思うと、胸の奥がつきん、と痛んだ。

    大好きなオサムに捨てられる、そう思うだけで心がバラバラになってしまうような不安感に襲われて、それだけはダメ、捨てられないように努力しなきゃ、と心に決める。
    どうすれば良いんだろう……、と、考えを巡らせながら、オサムと付き合い始めた頃を思い返していた。

    オサムと知り合ったのは1年生の時。
    人前で食事をするのが恥ずかしかった私は、中庭の小さなベンチでお昼を食べるのがお気に入りだった。
    そんな時にたまたま通りかかったのがオサムで、「ここ、めっちゃええやん……なぁ、俺も一緒にええ?」と声をかけられたのが始まりだった。

    その日から一緒にお昼を過ごすようになって、普通のおにぎりでも幸せそうに食べる姿に目を奪われたその瞬間から、オサムの事を意識し始めていたと思う。

    なのに、オサムは気まぐれに私の膝に頭を乗せてみたり、微笑んで頭を撫でてみたり…、思わせぶりなことをしないでよ、少しムッとした。
    それでいて無邪気な子どものように笑う姿にキュンとしたり、心を揺さぶられる日々。

    そんな日々にも何となく慣れてきたかなぁという頃。
    いつもの様に膝枕をしていたオサムにゆるりと目線を向ければ、目が合った瞬間からじわじわと頬を染めるオサムの姿に胸が跳ねた。

    そして、鳴り響く自分の心臓の音を聞きながら「…どうしたの?」と問えば。


    「俺、🌸と過ごすん、好きや。…俺と付き合うて欲しい」

    …これは私だけが見ている都合の良い夢なんじゃないかと思った。
    その心のまま、「…これは夢?」と零せば、私の頬をむにぃ、と柔く摘んでムッとしているオサム。

    「俺の一世一代の告白、…夢にすんなや」

    赤くなりながら唇をとがらせてそう言ったオサムにきゅんとして、私の顔もだんだんと染まっていくのを感じていた。

    そして、私の気持ちに気付いていたオサムに背中を押されるように、私も胸に秘めていた想いを伝えると、「ほんまやな、夢やと思うくらい幸せやわ」と言うオサム。
    …でしょ?と二人で笑い合いながら、私たちは恋人同士になった。

    私は、なんでも幸せそうに食べるオサムを見ているのが好きだったし、「俺、🌸が食うとる姿見るん好きやわ」なんて言ってくれるオサムに嬉しくなって、人並みに好きだった食べることも更に好きになった。

    でも。
    付き合い始めた頃は私のことを好きだと言ってくれていたけれど、もしかしたら今の私のことなんて醜い豚、なんて思い始めているかもしれないなぁ。

    そう思うと、胸がナイフで刺されたように痛んで、じわりと涙が滲む。

    涙が零れないようにぎゅう、っと目を閉じて、大好きなオサムに嫌われないために、捨てられないためにはどうしたら良いか…行き着いた答えに、ゆるりと目を開く。

    「…あ、痩せれば良いんじゃん」

    その日から食事を量をぐっと減らしているけれど、なかなか上手くいかない。
    それに、痩せようと決意したくせにお腹が空いてしまう自分が許せない。

    そうして1週間を迎えてもあまり変化が無く、焦りが見え隠れしてきた頃。
    いつものように一緒にお昼を食べていたオサムが「なぁ、」と声を上げる。

    「🌸、ここんとこ飯の量少ないんちゃう?調子悪いんか?」
    「…え、ううん、別にいつも通りだよ?」
    「そぉなん?……なんや顔色も悪ない?無理せんときや」
    「……うん、」

    オサムが心配してくれているけれど、全然嬉しくなくて、心が張り裂けそうだった。
    太ったやろ、って、俺の隣に居たいなら痩せろ、って面と向かって言えば良いのに。

    オサムのせいじゃないのに、こんなふうに八つ当たりまでしようとして、何やってるんだろう私……。
    心の中でモヤモヤが広がっていくようで苦しい。

    心配そうに見つめてくるオサムの姿に、とてもご飯を食べる気分にはなれなくてお弁当の蓋を閉じた。
    …もしかすると、溢れだしそうな嫌な気持ちにも蓋をしたかったから、かもしれない。

    「おさむ、私つぎ体育だから、教室戻るね」
    「なんっ、メシ途中やん!ちゃんと食わんと倒れんで…!?」
    「大丈夫!ありがとね」

    どこか焦ったようなオサムにへらりと笑いかけて、教室へ戻る。
    いつもなら次の時間が移動教室でも体育でもギリギリまで一緒に過ごしているけれど、今日はもう、限界だった。

    痩せない自分への苛立ち、気付きたくなかったオサムへの怒り、色々な嫌な感情に支配されているのが分かる。

    そして体育の時間も、頭を占めるのはオサムの事ばかりで。
    「豚とおんの嫌やねん」「その身体恥ずかしないんか」「もう耐えられん、別れてくれ」
    そんな言葉が次々と頭の中で再生されて、胸が苦しい。
    ふと気付くとぐらぐらと視界が揺れていて、足元の力も抜けていく。

    少し遠くから私を呼ぶ友人の声を聞きながら、目の前に迫り来る地面の恐怖に目を閉じて、私は意識を手放した。


    …そうして、しばらく眠っていたような気がする。
    ふるり、と瞼を震わせながら目を開くと、視界には白いカーテンと数回目にしたことのある天井。薬品の匂いがふわりと鼻を擽って、もしかして保健室…?とぼんやりとする頭で考えた。
    部活に勤しむ生徒たちの声が微かに聞こえる事から、放課後だと気付いた。

    「……🌸、起きたんか」

    ベッド脇から聞こえた声に驚いて顔を向けると、そこには少し怒ったような顔したオサムが居た。

    「お、さむ……?なんで…」
    「お前…体育の授業中に倒れたんやて…センセが貧血と栄養失調や言うてたわ……。お前、やっぱ飯食うてへんかったんやな…!」
    「……ッ、」

    いつも優しいはずのその瞳に怒りが滲んでいて、ヒュッと喉の奥を鳴らしてしまった。

    「俺言うたよな?ちゃんと食わんと倒れんでって…!」

    そう怒りを隠さないままに私へ言葉をぶつけるオサムに、私も感情が抑えられずに涙がじわりと滲む。
    そんな私を見て言葉を詰まらせるオサムに、貴方のせいでしょう、と怒りをぶつけたくなってしまう。

    「…私、痩せないといけないから」
    「は?」
    「……っ、オサムが!!言ったんでしょ!!」
    「…はァッ!?なんやねんそれ!?」

    叫びながら、あふれた感情は涙となってぼろぼろと零れていく。
    そんな私を見て焦るオサムは、「なん、どないしたん、ほんまに…!」と私との距離を測りかねているようだった。

    もう何でもいい。
    あふれ出す感情をそのままに、スナ君との話を聞いたこと、だから痩せようと決めたこと、でも痩せられなくて苦しいと思いをぶつけてみれば、更に大きな声で「はァ!?」と声を上げたオサムに驚いて肩が跳ねる。

    「待て待て、それ、ちゃう!!🌸の誤解や……!!」
    「……へ?」
    「🌸、ええか?落ち着いて聞くんやで、」

    オサムは私の肩に両手を置いて、言い聞かせるように目を合わせてくる。
    揺れる視界の中でオサムの顔を見ていると、私の不安を散らすようにその親指で涙を拭ってくれる。

    「確かに、スナに🌸が太っ…健康的になった話はした」
    「…太ったって言いなよ」
    「そんな顔しよるのに言えんて。…んで、それは悪い意味やないんやで」
    「……?」
    「前は腕も脚も細っこくて抱きしめたら折れてまいそう…思てたんやけど、最近は身体のどこ触ってもやわこくて、なんや美味そうやし…🌸のこと食いたなってまう…て話、してた」

    顔を真っ赤にしながら、「…引いたやろ?」なんて言っているオサムに、体の力が抜けていくような感覚がした。

    …そういう事だったの。
    私は嫌われたわけじゃなかったの……?

    「ごめんなさい…私、太ったらオサムに捨てられるんじゃないかって、……」
    「んなわけあらへん!!!」

    力強く抱きしめられて、耳元で「🌸、肩も背中も薄なっとるやん…」と、どこか苦しそうに呟かれる。

    「元はと言えば俺が変な言い方したせいやんな。ほんま、辛い思いさせてすまん……我慢すんの、しんどかったやろ?」

    そう言って声を震わせるオサムの言葉にまた涙腺が緩んでしまい、流れる涙を隠すようにその広い背中に腕を回す。
    すると、ぎゅっと抱きしめる力を強めたオサムが、私の頬にキスを落としてくれた。

    「俺はどんな🌸でも好きやから安心しぃ。…けど。これ以上は痩せんとってな、心配で泣きそうや…………」

    そうこぼすオサムにこくこくと頷いて、幸せそうに食事をするオサムの姿を思い返しながら、明日のお昼が楽しみだなぁと胸が高鳴った。

    そうして抱き合っていると、控えめにカーテンが開く音がして、「お二人さん?そろそろ保健室閉めるよ……?」と先生が顔を覗かせた。

    そういえばここは保健室だった……!!と顔が熱くなるのを感じながらバタバタと帰る準備を始めると、ぐす、と鼻をすする音が聞こえて顔を上げれば、先生がハンカチで目元をおさえながらうん、うんと頷いている。

    「青春、良い……オサムくん、🌸さんのこと大事にするのよ……!」

    そう言われたオサムはスっと立ち上がって、「当たり前です、大事な彼女なんで」なんて宣言しているので頬が熱くなる。
    そんな姿を見て、私もオサムを不安にさせないように、食事をする幸せを教えてくれたオサムを悲しませないようにしよう、と心に決めたのだった。



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