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    *実在する場所や人物、キャラクターとは一切関係ありません。

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    DONE桜のなかうろうろする十夜

    2022.11.7(時差ということにしたい)
    舂く揺れて 未だ微睡みに包まれている寮の扉を押しひらけば、出たばかりの日差しをふんだんに纏った風が一層くどいと言ってもよいほど丹念に穏やかな暖かさを押し付けて来る。そんな影も暗さもない朝だった。
     アイドルとして必要なスキルの育成は勿論、生活を支える年季の入った寮舎から一人出た青年、宗像十夜は、その長い脚でもって学舎へ向かうべく最寄り駅へと緩やかな坂を下っていた。舗装された坂の脇に立つ木々は温厚過ぎる陽気に手を広げ伸ばすかの如く、空へと差し出した枝に小ぶりな花を咲かせ全身を白で埋め尽くし、共に揺れる葉もまだ若く柔らかいのか、それすら色素が薄かった。
     人のいない、まだひっそりとした歩道橋を渡るだけでもそこかしこ視界に散らばる柔らかい花片。コンクリートの灰色を覆い、皺のない張った制服の白に触れ続ける淡色。風流や風情を超えた絶え間のない春嵐に酔いそうだった。桜並木とも言えぬ路でこのありようだ。いま公園や奥山の方へ立ち入ったのなら、流石に息苦しさを感じそうである。ちらりとその景色を想像して、十夜は靄ならぬ桜掛かった道の端で静かに酩酊した。
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