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    aoi_sssnote

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    aoi_sssnote

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    「ソラリス(スタニスワフ・レム著)」のクリスとハリーを、設定弄ってル様と3ダルフォンに置き換えてみる遊び。親和性高い気がしてやってみた。

    いわゆる死ネタなので苦手な方は回避を。

    原作ではふたりの話がメインではないけど、とても素晴らしいです。おすすめ。
    最後のル様の心情は明記されてないので私の勝手な解釈です。
    変なことしてごめんなさい、でも楽しかった。

    研究者のル様。恋人は少し年下の安寧フォン。
    仲睦まじく愛し合っていたふたりは、優秀な研究者であるル様の仕事が忙しくなって研究に没頭し始めたことをきっかけに少しずつ拗れ始める。
    やがて擦れ違いが相互不理解と不和を生んで、段々自分の存在はル様にとって重荷でしかない、必要のないものだと病み始めて災厄フォンに。

    ある日我慢の限界だった災厄フォンがル様と喧嘩になって、その直後(やや衝動的な面がありつつ)自分などいないほうがいいんだと自害してしまう。
    そこまでフォンが追い詰められていたとは思っていなかったル様は衝撃を受け、後悔と悲嘆にくれる。



    それから数年経って、未開の星…じゃなくて島カナン(本当はソラリスですが便宜上)の研究のため島に造られた研究所に、他数人の先に赴任していた研究者と一緒に滞在することになるル様。

    そこは島そのものが意思を持ち、常に形を変えながら独自の進化を続けているという、全くの未開の島。ここから先の人間の更なる進化の鍵がそこにあると考えられていて、その島との意思疎通を図りたいというのが研究所の意向。

    そこに先に赴任していた研究者は、みんな不思議な「客」の来訪を受けて、精神を病んでいた。
    やがてル様のところにも「客」が。
    それはかつて自殺したはずのフォンで、しかも自分がル様と拗れた末に自殺したことを知らない、安寧フォンそのものだった。
    そんなはずはない彼は死んだと否定するル様に、「客」は何を言ってるんですか俺はフォンです、と言う。
    確かに姿形も性格も記憶さえ安寧フォンそのもの。
    でもそんな非科学的なことが起こるはずないとル様はフォンを強く否定する。

    先任者に聞いてみると、やっぱり同じようにみんな誰かしらが「客」として訪れていて、それで精神的に疲弊してる状態だったとわかる。
    おそらく「客」は、カナンが何らかの方法で自分達来訪者の記憶を見て、そこから一番強く心に残っているものを実体化させている、という仮説を先任者は立てていた。そしておそらくそれは正しい。
    だから実際には「客」は人間ではない、カナンの何らかの物質から作り出されたモノで、どうやったって殺せないし、殺すことに成功してもまた翌日にはいつの間にかいるのだという。

    ル様の「客」も同じ。
    死なないし、怪我も見る間に治るし、明らかに人間じゃない。でもル様のことを愛している記憶があって、まるで安寧フォンそのもののように寄り添おうとしてくる。

    ル様は苦しむ。
    フォン(便宜上、天司長フォンとする)を見るたび過去にフォンを追い詰めてしまった記憶にうなされて、夜もまともに眠れない。
    安寧フォンを愛していた。災厄フォンに変えてしまったのは自分だったのに、忙しさにかまけてきちんと向き合うことをせずに、気持ちを受け止めてやらず、結果死なせてしまった。自責と後悔と、フォンへの消えない愛に苦しむ。

    一方の天司長フォンも、ル様と一緒に過ごすうち自分の記憶や肉体がおかしいことに気付く。
    死ねない。自分はフォンという人間で、ル様を愛しているということしか覚えていない。

    一緒に過ごすうち、少しずつ優しくなっていくル様。自分が死なせてしまった本物のフォンを裏切るような罪悪感を覚えつつも、一心に愛してくれる天司長フォンの姿に、安寧フォンが戻ってきたようで安らぎを感じ始めていた。
    天司長フォンも、優しく触れてくれるようになったル様にますます愛を募らせながらも、そのル様が自分を見て誰かを思い出し、毎夜うなされることに苦しみ始める。
    きっとそれは本物の「フォン」で、自分はル様が言うように作り物の偽物なのだろうと理解し始めていた。自分は一体なにものであるのか。不安に苛まれる。

    どちらも苦しみ、それでもそれをお互いに隠して惹かれ合う。
    天司長フォンはル様と過ごす時間の中で様々なものを得て、限られた記憶と感情しかなかった自分という存在を少しずつ明確なものにしていく。

    ル様は最初こそ否定し、何なら消そうとまでしていた天司長フォンに、偽物でもなんでもいいから傍にいて欲しいと感じ始めていた。
    本物のフォンではないと理解しつつ、本物のフォンと同じであるとも感じていて、天司長フォンに「君」を愛していると告げるまでになる。天司長フォンもそれを喜んだ。
    過去の幻影に浸かった仮初めの幸福。そう分かっていてもル様にとっては本物の、愛と安らぎがそこにはあった。

    でも、所詮は天司長フォンはカナンが作り出した謎の物質でできたモノでしかない。
    島から出ることもできないし、人間のように成長もしないし、死なない。
    おそらく島から出れば存在を保てないし、そもそもそんなモノを安易に連れ出してふたりで普通に生きていくなんて不可能なこと。研究対象のモルモットにされるのが精々。
    それでもどうにか一緒に生きる道を必死で模索し始めるル様。
    でも天司長フォンは、それはきっと不可能なことだし、自分の存在はル様にとって決して良いものではないのだと理解していた。

    やがて先任者から、「客」を構成する物質を完全に分解できる装置が完成したと言われるル様。
    暗に天司長フォンを消してしまったほうがいいと勧められて、激しく拒絶する。どうにか道はあるはずだと受け入れない。
    フォンはその話を隠れて聞いていた。

    ある夜、ル様がぐっすりと眠ったことを確認してから天司長フォンはベッドから抜け出す。

    翌朝になって天司長フォンの姿がないことに気付くル様。
    嫌な予感を覚えつつ、先任者を問いただす。
    天司長フォンが自ら望んだんだ、と聞かされて半ば狂乱するル様。
    自分から消えることを申し出た天司長フォンは、ほんの小さな一陣の風しか残さず消えてしまったと言われる。

    天司長フォンから手紙が残されていると、先任者から渡される。
    自分の意思で選んだことだから誰も責めないでほしいという言葉と、ル様への愛と感謝。最後に短い文字を書いて、消した跡があった。ル様にはわかった。「フォン」と名前を書いて、消して、イニシャルだけを書いて、でもそれも滲んでいた。

    フォンを失った絶望に打ちひしがれるル様。もう何もかもがどうでもいいと、半ば廃人のようになる。
    それでも、天司長フォンが自分に残してくれたものを思い、次第に自分を取り戻していく。

    カナンの研究は打ち切られる方向で話が進もうとしていた。未知の意思ある島との相互理解も交流ももはや不可能なものだと判断されつつあった。
    島にいる研究者は意見を求められる。
    先任者(みんな「客」の存在を消していた)は島を出るという。ル様はどうする、と尋ねられる。
    ル様は残ると言った。
    ル様が差し出した手にカナンが手を伸ばしてくる(原作だと海。海が意思を持って手を這い上がろうとする)けれど、諦めたように戻っていくのを見て、島に残ると決めた。

    天司長フォンは消えてしまって、本当に何ひとつ残っていない。
    カナンの一部に還っているとしても、それはもはやフォンではなく、彼はもうどこにもいない。
    それでも、カナンはル様に手を伸ばした。そこに、フォンの面影を見たような気がした。
    カナンとの相互理解の道も、全く閉ざされているのではないはずだと、ル様は考えた。だからここに残って生きていくと決めた。


    ル様への愛と少しの記憶だけで出来上がっていた小さなモノが、ル様と関わり少しずつ血肉を得てひとつの天司長フォンという存在になり、元は作られたものだったけど次第に獲得していった自分自身の心でル様を愛して、その愛のために消えていった。
    その大きな愛に包まれて、ル様はカナンで生きていく。
    そんな話かなと思ってます。ソラリスのクリスとハリー。
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    🙏💞👏😭😭😭👏😭😭💖🙏😭😭😭😭😭😭😭😭🙏🙏🙏💴💴💴💴😭😭😭
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    aoi_sssnote

    MAIKING「形而上 楽園」11話目。

    全年齢ですが、今回ちょっと注意書き多いです。

    ⚠️とんでもない捏造と妄想のオンパレードです
    ⚠️ちょっと痛い思いをして血が流れる描写があります。流血苦手な方はご注意を
    ⚠️最後はふたりとも生きてハッピーエンドです
    ⚠️とんでもない捏造と妄想のオンパレードです(大事なことなので二回言いました)

    もう本当にやりたい放題。
    心のまま自由に何処までも羽ばたいてほしい。
    そう願って、その手を放したはずだったのに。

    生きてほしいという私の言葉に応え、サンダルフォンは無垢な笑顔だけを残して飛び立ってくれた。
    天司長の役割と、私の未練と。彼のしなやかな背に、私が託した羽はさぞや重かったに違いない。
    それを背負ったまま、サンダルフォンは長い長い刻を身も心も擦り切れるまで一途に生きた。ついにはこの広い空の下、ひとりきりになるまで。
    私が遺した言葉が、零した想いが、彼にどれほどの孤独を齎したことか。

    再び意識を手放した身体を抱いて、私は目を閉じた。
    いくら強く引き寄せても、しなやかな手足を摩っても、厚く重ねた羽で覆ってみても。サンダルフォンの肌は冷えていくばかりだった。流れ出るエーテルも止まらない。自らの意志で滅びを選択した彼を引き留める術は、私にはもうなかった。
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