ポーションネタディルガイ続き2「ふーん……ワイナリーは飲むポーションだけを大量販売するのか?」
「いや、蝋燭やアロマにも混ぜていろんな使い方を試すつもりだよ。今は模索中というところだが……」
「これ……すごく熱くなるから人によっては……」
「……ガイアさん、ガイア?大丈夫か?……これは何本だ?」
「6本?」
「三本が二重に見えているな……」
思ったよりもポーションが効いてしまったらしいガイアはふらふらとカウンターに手をつく。慌ててディルックが水を飲ませたりするが治る気配がないらしい。自分が飲んだ時はそんなことなかったのに何故……?と戸惑うディルックを他所にガイアは苦言を呈するばかりである。
「ふ、ぅ」
「……ガイアさん、ガイア?大丈夫か?流石にここまで強くするようには言ってなかったんだが」
「これ、すごく熱くなるぞ……!?」
「僕はリラックスと末端冷え性にも効くようにと頼んだんだが……?」
元々ディルックは体温が高いので多少発汗するような体温上昇の効果があったところで身体に影響はあまりない。神の目が無ければすぐ体を冷やして体調を崩す誰かのための健康ドリンクをオーダーしたつもりではあった。ならば何が悪いのだ?と焦る頭で懸命に考えるディルック。
『弱った身体にはよく効くと思うから、加減して一気に飲まないようにね!』
「……あ」
「あ、って何か大事なこと思い出したみたいな顔をするんじゃねぇよ。何したんだお前は」
「……ガイアさん、今日はエンジェルスシェアに来る前に何処か寄ったか?」
「ん?嗚呼どうしてもと乞われてキャッツテールでちょっとひっかけ」
「どのくらい?」
「ショットを三杯」
「……」
互いに大事なことを失念していたらしく、ディルックは疲れたガイアに脳直でポーションを叩き込んでしまったし、ガイアはガイアでハシゴ酒をしてエンジェルスシェアに来てしまったのだから何をしているんだ……と睨むディルックに自分のことを棚上げするんじゃない!と二人の間で攻防が広がるが、心配したディルックがカウンター越しにふらつくガイアの肩を支えようとした瞬間である。
「あ、こら触るな……!」
ビクン!と震えて過剰反応をしてディルックの手から逃れようとするガイア。ここまでくるのは相当だとばかりにディルックは手早く空のグラスや食器類をカウンターにしまうと最早店主ではなく、保護者としてカウンターを飛び越えていた。
「あ……ディルック?」
「いくら梯子をしていたとしても無理に飲ませた僕にも責任がある。3階に行くよ。いいね」
「頼む……」
流石に限界であることを自分でも自覚しているらしく大人しくディルックに肩を抱えられるガイア。なんとか3階まで辿り着くとベッドにダイブする。ぐったりとしているガイアにいつも飲ませている頭痛薬の薬も飲ませて横にすればホッと一息つくが、このまま寝かせても良くないと声をかけて上着のファーを外し、シャツの胸元を開ければクスクス笑うガイアの姿がある。
「……今晩は流石に手を出さないよ、僕のせいでもあるからね」
「全く律儀というか堅物だよな。お前は本当に。でも童貞でもない。手を出すのは早かったからな」
「流石に酔っ払いは襲えないよ?」
「全く今日だけだろ?どの口が言っているのやら」
呆れながら互いが騎士団にいた10代の時に手を出した癖にとクスクスと笑うガイアに真っ赤になってしまうディルック。それは君がと言いかけたが、ガイアが眠りの国に旅立とうとしているのを邪魔するわけにもいかないとまごついていればいつのまにかガイアが擦り寄ってきているのに気がつき、くいくいと袖を引っ張るのだから何事だ?とばかりにそばへ寄ればベッドの中に引き摺り込まれてしまったのである。
「こら!ガイア、僕はまだ片付けが……!」
「朝やればいいだろう?どうせこのままだと朝食も作ることになるんだろうし……」
「それは……」
なんだかんだいつもしないで共に寝るだけになったら子どもの頃に共にちまちまと過ごしていてよく双子のようだとなんだか子犬だか子猫のような扱いをされていた気がするのだが、いつのあの頃は互いにひっついていたな……もしかして今更なのか?と一周回ってディルックも思考回路が回らなくなっていればその子猫は更にゴロゴロと戯れてくるのだ。
「なんだか旦那の匂いがする気がする」
「僕の?まさかポーションにそんなものついているわけないだろう」
「そのはずなんだが……なんだかディルックの匂いもした気がしていて……」
「ずっと持ってはいたが……」