兎ディルガイバニーネタ進歩2「しかしいざ実際着ると流石に慣れないな……」
「おい新入り!カクテルを奥の部屋に持っていけ!すぐにだ!」
バックヤードに隠れていればサボりは許さないとばかりに指示が飛んでくる。すぐにボーイの元へ向かうと大物が来ているからか強張った顔が数人分のカクテルを差し出していた。
「奥の部屋?大事なお客様が来てるから新人は入るなって言われたんだが?」
「そのお客様が新人を所望してるんだよ。動けるのはお前くらいしかいない」
他のキャストは客とキスやら奉仕やら……つまり手が空いている素人はお前くらいしかいないのだから働いてこいということだろう。入ったばっかりだというのに随分扱いが酷い職場である。
「粗相のないようにな」
……つまりはそういうこと。たっぷりと客の相手をしてこいということだろう。男だろうと拙僧がない客だが好機とばかりにガイアは奥で接待が開かれているだろう部屋に向かった。
「……」
やられた。意外と簡単に潜入できるかもしれない、ラッキーだなと思って部屋に入って挨拶をした瞬間目の前が真っ暗になり、これである。何が案外簡単にいけそう、だ。自分自身に呆れ果ててしまう。
「……あのなぁ。いくらなんでもこれはやりすぎだ……おまけに俺一人で潜入してたんだぞ。どうするんだ」
「君ならどうとでも誤魔化しがつくだろう」
「闇夜の英雄殿はお気楽でいいな。俺は明日の机の上を考えると頭が痛い」
「僕はもう騎士団じゃないからな」
流石に不味いと背中がヒヤリとした瞬間炎が飛び込んできたと言った方が正しかった。視線だけで人が殺せそうな闇夜の英雄が扉ごと大剣でぶった斬って部屋に突入して来た時は何事かとも思ったがあれよあれよとチンピラ達を一掃し、バニーのガイアを俵のように担ぐと置き土産のように店に炎を放って爆発させて逃げて来たという訳だ。今は森の猟師小屋にて身を潜めているという訳である。
「しかし本当に何だその姿は。騎士団はいつからそんな見苦しい一団になった」
「一緒にするな。俺の独断だよ」
眉間に皺を寄せながらもしげしげと眺める闇夜の英雄もといディルック。ディルックが指摘するくらいにはガイアは際どい格好をしていたのだから冷や汗を掻きつつ、ガイアはディルックに懇願し、冒頭の言葉に戻るのである。
「……そろそろこの姿をどうにかしたいんだが」
いつまでもディルックに足を出して縛られている姿を晒したくない……というよりも縄で縛られた手を解かずに俵巻きにして持ち帰った時点で若干嫌な予感はしているのだがこれ以上醜態を晒さないとばかりに解いてくれた暗に言う。そろそろ寒いのだからと文句を言えば義兄は更にムッとした顔をする。
「君は自分が何をしたかわかっているのか?」