君はロックを聴かない 放課後、昇降口。いつもならこの時間に居るはずのない彼女の後ろ姿は、すっかり見慣れて風景になってしまったここでも際立って見えた。
「あれ、ルーシー?今日部活は休み?」
「あ、アイク!そー、走ってスッキリしたかったんだけどなぁ。まぁちょっと脚の調子も良くないからいい機会ではあるんだけど」
「何か良くないことでもあったの」
「んー、まぁそういう感じ?すっごくUNPOGな日だったんだー」
「……じゃあ今日時間あったりする?」
いつも元気いっぱいで、ただそこに居てくれるだけで周りを笑顔にしてしまう彼女の初めて見る浮かない顔。それを見て僕は、僕がどうにかしてあげたい、彼女を笑顔にしてあげたい、音楽を聴かせてあげたい、そう思った。
2536