宝物欠損描写あります
かつてはあのひとの身体の一部だったであろう中指と薬指は、今はわかたれ僕の宝箱に収まっている。本当は捨てられなかっただけ。僕は、切り捨てられたものを拾っただけ。これは、門倉さんの身体の一部だった。
腐敗臭が漏れないよう用意した、特注のガラスの小箱。
そのなかに入る、指がふたつ。ひとつは第一関節から、もうひとつは第二関節を境に。はなればなれの指たちを捨てられなくて仕舞う。落とし物は持ち主に返す義務があるが、捨てられた物はきっと貰ってもよかった。
あのときの門倉さんは修羅のようで、僕と相対する勝負相手が雇った傭兵崩れをひとりで戦車のように薙ぎ払っていた。 千切っては投げと描写するのが誇張ではないくらい。
僕を守って、というときっと語弊があるだろうが、ともかく戦闘の末に相手のギザギザのナイフがスッパリと彼の指を分かち、僕のところへ転がり落ちた二本の指を、あのひとは気にするふうもなく一瞥したあとまた目の前の相手へと向き直った。
きちんと処置したらくっ付くんじゃないかと、僕はそれを急いで拾って、脱いだシャツに包んでそれからの記憶はない。頭に衝撃があったことだけ覚えている。
目が覚めるとベッドの上、隣にはシャツに包まれた指がそのまま置いてあった。
ゴミ箱に捨ててしまうのも忍びなく、では、僕がもらってしまおうと持って帰っていまに至る。
僕は眺めるだけ。
分たれた指が、腐っていく様子を。
手袋をした門倉さんの左手の中指と薬指が、他の指より短い様を。