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    「形而上 楽園」12話。

    最終話です。
    ここまでお付き合い下さった皆さま、本当にありがとうございました🙏

    書きたかったものは全部詰め込んだつもりです。
    どうかたくさんの方に楽しんでもらえますように…!

    声が聞こえた。
    俺の名を呼ぶそれは、俺にすべてを忘れていいと囁いた。
    背負わせた重荷も、勝手な願いも、もう俺を苦しめないからと。
    とても優しい、とても寂しそうな声で。





    誰かの名前を口走った。
    それだけは、焦燥に埋め尽くされた頭の片隅でも理解できた。だが、それが誰のものなのかを考える余裕はなく、俺は力を失って倒れ伏した彼の身体に取り縋った。
    滑稽なほどに震える指先を叱咤して、男の身のうちで悲鳴を上げているコアの状態を探る。そこに満ちているべきエーテルの欠乏は甚大で、捥ぎ取った羽の損失により浅くない罅割れが生じていた。
    悩んでいられたのは、ほんの一瞬。刹那にも満たない時間だった。
    かつて研究所で施されたことがある、コアに触れる遣り方を知っている。けれど俺にはそれを試した経験は一度もなかった。それに、これが男の望んだ結果であるのなら、俺の手は彼の意思によって拒まれるかもしれない。
    それでも。
    ぐっと腹に力を入れて震え身体を抑え込み、横臥している男の背、失われた羽の根元に手のひらを押し当てた。もう一方の手には、力なく投げ出されている血に塗れたそれを取る。握り締めた男の手は、まだ温かかった。

    …ああ。
    生きている。
    彼は、このひとは、今ここに生きているのだ。

    今度は、絶対に。
    震えそうになる眉根を必死に堪えた。
    周囲に濃く漂うあらゆる元素もエーテルも手当たり次第に掻き集めて、己の血肉に換える。そうして身のうちに満たしたそれを、彼のコアへと。広くて温かい、幾度も縋った背中から、羽の跡を辿って流し込む。
    少しずつではあるが、確かに彼のコアに俺が注いだエーテルが満ちていくのがわかった。やがて持ち直した肉体に伴い回復した自己再生機能が、俺の力では塞ぎきれなかった亀裂を閉じていく。蒼白だった頬にも僅かながら赤みが戻りつつあった。
    それらを確認してようやく深く息を吐く。
    そして。

    声が、聞こえたのだ。
    とても優しくて、とても寂しそうな。

    それは思念と呼ぶにも頼りない、断片的な感情の欠片だった。絡み合うエーテルと力を通して脳裏に流れ込んでくる。
    俺は無意識に強く唇を噛み締めた。男の手を握り締めている手に力が篭る。
    実際には、きっと大した時間ではなかったのだろう。けれど、まるで永劫にも感じるほど長く、俺はひたすらに男の横顔を見つめて待った。やがて祈るような心地で見下ろしていた俺の前で、白い目蓋があえかに震える。
    長く豊かな睫毛が空気を混ぜて、男は至極ゆっくりと瞬いた。小さく喉で呻いて、眉を顰めながら仰向いた男の双眸が、俺をとらえる。

    「……サンダルフォン、」

    その声はかろうじて音になったという体の、ひどく掠れて小さなものだった。
    血に濡れた緑の下草を背景に、よく見ればその美しい銀色の髪は所々が赤く染まっている。白くなめらかな頬の稜線には、血の飛沫がまだらに滲んでいた。
    ただ、ずっと焦がれていた色彩だけは、少しも変わらず美しく澄んで。蒼い空のようなそれに、俺を映している。

    打ち震えるほどの歓喜が肺腑の奥から迫り上がり、俺の喉と眼球の奥を熱く焼いた。
    同時に、抑え難くあふれてくるものがあった。かっと、頭の芯が熱くなる。

    「————っあんたは、ッ、どうしていつもそうなんだ!」

    腹の底がびりびりと震えるほどの怒声が響く。
    それが自分の口から出たものであることに、耳を打つ己の声と大きく瞠られた彼の瞳を目にして、俺はようやく気が付いた。

    「いつもいつも、ひとりで勝手に決めて、勝手に背負って、」

    なんてことを、と頭のどこかでは考えるのに、止まらない。
    それどころか俺は、後ろ手に肘をついて肩を持ち上げた男の腰を跨ぎ、なかば馬乗りになってその顔を睨め付けた。激情に上擦る呼吸を必死に繋ぐ。

    「あんたにとっての愛は、その正しい形は、きっと無償の庇護なんだろう。だからあんたは俺に口付け愛を告げた同じ唇で、俺のためだと別れを宣告してしまえる」

    煮え滾るほどに熱くなっている頭の中はもうぐちゃぐちゃで、震える唇から勝手に迸るそれを精査する冷静さも、言葉を選んでいる余裕も、どこにもなかった。
    彼はきっと遍くを護りたいひとで、そういう在り方を自らの意志でずっと貫いてきたひとだ。それがどれだけ尊く素晴らしく、成し得難いことであるか。わかっている。わかっているつもりだけれど。
    いま俺の心に嵐のように吹き荒れているもの。
    それを、どうしても思い知らせてやらなければならない。
    そんな抑えがたい衝動に突き動かされるまま、俺は彼の胸ぐらを掴み上げることまでしてみせた。

    「羽を、棄てるなんて…どんな理由があるのか知らないが、あんたは、っ、あんたは俺の前で、二度も死ぬつもりなのか!」

    呆然と瞳を見開いたまま、されるがままに俺を見上げていた男が息を飲む。薄く形良い唇が開いた。
    小さく震えているそれが俺の名前を呼ぶよりも先に、すべてを吐き出す。

    「何がもう苦しませないだ、もうじき終わるだ、俺がそんなことを望んだか? 苦しかったろう、寂しかったろう? ああ、辛かったさ、苦しかったし寂しかったよ、だから何だ! すべて俺が選んだものだ!」

    肺が空になるほどに力一杯に叫んで、俺は激しく胸を喘がせた。軽い目眩さえして、膝をついて跨いでいた男の大腿にへたり込むようにして座り込む。
    まだ胸ぐらを握り込んだままの俺の両腕を、身体を起こした彼の手のひらが掴んだ。痛みを感じるほどに強く。

    「あんたの、……貴方の見ていた景色を、少しでもたくさん知りたかったから。貴方が守ったこの世界を、俺も愛して、守りたいと思えたから」

    サンダルフォン、と震える声が呼ぶ。俯いた俺の顔を覗き込もうとする気配があった。俺は頭を振ってそれを拒む。
    いま彼の瞳を見てしまえば、きっとまた、もう何も言えなくなってしまう。それでは、だめなのだ。
    そんな気がしていた。

    「いつか貴方のところへ還る時には、貴方が俺に望んでくれていたように、対等に向き合えるように。それを自分に許せる俺になれるように。貴方には到底届かない天司長でも、俺なりに…ようやく……なのに、」

    忘れたいとか、自由になりたいとか、そんなこと。一度だって。

    「俺の気持ちを勝手に決めて、勝手に、俺から貴方を取り上げようとしないでくれ」

    胸元の布地に、ぽつぽつと小さな雫が弾けた。彼の脚を覆う黒いそれにも、いっそう暗く歪な模様を描きながら染みていく。
    ぼろぼろと見苦しくあふれるそれは止まってくれず、俺はせめてと唇を噛んで嗚咽を堪えようとした。

    「っ、ふ、」

    なのに、きつく噛み締めたそれの隙間から、小さく引き攣った呼気が零れる。
    気が済むまで喚いて後は泣き出すなんて、まるでこどもの癇癪だ。掴まれたままの腕を振り解いて身体を捩ろうとした俺を、しかし男は許さなかった。
    長い腕が背を攫って、ぶつかるほどの激しさで抱き寄せられる。肩口に額を埋めるように押し付けた彼は、俺を震える腕で自らに縛り付けた。

    「すまない、」

    掠れた声が、ただそれだけを告げる。あえかに震える吐息が落ちて、俺の胸を撫でた。それはひどく熱く、湿っていて。
    俺は涙を堪えることを放棄した。

    「俺、っ、言いましたよね? 貴方が好きだって。一緒に光華が見たいんだって。貴方は俺に約束したのに、なのに、」
    「すまない、サンダルフォン。私が愚かだった、私が間違っていた」
    「なんで俺の目の前で、俺を置いて、…死、死んでしまうかも、しれなかったのに……っ」

    遠ざかっていた恐怖が蘇る。指先から血の気が引いて、俺は俺を抱き締める彼の腕に震える指で縋りついた。

    「すまなかった、…どうか、泣かないでくれ」

    顔を上げたそのひとが、そっと俺の頬に触れる。
    僅かに顔を傾けて覗き込んでくる、その顔には深い自責が滲んでいる。蒼い瞳は痛々しく眇められて——そこに俺を責める色が少しも見えないことが、ひどく遣る瀬なかった。

    「…俺は貴方を忘れていた薄情者なのに。貴方は俺に恨言のひとつも聞かせてくれないんですね。俺はまだ、貴方の心を受け止めるのに足りませんか? 貴方の庇護の対象にしかなれないんですか」
    「サンダルフォン、そんなことは」
    「ないと仰るなら、俺にもちゃんと背負わせてください。俺だって、貴方を愛したいんです」

    美しい白銀のそれを汚している血を梳き落とすように、俺は彼の髪に指を通した。顔の両脇のそれを後ろへ流して、前髪をそっと掻き上げる。そうすると、畏れすら感じるほどに端正で隙のない彼の容貌が少しだけ幼くなることを、俺はこの島で過ごした日々の中で知っていた。

    ——この、ふたりきりの閉じられた場所で。
    俺は彼を知らず、知らないままに、そのすべてに惹かれていった。夢中で恋をして、その優しい腕と羽とに包まれる安息を知って——やがてはかつてと同じように。
    俺の願いはいつだって同じだった。
    俺を、選んでほしい。
    俺にも、抱き締めさせてほしい。
    未熟で頼りない羽かもしれないけれど、遍くを守り導いてきたその孤高な背中を温めることくらいは、できるはずだから。

    「だから、もっとちゃんと、俺を見て。ちゃんと、怒ってください。…貴方を二度も裏切って悲しませた、酷いやつだって」

    食い入るように俺を見つめる彼に、俺は微笑んだ。無理矢理に作ったそれは、きっと情けなく歪んでいただろう。
    大腿に乗り上げたまま抱えられているせいで、俺の方が少しだけ視点が高い。だから。空の色を嵌め込んだような涼しげな瞳の端に、透明な雫が丸くふくらんでいくのが、よく見えた。

    「できない。言っただろう、サンダルフォン。君がなにものでも構わない、何をしようと、どんな君でも、永遠に愛していると」

    困ったように笑う、その眦から、留まりきれなくなったそれがはらはらと零れ落ちる。

    「だが、本音を言うならば、少し寂しくはあったから……サンダルフォン、どうかもう一度、」

    私の名前を呼んでくれ

    懇願するような囁きは揺れていて、俺は二本の腕もふたつの羽も目一杯に伸ばして、彼の背を抱き締めた。
    白い肌を無残に裂いていただろう傷はもう塞がっている。かつてそこに何かが負われていた痕だけが、微かに指先に触れた。
    ああ、ようやく辿り着けた。
    そう思えた。

    「ルシフェル様、ルシフェルさまっ」
    「サンダルフォン、あぁ、ようやく君に…」
    「ルシフェルさま、ごめんなさい、貴方をひとりにして、ルシフェルさま…!」

    温かくあふれる雫に濡れた頬を擦り寄せ、腕を伸ばし、同じ数になった羽を絡ませて。まるでひとつのかたまりになったみたいに、どこもかしこもきつく重ね合わせる。
    そうして俺たちは長い時間、ただ互いの温もりを確かめあっていた。





    泣いて叫んで散々に騒いだせいで、俺の体力は情けなくも限界だった。四枚もの羽を失ったルシフェル様の身体も、コアに走った亀裂は無事に修復されたものの、やはり相当に疲弊していて。
    互いの肩に凭れあうような体勢で腰を下ろして、俺はルシフェル様からたくさんの話を聞いた。
    彼がしてきた事の意味。それから、しようとしていた事の理由。
    結果的に彼は多くの羽を失い、天司長の座と力はこの空の世界に溶けて——彼も俺も、役割も何も持たない、本当にただの命となった。

    ゆっくりと丁寧に、俺を気遣いながら語られるそれらを聞いているうち、俺は次第に血の気を失っていった。
    つい先刻、彼に吐いた散々な言葉の数々を思い出す。よくもあんな——彼の行動の原理は、すべてが俺のためだったのに。
    ルシフェル様がすべてを語り終えると、拳を握り締めて耐えていた俺は、矢も盾もたまらず彼に向き直った。

    「ルシフェル様、俺、っん、」

    前触れも何もなかった。ごく軽く押し付けられたルシフェル様の唇が、俺の唇の表面だけをやわらかく吸って離れる。
    続くはずだった言葉を啄んでいったそれに思わず瞬いて、もう一度口を開いたら、今度は少しだけ深い口付けで塞がれた。
    腰を抱かれて、懐に深く引き寄せられる。間近に見上げた蒼い瞳は、やわらかく笑んでいた。

    「私が勝手にしたことだ。羽の四枚で君をこの世界にとられずに済んだのだから、安いものだよ。…君をあんなふうに泣かせてしまったことは、反省しているが」

    申し訳なさそうに眉尻を下げて、ルシフェル様は俺の後ろ髪を撫でる。
    愛おしむような仕草で醜態を蒸し返されて、様々な事柄への居た堪れなさに、俺はうろうろと視線を彷徨わせることになった。

    「あ、……あれは、その、貴方を失いたくなくて必死で、……乱暴な態度をとってしまって、失礼しました」

    申し訳なさと羞恥に、段々と顔が熱くなる。
    ルシフェル様は、ふふ、と小さく笑った。髪を撫でていた指先が、俺の赤くなっているだろう耳朶を悪戯に摘む。

    「謝ることなどないよ。不謹慎だが、嬉しくもあったのだ。君があんなふうに遠慮なく私に相対してくれたのは、初めてだったから。誰かに叱られたのも初めてだ」

    言葉通りに、彼は面映そうに眦をゆるめている。答えあぐねて、俺は結局、行動で返すことにした。
    初めての行為に早くなったコアの拍動と緊張を押し殺して、少しだけ頬を傾けながら顔を寄せる。形良く整ったルシフェル様の唇、その端に自らのそれを軽く押し当てると、嬉しそうに笑った彼が頬を傾けて、互いのそれを綺麗に重ね合わせてくれた。

    ゆっくりと落ちていく血潮のように鮮やかな陽の光に照らされて、ルシフェル様の白銀の髪は温かな色彩を孕んでいる。薄紅にも橙にも見える淡くほのかな光を纏うそれも、明るい空の色をした双眸も、うっとりと見惚れてしまうほどに美しかった。

    「…綺麗ですね」

    気付いた時にはもう言葉は口をついている。
    彼はひどく優しく微笑んだ。赤く染まった空を見上げて言う。

    「太陽が発する可視光線の中で、最も波長が長く遠くまで届く光が、赤だ。夜との境目の時間帯は、地上と太陽との距離が昼間よりも長くなる。故に、波長が短く拡散されやすい紫や青は地上へと至る前に見えなくなり、届き得る赤色の光が空を染める。…サンダルフォン、君の瞳と、同じ色だ」

    俺を見つめるルシフェル様の肩に、俺は頬を擦り付けるようにして頭を預けた。
    俺が意図したところは、彼に正しく伝わってはいない。けれどルシフェル様のそれは、俺への愛の言葉に違いなかったから。とても、とても嬉しかった。
    ルシフェル様は俺の額にそっと唇を押し当てた。

    「サンダルフォン。私に残されたものは、星の獣としての長い命と、従来のそれとは比べるべくもない僅かな力だけだ。この島にも、雨が降るし風も吹く。嵐がくることもあるだろう」

    ほんの少しだけ目を細めて俺の顔を覗き込む彼を、俺はしばしの間じっと見上げていた。二枚きりになった羽で俺の背を包もうとする、その仕草でようやく思い至る。

    「…ああ、」

    おかしいと思っていたのだ。
    どうしてこの島は晴れてばかりだったのか。
    初めての荒天に見舞われたあの時、どうして彼が罰の悪そうな顔で苦笑していたのか。
    それだけではない。この島では異なる季節の花々が同時に開き、種々の果物が豊富に実り続けている。よほど気候に恵まれた空域に位置する島なのだと思っていたけれど。
    空はいつも蒼く澄んでいて、緑は青く瑞々しく、水は碧く美しい。

    「ここは、貴方が作った楽園だったんですね。…俺のための」

    彼は黙って微笑んだ。けぶるように美しいそれは優しくて、少しだけ————。
    堪らなくなって、俺は殊更に明るく笑ってみせた。

    「では、まずは雨風を凌ぐ場所を…家を造りましょうか。小さくて簡素なもので構わないですよね? 俺たちふたりだけなのですから」
    「…家を造る?」

    はたはたと長い睫毛を閃かせる彼に俺は頷く。
    陽射しに焼かれようが冷たい雨に降られようが、肉体の稼働を維持していく上で何ら支障のない俺たちだ。だからそれはどうしても必要なものでは、なかったけれど。

    「ええ、そうです。艇の修繕や空の民の家の普請を手伝った経験もありますから、そう立派なものを目指さなければ、どうにかなるかと」
    「そうなのか。その話は初耳だな」
    「この羽でも近くの島までなら問題なく渡ることができるのでしょう? だったら、材料や道具は手近な島で調達してくればいい。休み休み飛んで、……そしていつか、光華を一緒に見に行くんですよね」

    夢見るような心地で、夢ではなくなったふたりで生きる未来を語る。
    弧を描く俺の唇に、ルシフェル様のそれが重なった。離れてもまたすぐに結びつくそれが、どうしようもなく幸せで、俺は彼の首筋に両腕を回してしがみついた。
    白くて大きくて優美な一対の羽が、俺の身体を優しく覆う。温かなそれに自らの鳶色の羽を絡ませて、俺は彼の背中を抱いた。

    「一緒に創っていきましょう。俺たちだけの楽園を」

    重なった肌を通して、互いのコアの拍動が伝わる。温かく、力強い。
    ふたりほとんど同時に深く吐息を吐いて、小さく笑いあった。

    「…ああ。今度こそ、君と共に。愛しているよ、私のサンダルフォン」
    「ルシフェル様、俺も。貴方を愛しています。ずっと、ずっと、」


    誰からも打ち捨てられた、何もない小さな島だ。
    けれどここには彼がいて、俺がいて。
    それだけで。



    ようやく辿り着いた楽園で、ふたりで、生きていくのだ。






    .
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    aoi_sssnote

    MAIKING「形而上 楽園」11話目。

    全年齢ですが、今回ちょっと注意書き多いです。

    ⚠️とんでもない捏造と妄想のオンパレードです
    ⚠️ちょっと痛い思いをして血が流れる描写があります。流血苦手な方はご注意を
    ⚠️最後はふたりとも生きてハッピーエンドです
    ⚠️とんでもない捏造と妄想のオンパレードです(大事なことなので二回言いました)

    もう本当にやりたい放題。
    心のまま自由に何処までも羽ばたいてほしい。
    そう願って、その手を放したはずだったのに。

    生きてほしいという私の言葉に応え、サンダルフォンは無垢な笑顔だけを残して飛び立ってくれた。
    天司長の役割と、私の未練と。彼のしなやかな背に、私が託した羽はさぞや重かったに違いない。
    それを背負ったまま、サンダルフォンは長い長い刻を身も心も擦り切れるまで一途に生きた。ついにはこの広い空の下、ひとりきりになるまで。
    私が遺した言葉が、零した想いが、彼にどれほどの孤独を齎したことか。

    再び意識を手放した身体を抱いて、私は目を閉じた。
    いくら強く引き寄せても、しなやかな手足を摩っても、厚く重ねた羽で覆ってみても。サンダルフォンの肌は冷えていくばかりだった。流れ出るエーテルも止まらない。自らの意志で滅びを選択した彼を引き留める術は、私にはもうなかった。
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