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    かわい

    @akidensaikooo

    アキデンの小説連載とR18漫画をぽいぽいします

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    かわい

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    アンドロメダの青い瞳(5)
    転生記憶なしア←記憶ありデ。公安パロ。

    アンドロメダの青い瞳 5「アキ君!?」

    姫野が叫んだ。縋るようにアキに言い募る。

    「駄目!死ぬ可能性が高いんだよ!!助けられる保証もない!!」
    「俺が行きます。行かせて、ください。」
    「そんな………………」

    アキの青い目は、揺らがぬ強い意志を宿していた。その迫力に押され、姫野は黙り込む。

    「揉めるようなら、僕が行きますよ?早川さん」

    そこへ、吉田が横から乱入してきた。飄々とした、静かな声。アキはすぐさま、それを拒絶した。

    「必要ない」
    「……僕、デンジ君の一番望むもの、大体わかってるんですよね。彼のことを良く知ってる・・・・・・僕が行く方が、良いと思いませんか?」
    「要らない。俺が行く」

    アキは吉田を一瞥もせずに言い捨てて、その長いコンパスであっという間にラインの前に辿り着いた。

    「アキ君……!!」
    「行ってきます」

    アキは微塵の迷いもなく、容易くラインを踏み越えた。
    その姿が、魔法のように一瞬で掻き消える。
    デンジの夢に、入り込んでしまったということなのだろう。

    「……デンジ君。望みがないって言ったのは……撤回するよ」

    苦笑いを滲ませた吉田の声が、ぼそりとそこに落ちた。


    ♦︎♢♦︎


    さすが、夢の中と言える。
    物理法則も何もかも、滅茶苦茶だ。

    アキは、無限に続く同じ部屋を、警戒しながら進んでいた。全く同じ部屋だが、その角度が全部いびつに繋がっている。逆さにひっくり返っている場合もあった。

    ――ここは…アパート、か…?
    俺の、知らない部屋だ……。

    その部屋は、一般的なアパートの一室と思われた。整然と調味料の並ぶカウンターキッチンに、ローテーブルとテレビ、棚が置かれたシンプルな部屋。

    知らない部屋なのに、何故だか懐かしい気配がした。先程からズキズキと、頭が鳴るように痛い。
    アキは長い時間をかけ、無限に続く部屋を探っていった。

    ――どこだ?デンジ……どこにいる?

    デンジが一番に望むものとは、一体何なのだろうか。それほど彼が強く依存するものとは、一体。

    吉田は『大体わかってる』と言っていた。
    全く想像もつかない自分が、とても歯痒い。
    アキは、デンジを知る努力を今まで怠っていたことを強く悔やんだ。
    苛々して、キツく当たって。自分はまるで、初恋に惑わされる中学生……いや、小学生男子のようだった。あの心無い暴力や暴言が、一体どれだけデンジを傷つけただろう。
    それを思うと、アキの心は張り裂けそうに痛んだ。しかし後悔しても、仕方がない。

    ――俺が命を懸けて、必ずデンジを助ける。そして、これまでのことを何度でも詫びよう。

    アキは再度強い誓いを立てて、進み続けた。
    通った部屋の数は、もう500を超えた。常に警戒し続けて進んでいるため、神経がどんどんすり減っていく。
    いつ終わるのか、本当に終わりがあるのかも、わからない。いつ精神が参っても、おかしくない状況だった。
    時間の感覚も、もうわからない。少なくとも、数日ほどは歩いている気がする。夢の中だからか、腹も空かないのだ。弱るのはひたすら、心だけである。

    それでも、アキの強靭な精神力は負荷に耐え続けた。彼は何とか冷静さを保ちながら、ようやく果てに辿り着いたのである。

    無限に続くと思われた部屋に、それまでにはなかったドアが出現した。
    明らかに異質だ。
    そこからわずかに、気配がした。

    ――ここに、いる。

    アキは確信した。警戒して構えながら、ドアを開け放つ。

    そこでアキが、目にした光景は――――ベッドで『アキ』と寄り添って眠る、デンジだった。
    デンジはワイシャツを着たまま、安心しきった顔で――頬を擦り寄せ、『アキ』の胸で眠っていた。

    アキの瞳孔は、それを見た瞬間に開き切った。
    ガラスを直接何本も刺したような激しい痛みが、頭部に襲い掛かる。


    『あれ』は。
    『あれ』は――――『俺』だ。


    奔流のように入り込んでくる、一生分の記憶。

    家族の死。銃の悪魔。復讐。公安。マキマさん。姫野先輩。天使。死んでいった同僚たち。

    かつて、ずっと暗闇の中にいた人生を追体験する。
    しかしその人生最期の間際に、アキは眩しい光を見た。

    パワー。
    …………デンジ。

    それは、間違いなく光だった。
    この愛おしい光を、どうして今まで忘れていたのか、まるで分からない。
    アキは激痛を堪え、何とか立ち上がろうとした。
    心が叫び声を上げ続けている。それは血を吐くような、痛みを伴う叫びだった。

    デンジ。
    ごめんな。
    待ったよな。
    寂しかったな。
    忘れててごめん。

    ごめんな……。

    アキは、ようやく立ち上がった。『自分』に寄り添って眠るデンジに、万感の意を込めて呼びかける。


    「デンジ」


    その一言、それだけで。

    デンジは突然ぱちりと目を見開き、がばりと身体を起こした。
    見開かれた三白眼と目がかち合う。
    アキが大きく両手を広げて見せると、デンジは初めふらふらと、次第に早足で駆け寄ってきて、アキに縋り付いた。

    「…………アキ!!!」

    デンジはアキの背中に手を回し、思い切り叫んだ。
    その途端、デンジが寄り添っていた偽物のアキと、周りの風景は歪み、霞のように消えていった。

    何もない真っ白な空間に、二人が取り残される。
    デンジは震える手で、アキの両頬を掴んだ。

    「アキ、だよな……?」
    「ああ。迎えに来た」
    「ア……アキぃ!!!」
    「ん」
    「馬鹿……!今までどこにいたんだよ!!」
    「すまない。でもずっと、俺の中にいたんだ」
    「あ……、あっ…………」

    デンジは唇と喉を戦慄わななかせながら、俯いた。
    床に、ぱたぱたと雫が落ちる音がした。

    「会いた、かった……!!!」

    泣きながら沈痛な声を上げるデンジを、アキは掻き抱いた。
    頬を麦穂色の髪にすり寄せると、デンジはとうとうしゃくり上げ始めた。

    「会いたかった……っ!俺、俺……寂しかったあ……!!」
    「そうだよな」
    「何も、覚えてないの、悲しかった……!冷たくされて、すげえ、苦しかった……!!」
    「本当に、ごめん」

    デンジはアキの背中に回した腕に力を入れ、ぎゅうっと抱き付いた。

    「だ……抱き締めて、欲しかった……!!!」

    アキはデンジをきつく抱き締め直した。次第にデンジの泣き声が落ち着いていく。アキは少しだけ顔を離してから、撫でるように口付けた。

    「デンジ……よく、頑張ったな」

    デンジは、涙を零しながら幸せそうに笑って――そのまま、気を失ってしまった。

    アキは、デンジを抱き上げた。軽い、痩せた身体。苦しげに眉根を寄せて、デンジをつぶさに観察する。

    どれだけ、気を張っていたのだろう。
    前回の記憶にあるデンジよりも顔色が悪く、痩せている。目の下の隈が濃かった。

    ひとりでどれだけ、寂しかったのだろう。
    ピアスをあけて、慣れないタバコまで吸って。
    俺に、拒絶されて。


    こいつは、どれだけ――――――。


    デンジが気を失うと、次第に夢の世界は掻き消えていった。
    二人は、あっという間に現実の世界に戻ったのだ。
    姫野や同僚たちが、わっと周りに駆け寄ってきた。

    取り憑きを解除されて弱体化した夢の悪魔は、狐によって一撃で討伐した。
    復讐に生きた『前回』――悪魔が異常に強かった時代を思い出したアキの戦闘能力は、跳ね上がっていたのだ。

    それを見た吉田が心底残念そうにしていたのが、アキは非常に気に入らなかった。
    奴の目は明らかに、デンジを追っていた。あんなに仲が良い理由もまだ分からない。
    しかし、デンジが完全にアキだけを求めていたのは明白だったので、もうそれ以上は追及しないことにした。

    無限にも感じられる時間を彷徨っていたが、現実の時間にすれば10分にも満たない出来事であったらしい。アキとデンジはすっかり疲弊していたが、同僚たちはピンピンしていた。

    「後処理はやっとくからさ。デンジ君と一緒に、救護室行った方がいいよ?何か異常があるかもしれないでしょ」

    姫野にそう言われたが、アキは救護室に行くのを拒んだ。
    デンジを抱えたまま、真っ直ぐに自分の部屋に連れ帰ったのである。


    アキはただ、一刻も早く。
    二人で一緒に帰りたかった・・・・・・・・・・・・
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