ある日の「お待たせ致しました、ありがとうございました」
女性の店員に丁寧に差し出された手提げを受け取って、会釈の代わりに笑顔で返す。
直感で手に取ってしまったが、とてもいい買い物が出来た、と受け取った手提げを振りながら、店外へと向かい笑みを溢す。
「ナタリー」
店の外で待っていたレイスが、片手を緩く振っている。
「待たせてしまったわね、どこか座れるところに入っていてもよかったのに」
駆け寄ると、軽く首を横に振ったレイスが片手を差し出してくる。
「そんなに待ってないわ、大丈夫よ。行きましょうか」
「メルシー!えぇ、行きましょう」
出された手をぎゅっと握ると、レイスが何故か驚いたような表情を浮かべる。
「えっと、どうしたの?レネイ」
「いえ、そうじゃなくて、そっちのつもりだったの」
困ったような笑みを浮かべながら、空いた方の手でレイスが指さしたのは、先ほど買った手提げだった。
「あら、ごめんなさい。でも私はこっちの方が嬉しいのだけれど…貴方はどうかしら?」
繋いだ手を視線の高さまで上げると、ぎゅっと強く握ってからにっこりと笑って首を傾げる。
暫く目をぱちぱちさせていたレイスだったが、ふっと息を吐き出して笑う。
「そうね、私もこっちの方がいいわ」
思いがけない行動に驚いていたレイスだったけれど、せっかく繋いだのだから、と手をわざと大きく振ってあげる。
その度にレイスがクスクスと楽しそうに笑う。
彼女の楽しそうな笑みと、繋がれた手の温かさに、自然に笑みが溢れた。