2. Mother なぜ、こんなものを持ち帰ってしまったのだろう。
メァリは崩れた床にごろりと腹ばいになって、目線をそれに合わせた。
ぼろぼろになった、何かのぬいぐるみ。魔物にも人間にも見える。
力なく垂れた首が哀れを誘うが、どうしてやればいいのかよくわからない。
「大事にされてたんだろうな」
と呟いて、小さな頭を指先で撫でてやる。
と、人形がふと顔を上げた。
かたかたと震え、おもむろに立ち上がる。四肢の感触を確かめるように数歩よろめいたかと思うと、メァリの方を振り返り、踊り子みたいに可愛らしくお辞儀をした。
メァリは笑って、肩越しに振り返る。
「また変なことしてる」
音も無く背後に現れた、背の高い影。彼は読みがたい表情のまま、すっと手を引いた。
1799