愛は瞠目(鬼典)「鬼丸、あんた寝癖がついているぞ」
「あんた、卵焼きが好きだったよな」
「少し隣りに座ってもいいか」
どうにも、大典太の様子がおかしい。
その日はいつも通りの朝で、いつもとは少し違う起床であった。
定刻より早く目覚めた鬼丸は布団から起き上がると、早朝の内番に向かうために支度を始める。一ヶ月に数度の頻度でまわってくる朝の内番は様々な種類があり、今日の当番は馬の世話であった。汚れるので、馬の世話は顕現当初からあまり好きではない。しかしながら、戦場で多くの時間を共にすることを思えば、その体調の管理はとても重要な仕事であった。前の出陣で小雲雀の脚の調子が少々芳しくなかったことを思い出しながらも、鬼丸は枕元の傍に用意しておいた内番服に着替え、眼帯を付ける。そして、昇りかけの陽の光が透ける障子戸を開けると、そのまま朝冷えの縁側を歩き出した。
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