勝手に溺れてろ手紙が届いた。差出人は管理会社で、内容は契約更新のお知らせだった。アパートは二年契約で、来年の三月で契約が切れる。A4の紙三枚に渡り様々な注意事項や手続きの流れが記されていた。
「さっみ」
エアコンをつける。ダウンを着たままでカーペットに腰を下ろした。買ってきたコンビニのおでんを食べながら堅苦しい文章に目を通す。更新か退去か、一月までにどちらにするか決めなければならないらしい。
四年暮らしたアパートだ。静岡で就職が決まり、会社の場所的にこのまま住み続けることは可能だが、今よりも広く、交通の便がいい場所に移る予定だった。
次の住まいの目星は付いているし、引っ越し費用も貯めた。それでも躊躇ってしまうのは、この八畳のワンルームに惚れた男の面影が残っているからだった。死ぬほどしょうもねえ理由だ。
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