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    uruuru9r

    @uruuru9r

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    『ホームワークが終わらない』おまけ
    ヒカリフルペーパーラリーのSSです。
    第六章マジカルミレニアムの内容と関係あります。

    『ホームワークが終わらない』おまけ【マジカルゆでたまご】
    「ゼロといったら……好きだ!」
     2000年の幕開けとともにどーんと打ち上げ花火が空に舞い散る中、景光は叫んだ。
    「意味が繋がっていないからアウトでーす!」
    「あ、あなたは!?」
     マジカル頭脳アワーの司会でお馴染みの、芸能人・板西英三がいきなり現れた。どうやらこの近くで年越し番組の中継に出演していたらしい。
    「ハイハイ、やり直しねー」
     急に現れたこの男に、全て仕切られるので景光はたじろいでしまう。
    「マジカルバナナ!ゼロと言ったら、からやり直そうや」
    「わ、わかりました!」
     大物芸能人の貫禄からか、この男には逆らえない何かがある。
     零は先ほどから石像のように固まったままで、彼だけが1999年に取り残されてきたようだった。

    「マジカルバナナ!ゼロと言ったら……愛して……」景光は、はりきっている。が、しかし。
    「ゼロと言ったら!あれやな!1958年夏の第40回全国高等学校野球選手権大会での大会通算83奪三振のワシの記録!破った奴の数はゼロや!」
     板西英三は訳のわからない自慢を繰り出した!
    「う、あ……」景光はたじろいでいる。
    「1958年夏の第40回全国高等学校野球選手権大会での大会通算83奪三振のワシの記録と言ったら!す!ご!い!」
     板西英三は早口で呪文を唱えるようにマジカルバナナを続けようとしている。
    「すごいと言ったら……ゼロ!」
     景光は負けなかった。彼は強かった。なぜなら彼はハッピーミレニアムに一発、ゼロに告白をキメてやろうという揺るぎない決意があったからだ。
    「なんですごいんや」
    「だって……ゼロは僕の一番星なんだ!一番星と言ったらゼロ!ゼロと言ったら好き!好きと言ったらゼロゼロゼロー!!!!!」
     景光は思いの丈を板西英三にぶつけた。
    「少年、君のひとりバナナ……むちゃくちゃやけど、ストライク決まったで。ええもん見せてもろたわ」
    「板西さん……」
    「いいバッテリーになれるように二人で頑張りや。これ食べてな」
     板西英三はどこからかゆでたまごを二つ取り出し、景光と零に渡すと去っていった。
    「変な人だったけどいい人だったね。……ゼロ?」
     零は真っ赤になりながらゆでたまごをわなわなと握りしめた。
    「恥ずかしいじゃないか!ヒロの馬鹿!」
    「いたっ!」
     景光の頭にゆでたまごをぶつけ、殻にヒビを入れるとバリバリと剥いた。
    「だってどうしても言いたかったから」
     途端に景光も恥ずかしくなってきたようで、それ以上何も言えなくなる。
    「……ゆでたまごと言ったら好き。好きと言ったらヒロ」ぱくりとゆでたまごを口にしながら零は言う。
    「え?」
    「僕もストライク、決まったかな」
     照れるようにへへへと笑う零に景光は釘付けになると、ぎゅっと抱き締めた。
     ゆでたまごが生んだ奇跡。

     板西英三のおかげで、二人はうまくゆで上がったのだった。


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    uruuru9r

    MOURNINGホームワークが終わらない 第五章
    2019年2月24日秘密の裏稼業11で発行した景零小説です。
    ※注意
    ・90年代小学生設定の景零短編集です。当時流行ったものがたくさん出てきます
    ・本誌ネタバレあり
    ・時代設定や家族設定はオリジナル。モブキャラが多数出てきます
    ・2019年当時に書いた話なので公式と若干違う部分があります
    ホームワークが終わらない 第五章【ノストラダムスのいうとおり】
     ノストラダムスの予言した通りだと、もうすぐ世界は終わるらしい。
     『一九九九年七の月 空から恐怖の大王が来るだろう』という予言から、人類滅亡説が囁かれた。彼の大予言はテレビ番組でも盛んに取り上げられ、関連書籍もたくさん発売されていた。
     僕はというと、ヒロと呑気に過ごしていた。僕たちはカセットテープにお互いの音声を録音しては交換することにハマっていた。ヒロはよくラジオ放送のように、トークの後に曲を流す。それがまた聴いていて楽しかった。彼には人を笑わせるユーモアがある。
    『こんばんは。DJヒロミツです。ノストラダムスの予言した七月に入りましたが、僕の学校では変わりなく毎日授業があります。台風で学校が休みになるように、ノストラダムスの予言も警報扱いになって学校が休みにならないでしょうか』
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    uruuru9r

    MOURNINGホームワークが終わらない 第四章
    2019年2月24日秘密の裏稼業11で発行した景零小説です。
    ※注意
    ・90年代小学生設定の景零短編集です。当時流行ったものがたくさん出てきます
    ・本誌ネタバレあり
    ・時代設定や家族設定はオリジナル。モブキャラが多数出てきます
    ・2019年当時に書いた話なので公式と若干違う部分があります
    ホームワークが終わらない 第四章【恋する文房具】
     成長するにつれて男女の差は顕著になるけれど、それは持ち物にも表れると僕は思う。
     クラスの女子がキラキラしたラメ入りカラーペンの虜になっている頃、男共はバトル鉛筆に夢中になっていた。鉛筆の表面に描かれたキャラクターによって最大HPが定められており、攻撃パターンや必殺技もそれぞれ違うので皆集めるのに必死だ。鉛筆を転がしては白熱するバトル。
     しかし、僕は一本も持っていない。欲しいとねだる勇気もなかった。それはヒロも同じだったようで休憩時間は二人して蚊帳の外になった。
    「ゼロはさ、バトル鉛筆欲しいと思う?」
     いつかの帰り道、ヒロが聞いてきた。
    「うーん、確かに欲しいけどさ」
     あれって鉛筆削りで削ったら終わりなんだぜ、と気丈に振る舞う。どこかでクラスメイト達を羨む気持ちも確かにあった。ふでばこを覗く度にHBの鉛筆と赤鉛筆、消しゴムしか入っていない。虚しかった。だけどヒロも我慢しているのを知ったとき、薄情かもしれないけど嬉しかったんだ。
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