ogata
PAST🐯日本一ということで、太古の昔に書いた火村×アリスを引っ張り出しました。横書き用に字下げしてないものをコピペしたので、少し読みにくくてすみません。いつかなおすかもしれない
Distance今朝聞いたアリスの声が耳から離れない。
学生の頃からの付き合いだ、アリスの寝言を聞いたのはこれが初めてではない。
「火村、ノート見せて」だの「火村、腹減った」だの「火村、眠い」だの、愚にも付かぬ寝言は学生時代から結構な数聞かされてきた。「眠い」に至っては言語道断だと言ってやったこともある。寝ている癖に眠いとは何事か。
しかし今朝聞いたそれは、今まで聞いたような馬鹿にしてやれる内容とは異なる種類のものだった。
自分が時々見る夢のような、内面に潜む闇が引きずり出されたようなものとも違う。
ただ、顔を見るまでもなく、おそらくアリスは夢をみているのだろう、と思った。
聞き逃せない単語が幾つか出てきたこともそうだが、いつもとは口調が全く違ったからだ。
15039学生の頃からの付き合いだ、アリスの寝言を聞いたのはこれが初めてではない。
「火村、ノート見せて」だの「火村、腹減った」だの「火村、眠い」だの、愚にも付かぬ寝言は学生時代から結構な数聞かされてきた。「眠い」に至っては言語道断だと言ってやったこともある。寝ている癖に眠いとは何事か。
しかし今朝聞いたそれは、今まで聞いたような馬鹿にしてやれる内容とは異なる種類のものだった。
自分が時々見る夢のような、内面に潜む闇が引きずり出されたようなものとも違う。
ただ、顔を見るまでもなく、おそらくアリスは夢をみているのだろう、と思った。
聞き逃せない単語が幾つか出てきたこともそうだが、いつもとは口調が全く違ったからだ。
33chop
DONEミスリードテリトリー3~真夏のネタバレ即売会~開催おめでとうございます👏
新しく描いた火アリ展示です😚
マンガもうひとつ、ようやく出来たので追加しました💪
2人がわちゃわちゃしてるだけのマンガです 7
33chop
TRAININGここ最近の、火アリマンガ詰め合わせです。デジタルお絵描きの自主練で、ちまちま描いています。
大好きな火アリ作家さんのファンアートも混じってます。
ミステリ復活楽しいです。 10
いずみのかな
DONE有栖川作家編 ヒアリ わがままとわがままナポリタン 失恋の心を癒すのは、新しい恋に限る。
恋愛の最後なんてみっともなくて辛いだけだ。いかなる形の別れであっても、心の奥に隠してあったものが剥き出しになる。なにより、自分の醜さが露呈する。恋は前向きで美しいなんて嘘だ。エゴと我が侭に塗れた、手に負えない暴走する感情がコアにあるのだから。
本当に手に負えない、と思ったのだ。
あの男と来たら、紳士な振りをして排他的で、優しい顔をして実際は線を引く。こちらの覚悟なんて知ったことじゃないとばかりに、お前が大事なんだ、と言いながら本心を巧みに隠していく。
自分という存在が必要だろう、と傲慢に構えながら、心の底で相手の心を推量しては怯えていた。か弱い乙女ではないのだから、と本音を飲み込みながら笑顔で接するのは辛く、会う度になにかに罅が入る音が脳の中で響いていた。話してはいけないと頑なに思い込むことで、関係すらも硬化していくことからは目を背け続けた
9544恋愛の最後なんてみっともなくて辛いだけだ。いかなる形の別れであっても、心の奥に隠してあったものが剥き出しになる。なにより、自分の醜さが露呈する。恋は前向きで美しいなんて嘘だ。エゴと我が侭に塗れた、手に負えない暴走する感情がコアにあるのだから。
本当に手に負えない、と思ったのだ。
あの男と来たら、紳士な振りをして排他的で、優しい顔をして実際は線を引く。こちらの覚悟なんて知ったことじゃないとばかりに、お前が大事なんだ、と言いながら本心を巧みに隠していく。
自分という存在が必要だろう、と傲慢に構えながら、心の底で相手の心を推量しては怯えていた。か弱い乙女ではないのだから、と本音を飲み込みながら笑顔で接するのは辛く、会う度になにかに罅が入る音が脳の中で響いていた。話してはいけないと頑なに思い込むことで、関係すらも硬化していくことからは目を背け続けた
いずみのかな
DONE有栖川作家編 ヒアリ ウソツキとウソツキGood morning,yesterday 物事の終わりはいつだってあっけない。短くはないこれまでの人生の中で、当時はかけがえがないと真剣に思っていたものも幾度となくこの手からこぼれていった。そのときは胸が張り裂けそうな思いに駆られても、ふと気が付けば、まるでぼんやりと見ていたドラマの結末のように、どうでもよい思い出のひとつになってしまう。そんなことを両手に余る以上体験してきた。
幻想なのだ、心から愛するなにかと出会えるなんてことも、もう二度と埋められないものがこの世にあるなんてことも。
それは若さや青さが作り出した都合のいい舞台装置で、自分を主人公にするために欠かせない小道具でしかない。
渇望していた輝かしいなにかをついに得たそのときには、これを失ったその日に自分の世界が終わる、そう強く感じることも珍しくない。やがて長いなり短いなりの時を経るうちに、輝いていたはずのそれは色褪せ、錆びつき、日常の中に溶け込んでしまい、そのときには鈍い光すら放たなくなっていることに気が付く。
12870幻想なのだ、心から愛するなにかと出会えるなんてことも、もう二度と埋められないものがこの世にあるなんてことも。
それは若さや青さが作り出した都合のいい舞台装置で、自分を主人公にするために欠かせない小道具でしかない。
渇望していた輝かしいなにかをついに得たそのときには、これを失ったその日に自分の世界が終わる、そう強く感じることも珍しくない。やがて長いなり短いなりの時を経るうちに、輝いていたはずのそれは色褪せ、錆びつき、日常の中に溶け込んでしまい、そのときには鈍い光すら放たなくなっていることに気が付く。
いずみのかな
DONE有栖川作家編 ヒアリ、へんてこな話です。リセットボタンを押しながら電源をお切り下さいロマンス 出会いは完璧だっただろう。天国のような陽が降り注ぐ午後、整った美しい横顔、一万分の一の掛けに乗った瞬間。
一瞬で恋に落ちた。もう他の何も目に入らない。彼を逃すつもりは無いし、手放すなんてもっての外だ。蜘蛛に囚われた蝶のように、どうやっても逃れられない。
だから、将棋のように、少しずつ詰めていった。
名前を教え合い、挨拶をするようになり、並んで歩いて、偶然を装って手を繋いで……。
最初に躓いたのは大学三年のときだ。思いのほか繊細だった彼の中に土足で踏み込んでしまった。その反発は驚くほどで、リセットするのにとても苦労したものだ。
あれから何度、この関係が壊れていっただろうか。
その度に自分の愚かさにため息をつき、彼の臆病さに涙しながらも、その度にまた初めからやり直していった。
2797一瞬で恋に落ちた。もう他の何も目に入らない。彼を逃すつもりは無いし、手放すなんてもっての外だ。蜘蛛に囚われた蝶のように、どうやっても逃れられない。
だから、将棋のように、少しずつ詰めていった。
名前を教え合い、挨拶をするようになり、並んで歩いて、偶然を装って手を繋いで……。
最初に躓いたのは大学三年のときだ。思いのほか繊細だった彼の中に土足で踏み込んでしまった。その反発は驚くほどで、リセットするのにとても苦労したものだ。
あれから何度、この関係が壊れていっただろうか。
その度に自分の愚かさにため息をつき、彼の臆病さに涙しながらも、その度にまた初めからやり直していった。
いずみのかな
DONE有栖川作家編、ヒアリ 懐かしの八神君の家庭の事情的なシミュレーション 大阪の空は京都のそれと比べて狭い。
だからどうした、と言われても困る。ただ、すっかり通いなれた地下鉄の駅からふと空を見たとき、そう感じただけなのだ。
この場所はまだ四天王寺なんて大きな寺があるから空の面積も広いが、梅田にいくとごちゃごちゃとしていて、作りかけのパズルのようになっている。普段から大学と天皇家の敷地に挟まれた、空を見るにはもってこいの場所にいる火村にとって、たまに上を見て圧迫感を感じるのが新鮮だっただけだ。
こんなことをうだうだと考えているのはつまり現実逃避だと、火村はやや自棄な笑いをこぼした。嫌なことから逃げたいわけではない。嫌かといわれたら、多分考え込むだろう。あまりにもややこしいことになっているから頭を抱えているというのが、多分正しい分析だ。
7534だからどうした、と言われても困る。ただ、すっかり通いなれた地下鉄の駅からふと空を見たとき、そう感じただけなのだ。
この場所はまだ四天王寺なんて大きな寺があるから空の面積も広いが、梅田にいくとごちゃごちゃとしていて、作りかけのパズルのようになっている。普段から大学と天皇家の敷地に挟まれた、空を見るにはもってこいの場所にいる火村にとって、たまに上を見て圧迫感を感じるのが新鮮だっただけだ。
こんなことをうだうだと考えているのはつまり現実逃避だと、火村はやや自棄な笑いをこぼした。嫌なことから逃げたいわけではない。嫌かといわれたら、多分考え込むだろう。あまりにもややこしいことになっているから頭を抱えているというのが、多分正しい分析だ。
いずみのかな
DONE有栖川作家編 ヒアリ たしてもひいても小さな宇宙 高校の同級生から来た葉書を何度も読みながら、ソファでだらしなく寝そべっていたら、急に世界が薄暗くなった。
「……きみなぁ、お邪魔します、とかそれくらい言えんのか」
「お邪魔します」
棒読みでそう返しながら火村はひょいと体を起す。再び視界が明るくなったことに満足しながら有栖はよ、と身を起した。
「こんな時間にどうしたん」
言いながら時計を見ると、もうすぐ十一時になろうという頃だ。
「いや、明日も大阪に用があるから」
「フィールドワークか?」
そう聞いてみると火村はネクタイを取りながら、
「いや、本業の方」
「なんだ、そうか」
「なんだよ、その残念そうな声は」
「いや、予想が外れたからそれが出とるだけやろう」
実際は残念じゃなくて安心してるのほうが割合として高いのだが。
4075「……きみなぁ、お邪魔します、とかそれくらい言えんのか」
「お邪魔します」
棒読みでそう返しながら火村はひょいと体を起す。再び視界が明るくなったことに満足しながら有栖はよ、と身を起した。
「こんな時間にどうしたん」
言いながら時計を見ると、もうすぐ十一時になろうという頃だ。
「いや、明日も大阪に用があるから」
「フィールドワークか?」
そう聞いてみると火村はネクタイを取りながら、
「いや、本業の方」
「なんだ、そうか」
「なんだよ、その残念そうな声は」
「いや、予想が外れたからそれが出とるだけやろう」
実際は残念じゃなくて安心してるのほうが割合として高いのだが。
いずみのかな
DONE有栖川作家編。ヒアリ前提別れたあと。取り残されたのは誰、自由になったのは誰。サマータイムブルース ケーブルカーを降りて坂をもう少し上がり、角を曲がるとモスグリーンの小さなアパートメントが見えてくる。そこの三階が現在の住処だ。期間限定とはいえルームシェアに申し込んだ甲斐はある、見渡しの良い心地良い部屋だった。
以前住んでいた町も坂が多い土地だったが、この町には負ける。海から一気に駆け上がる坂の急勾配、潮の香り、降り注ぐ日差し。木目のボディーが可愛らしいケーブルカーはそこそこのスピードでメインストリートを走りあがる。どこにいくにも坂、坂、坂。そして陽気な笑い声。上に上がる七色の旗も示す通り、懐の深い町だと思う。同じカルフォルニアでもLAの飢えを含んだ渇きとは違う。頭が良くて野心がない街、と評したのは一体だれだったか。
7574以前住んでいた町も坂が多い土地だったが、この町には負ける。海から一気に駆け上がる坂の急勾配、潮の香り、降り注ぐ日差し。木目のボディーが可愛らしいケーブルカーはそこそこのスピードでメインストリートを走りあがる。どこにいくにも坂、坂、坂。そして陽気な笑い声。上に上がる七色の旗も示す通り、懐の深い町だと思う。同じカルフォルニアでもLAの飢えを含んだ渇きとは違う。頭が良くて野心がない街、と評したのは一体だれだったか。