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    y4ec57

    @y4ec57

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    y4ec57

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    色々考えて色々書こうとして結局無理だった時のためのメモです

     怪我人が運び込まれては死人が運び出されていく。誰も彼も疲れた顔をしていて、重く淀んだ空気が滞っている。そんな寮の片隅で今日も養父の帰りを待つ。
     今朝見送る時にした約束のことを彼は覚えてくれているだろうか。毎日同じ約束をしているから、忘れるなんてことはないだろうけれど、今日もちゃんと生きて帰ってきてくれるのだろうか。
     壁にもたれかかりながら廊下の方をぼんやり眺めていると、真上から「ずっと廊下を見ていても暇だろう?」と声をかけられた。見上げればヘッドギアをつけた顔がこちらを覗き込んでいる。歯を見せて笑ったその人は、小さなラクダの形をした金属の玩具を桂蔵の掌に乗せてから、ひょいと桂蔵を抱きあげる。
    「機さん! これ、なあに?」
    「新作だ! 桂、そいつの背にあるボタンを押してみろ」
     言われるがままボタンを押すと、ラクダは虹色に光りながら動き出した。少しずつ形を変え、球体に近づいていく。そして、果実のような形になったところで光るのをやめた。
    「梨だ! ラクダさんが梨になっちゃった!」
    「ははは、凄いだろう! しかもこいつには小物が入る。だから桂、お前の大事なものを入れておくといいぞ」
    「えっ、くれるの?」
     そのために作ってきたからな、とヘッドギアに上機嫌な文字を浮かべながら頷く凸採。桂蔵はこの人のことがずっと大好きだ。どんなことを考えているのかは全然わからないけれど、心細い時に元気づけてくれるから。
    「ありがとう、機さん!」
     にっと笑って桂蔵を腕から降ろしたあと、凸採は颯爽と仕事へ戻っていく。その大きな背を見つめながら、かっこいいな、と思った。

     砥取桂蔵、当時4歳。
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