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    ukikumo_kureha

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    小さな死 フロアズ

    「ねぇ、アズール。こっちを見て」

    ゆるゆると首を振るアズールの顔には、表情を隠すように腕が二本クロスしている。
    きっと、アズールは自分の今の表情を『みっともない』と思っているんだろう。
    そんな事無いのに。フロイドにとっては、どんな表情のアズールだって、可愛くて、誰にも見せたくない宝物なのに。

    腕の下、きっと涙に濡れて、唇を引き結んで、もしかしたら痛みに耐えているかもしれない表情を見せて欲しい。
    抱え上げていた脚の間から、身を乗り出すように近付いた瞬間、空気を裂くような甲高い悲鳴が一つ、フロイドの動きを止めた。
    しまった。
    予想外の声に、フロイドはもちろん、出した本人のアズールでさえ驚いて、目元と口元を隠していた腕が口元を隠すために掌だけが残されて、パチリ。瞳が合う。

    「ねぇ、アズール」

    触れ合っている場所が、溶けるように熱い。
    視線は絡み合って、逸らされずに、ポロリ。表面張力の限界を迎えた涙が転がり落ちて、あぁ勿体無いな。そう思ったフロイドの長い舌が掬うように舐め取って、また少しだけ身体が近付く。
    今度は、ぎゅうと閉じられた目から、やっぱり流れていた涙の道を辿って涙が流れ、抑えられた口からは押し殺せなかった高い声が、くぐもって空気を揺らした。

    「フロイド」
    「んぅ?」

    普段のアズールからしない、涙に濡れて弱ったような、甘く誘うような、縋るような、フロイドが初めて聞く声に名前を呼ばれて、フロイドの声も、優しく濡れて、媚びるような返事をしてしまう。

    「僕の、息の根を・・・止めてくれるんでしょう?」

    それまで、アズールの口を隠していた手が、フロイドに向けて伸ばされて、近くなっていた首にするりと回され、抱えられていた脚も、逃がさないというようにおずおずとフロイドの腰を捉える。
    重たい水の音が響いて、これ以上先に進めない所まで繋がった事が分かった瞬間、フロイドの中にある『本能』と呼ばれる怪物が、静かに咆哮を上げた。

    「アズールの望むままに」

    このシーツの上で、何度も小さな死を迎えよう。
    何度でも生まれ変わって、また自分しか知らない姿を見せて欲しい。
    そしていつか。
    アズールの全てをフロイドが愛している事に気付いて、見せてくれるようになるまで。
    フロイドは、何度でもアズールと死を迎えたい。そう思うのだった
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