「……寂雷…おい、寂雷!」
遠くから獄の声が聞こえる。
ふわふわとした浮遊感の中で、その声だけがやけにツンと耳に響く。
ここは確か……
「寂雷!ほら起きろって!」
貼り付いたように重い瞼を開けると私の顔を覗き込む獄の顔がどアップで見えた。
「獄……」
「ったく、論文仕上げたいから付き合えって言ったのお前だろうが。開始早々10分で寝入るなんて問題外だぞ」
そうだ。再来週発表しなくてはいけない論文があったのだ。
始めは自力で取り掛かっていたものの、夜勤続きなこともあり自宅ではどうも睡魔に勝てない。
そこで獄の自宅にお邪魔して見張り役を頼んでいたのだが……
背もたれ付きの椅子の上でうーん、と伸びをする。
「獄の家、居心地が良くてリラックスしてしまうんだよね」
ポカっと頭を殴られる。
「真面目にやれ」
「やっているさ」
しかし、こんなにまどろむとは思っていなかったんだ。嘘じゃない。本当の話。
「獄がキスしてくれたら少しは頑張れるかもしれない」
「あ??」
「怒らないで。獄が癒してくれたら、もうひと踏ん張りできそうな気がするんだ」
「ガラにもなく甘えんじゃねぇ」
「たまにはいいじゃないか。それに」
隣でそっぽを向く獄の裾を指先で掴む。
「少し運動もしたいしね」
その言葉に獄がやれやれといった様で振り向く。
「時間なくなっても知らねぇぞ」
「構わないさ」
次の瞬間、高級住宅街の一室でふかふかのローベッドにもつれ込む2人の男がいたことは、私たち以外、誰も知らない。
(🔞垢に続く…かも??)