君だけがいないアウローラ歴が始まるずっとずっと気の遠くなるような昔。
純粋種の吸血鬼悪魔天使しか存在しなかった時代。
「それは“鼓動”というんだよ」
優しく彼女はそう言って微笑んだ。
無知で無垢な私にゆっくりと丁寧に一つ一つ教えてくれた。
翼の生えた背中。
翼が無意味になった私達は、大地での移動の仕方を懸命に学んだ。無意味な部品だと思っていたこの足で歩くことを知った。
彼女と二人だけの人生を始めた。
翼は飾りになった。
でも気にならなかった。
飛べなくてもいいからただただ彼女と歩みたかった。
私が、“飛べない籠の鳥”でいた方がきっと彼女の結末はもっと優しいものだったと思う。
◇
長い白銀色の髪がベットの布を這う。
ゆっくりと身体を起こした。
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