円雷静という男は、こうして後輩の要望を聞いたり、案外面倒見が良かったりするのだが、如何せん酒もタバコもする。なんならボロ負けして後輩に慰められている。物理的な甲斐性なしなのがキズであった。
先輩に連れて行かれた風俗嬢で童貞を卒業して以来、女の体の柔らかさなどしることもない。
静の隣には、現在カチカチでヒエヒエの男がいた。
そこらの人間より一等美しい顔はしている。
静はきっと別の出会い方をすれば、心象が変わったんだろうな。と男に引きずられながらぼんやりと思っていた。
パチリと目が合う。
黒曜石どころかペンタブラックの目が、静の顔を映している。
その目が三日月のようにゆるく細められる。
「見とれちゃった?」
「見慣れた」
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