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    uruuru9r

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    ホームワークが終わらない 第六章
    2019年2月24日秘密の裏稼業11で発行した景零小説です。
    ※注意
    ・90年代小学生設定の景零短編集です。当時流行ったものがたくさん出てきます
    ・本誌ネタバレあり
    ・時代設定や家族設定はオリジナル。モブキャラが多数出てきます
    ・2019年当時に書いた話なので公式と若干違う部分があります

    ホームワークが終わらない 第六章【マジカル・ミレニアム】
     クリスマスの浮かれように引き続き、新千年紀であるミレニアムに向けて誰もが浮足立っている。
    「イルミネーション綺麗だね」
     人混みではぐれないよう、ヒロと手を繋いだ。ヒロのおばさんたちとはとっくの前にはぐれてしまった。カウントダウン直前のためか、携帯電話はなかなか繋がらない。年が明けた後もしばらくは繋がらないだろうから、合流は諦めて二人でいようとヒロが言った。
    「ねえ、ゼロ。ずっと聞きたかったことがあるんだけど」
    「な、何?ヒロ」
     どぎまぎしてしまう。夏のあの日から。ヒロの唇の柔らかさを思い出しては意識してしまう自分がいる。あれは何だったのか未だに聞き出せないでいる。
     もしかしてその時のことを?マフラーに顔を埋めてヒロの言葉を待つ。
    「ゼロでしょ?僕の机に『絶交だ』って掘ったの」
     な、なんだそんなことか。ホッと胸を撫で下ろした。
    「前に喧嘩した時にむしゃくしゃしてつい。コンパスの針でね」
    「ひっどいなぁ。あれけっこう傷付いたんだからな」
    「ごめんって」
     いつもの僕たちの会話。きっとずっとこんな感じで来年もヒロと過ごすんだろなぁ。
     ヒロといるのは、やっぱり一番楽しい。それは紛れもない事実だ。ヒロと出会ってから僕は随分明るくなった気がする。
    「あのさ、ゼロ。ゲームしない?」
    「こんなところで?」
    「いいだろ、どうせ暇なんだから。マジカルバナナやろうよ」
     マジカルバナナとは、最近クイズ番組で流行っている連想ゲームのことだ。
    「ただやるだけじゃ面白くないから、賭けをしようよ」
    「賭け?」
    「2000年になる前に、答えられなかった方が負け。負けた人は一年間、何でも言うことを聞くこと」
    「よし!負けないぞ」
    「じゃあいくよ。マジカルバナナ!バナナと言ったら滑る!」
     ヒロの提案で始まったゲームはなかなか白熱している。時間が経つのもあっという間だ。
     2000年まであと数十秒。辺りではカウントダウンが始まった。
    「年末と言ったらカウントダウン!」
    「カウントダウンと言ったら3・2・1!」
     ヒロの下手くそな答えに笑いそうになったけど、僕はこう切り返した。
    「3・2・1と言ったら、ゼロ!」
     一瞬、ヒロが黙り込む。僕は勝利を予感した。
     だけどヒロは僕の瞳を見つめて叫んだんだ。
    「ゼロと言ったら……好きだ!」

     えっ。
     聞き返そうとした僕の声を掻き消すように、花火がどんと上がる。
    「ハッピーニューイヤー!2000年おめでとうございます!」
     街中ではテレビ中継がされているのか派手な音楽が大音量で流れている。
     だけど、僕にはしっかりと聞こえた。
    「ヒロ……今」
    「ゼロの負けだよ」
     約束、絶対守ってね。僕の言うこと聞いてね。
     にっこりと笑う彼の顔が、ネオンライトに溶け込んでいく。
    「あけましておめでとう。これからもよろしく、ゼロ」
     新年の挨拶が、なぜか僕らの新しい始まりを意味しているようで。
     僕らの未来はまだ、始まったばかりだ。
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    uruuru9r

    MOURNINGホームワークが終わらない 第五章
    2019年2月24日秘密の裏稼業11で発行した景零小説です。
    ※注意
    ・90年代小学生設定の景零短編集です。当時流行ったものがたくさん出てきます
    ・本誌ネタバレあり
    ・時代設定や家族設定はオリジナル。モブキャラが多数出てきます
    ・2019年当時に書いた話なので公式と若干違う部分があります
    ホームワークが終わらない 第五章【ノストラダムスのいうとおり】
     ノストラダムスの予言した通りだと、もうすぐ世界は終わるらしい。
     『一九九九年七の月 空から恐怖の大王が来るだろう』という予言から、人類滅亡説が囁かれた。彼の大予言はテレビ番組でも盛んに取り上げられ、関連書籍もたくさん発売されていた。
     僕はというと、ヒロと呑気に過ごしていた。僕たちはカセットテープにお互いの音声を録音しては交換することにハマっていた。ヒロはよくラジオ放送のように、トークの後に曲を流す。それがまた聴いていて楽しかった。彼には人を笑わせるユーモアがある。
    『こんばんは。DJヒロミツです。ノストラダムスの予言した七月に入りましたが、僕の学校では変わりなく毎日授業があります。台風で学校が休みになるように、ノストラダムスの予言も警報扱いになって学校が休みにならないでしょうか』
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    uruuru9r

    MOURNINGホームワークが終わらない 第四章
    2019年2月24日秘密の裏稼業11で発行した景零小説です。
    ※注意
    ・90年代小学生設定の景零短編集です。当時流行ったものがたくさん出てきます
    ・本誌ネタバレあり
    ・時代設定や家族設定はオリジナル。モブキャラが多数出てきます
    ・2019年当時に書いた話なので公式と若干違う部分があります
    ホームワークが終わらない 第四章【恋する文房具】
     成長するにつれて男女の差は顕著になるけれど、それは持ち物にも表れると僕は思う。
     クラスの女子がキラキラしたラメ入りカラーペンの虜になっている頃、男共はバトル鉛筆に夢中になっていた。鉛筆の表面に描かれたキャラクターによって最大HPが定められており、攻撃パターンや必殺技もそれぞれ違うので皆集めるのに必死だ。鉛筆を転がしては白熱するバトル。
     しかし、僕は一本も持っていない。欲しいとねだる勇気もなかった。それはヒロも同じだったようで休憩時間は二人して蚊帳の外になった。
    「ゼロはさ、バトル鉛筆欲しいと思う?」
     いつかの帰り道、ヒロが聞いてきた。
    「うーん、確かに欲しいけどさ」
     あれって鉛筆削りで削ったら終わりなんだぜ、と気丈に振る舞う。どこかでクラスメイト達を羨む気持ちも確かにあった。ふでばこを覗く度にHBの鉛筆と赤鉛筆、消しゴムしか入っていない。虚しかった。だけどヒロも我慢しているのを知ったとき、薄情かもしれないけど嬉しかったんだ。
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