3 はい、あーん ダイ×アバン 夏の新作が出たのだと、こちらの言い分も聞かずに引っ張っていかれて、気が付けば駅前のカフェで教え子たる生徒と向かい合わせでドリンクを飲んでいる。
ダイくんが頼んだのはオレンジのトッピングがいかにも夏らしい、エスプレッソフローズンドリンクで、私が赤いスモモがアクセントとなって可愛らしい、スモモシェイク。
すると、目の前の教え子が、スプーンでオレンジジャムの掛ったクリームをスプーンですくって私に差し出し、屈託のない笑顔で「あーん」してくる。
「先生?」
「いやですね、ダイくん。いくら何でもこれは」
「興味ない? どんな味かなって。ほら、美味しそうだよ?」
スプーンの上にはスッキリとした真っ白な生クリームが乗っていて、そこにはオレンジジャムが乗っている。きっと、このオレンジはそんなに甘くないだろう。生クリームにアクセントになるように少しばかり酸味の濃い、夏らしい味に決まっている。
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