【ゼン蛍】腕が立つとはいえ、 目が覚めて一番に感じたのは頭の鈍い痛みだった。よく眠れなかったのか、少しだけ体がだるい気もする。出来るなら二度寝をしたいところだけど、今日は朝から依頼人と待ち合わせをしていた。
少し憂鬱な気持ちを振り払って体を起こす。早めに終わらせてあとはゆっくり体を休めよう。そう思いながらも始めた身支度は、いつもよりゆるりとした動きだった。
「なぁ、本当に大丈夫か?」
知恵の殿堂に向かう途中で、パイモンがこちらをちらちらと見ながら声を掛けてくる。
「何が?」
「何がって……凄く顔が赤いぞ? 熱でもあるんじゃないか?」
自分でもそう思う。起きてすぐは頭痛と少しの倦怠感だけだったのに、ご飯を食べているうちにぐんぐんと体温が上がっていくのを感じていた。幸い熱っぽい(というより絶対に熱がある)だけで動けないことは無さそうなので、歩みを止めずに待ち合わせ場所に向かっている。
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