(ふむ……)
コーヒーのおかわりを用意するつもりでリビングへ下りた私は、机に向かうモクマさんの背中を見つけた。忙しなく手が動いている。書き物かと思いながら手元が見える位置へ歩き進めた。
モクマさんが下手な鼻歌を奏でながら千切ったメモ用紙を三角形に折っている。
太く逞しい指が紙の上を滑る。三角形の両端を内側に折って台形へ。その端をまた外側に折る。
(あァ、耳か)
四隅の角を折り込んでひっくり返せば、カクカクしているものの動物の顔に見えた。
「〜〜にん、じゃじゃーん♪」
モクマさんの鼻歌はハミングから完全に歌唱へと移り変わっていた。
完成したのかと思いきや、モクマさんはメモパッドに備え付いている黒のボールペンを握り出した。
1727