嵐に負けず その日は、鮮やかに色づいたばかりの葉を全て削ぎ落とすような勢いで強風が吹き荒れ、我らが自慢の美しい白竜の騎士団長が柳眉を寄せていた。
柳眉ってのが女性に対する言葉だって言うのは勿論承知しているが、思わず使いたくなるくらいランスロット団長は美人だ。
恐らくこの国一番の。
ランスロット団長ファンクラブの一員である俺はそう思っている。勿論、全会員一致の意見だろう。
濡れたような黒髪、透き通った宝石のように綺麗な瞳、スッと高い鼻梁に薄い唇はいつも濡れていて艷やかだ。
「ヴェイン副団長がランスロット団長の唇にリップクリームを塗っていた」という噂は聞かなかったことにした。
風が一際強く吹き、ランスロット団長の髪が乱れる。普段は隠されている形のいい耳が見えてしまった。
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