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    ゆきは

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    ゆきは

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    アルハイゼン不在のゼン蛍

    ニィロウ、ファルザン、レイラ、旅人が女子会をしてお喋りする話です。

    #ゼン蛍

    藤蔓花飾に夜鶯、睡蓮の提案「旅人、アルハイゼンさんと付き合い始めたって本当?」
     冒険者協会の依頼を終え、パイモンに急かされるままに洞天に帰った蛍を出迎えたのは、目をキラキラとさせたニィロウとファルザン、机に突っ伏すレイラだった。
     え、と戸惑う間もなくニィロウとファルザンに両脇を固められ、あれよあれよという間に席に着かされる。助けを求めてパイモンの姿を探すも見つからず、そういえば昼頃にタフチーンを頬張っていたと思い出して、退路がないことを悟る。
    「いつ頃から付き合い始めたんじゃ?」
    「告白は旅人からしたの?」
     二人の中で自分とアルハイゼンが恋人であるのは確定事項なのだろうか。ニィロウの問いかけにまだ答えていないはずなのに。
     矢継ぎ早の質問に苦笑しながら、蛍は口を開いた。
    「少し、前から、告白は……どっちなんだろう」
     きゃあと楽しげな悲鳴が上がり、二人の顔が近づく。
    「煮え切らん答えじゃな。詳しく教えい!」
    「詳しく、って」
     確実に余計なことを言った。話すのは構わない。構わないが猶予が欲しい。
    「……長い話になりそうだし、お茶を——」
    「私も詳しく知りたいな。二人とも恋をしている姿が想像できないし……」
     立ち上がりかけたところ左腕を掴まれそう言われてしまえば、蛍には無邪気な質問に答え続ける選択肢しか残されていなかった。



     レイラのように机に突っ伏してしまおうか。
     蛍がそう考え始めた頃、ようやく質問が途切れた。これ幸いと立ち上がり、モンド産の蒲公英コーヒーと適当な菓子を四人分用意している途中、ふと思う。これはいわゆる女子会であり、相談事をするにはもってこいの機会なのではないか、と。
     アルハイゼンとお付き合いを始めたものの、何をしたらいいのか分からないのが現状だ。約束事ができた、触れ合いが増えた。それで十分なのかどうかの判断が、経験のない蛍には難しい。せっかく信頼できる友人たちと話せるのだから、自分からも情報を集めてみようか。
     意気込んでホールに戻ると、丁度レイラが顔を上げたところだった。おはよう、と声をかけると彼女は申し訳なさそうに眉を下げる。
    「実はずっと起きていて……。盗み聞きみたいになってごめんなさい」
     二人についていける気がしなかったの、と小声で漏らすレイラに気にしないで、と伝える。恋の話をする少女の熱量の高さはついさっき思い知ったばかりだ。
     コーヒーを三人に配って席に着き自分も一口飲んでから、実は相談があって、と蛍は切り出した。
    「デートって、どういうところに行くの?」
     最近頭の片隅に常にあった疑問を投げかけてみる。目の前のファルザンがふふんと胸を張って答えた。
    「当然、知恵の殿堂一択じゃ」
     知恵の殿堂? と蛍は首を傾げる。たしかに男女の二人組がいることはあったが、大抵鬼気迫る様子で本に目を通しているという印象だ。恋人同士がわざわざ行く場所には思えないと蛍が考えていると、ファルザンは続けた。
    「あやつも知論派の学者の一人。古今東西の書物が集まる知恵の殿堂以上にロマンのある場所などなかろう」
     そのロマンと恋人たちのロマンは異なるような。ニィロウとレイラに目を向けると、二人とも何とも言えない顔をしているので、おそらく自分の考えは間違ってはいない。
    「えっと、星を見に行くのはどうかな」
     おそるおそるといった風にレイラが言った。もちろんファルザン先輩の案も良いと思います、と続けた彼女にファルザンは笑顔で頷いた。
    「明論派の学生はいつの時代も星が好きじゃの。定番の場所はあるのか?」
    「チャトラカム洞窟の辺りやデーヴァーンタカ山の頂上は、人気、だと思います」
     ただ、と気まずそうにレイラは続ける。
    「……切羽詰まった学生が、結構な確率でいると思う……」
     提案したのにごめんね、と謝る彼女に、それは仕方がないと返事をする。スメールに滞在してそれなりに経つ蛍は、その光景を容易く想像できてしまった。
     うーん、と悩んでいたニィロウが、あっ、と明るい声を出す。
    「それなら、ガンダ丘にある池はどうかな?」
     璃月の商人さんが教えてくれたんだけどね、と声を潜めるニィロウに自然と視線が集まった。
    「【双頭蓮】っていう珍しい咲き方の蓮があったらしいの。璃月では幸福の前触れとか夫婦円満の象徴として有名みたい」
     旅人は知ってる? と尋ねられ蛍は頭を振った。そしてそのまま思考に沈む。
     双頭、蓮と聞いて脳裏に浮かぶのはマハールッカデヴァータとクラクサナリデビのことだ。このタイミングで発見されたのは果たして偶然だろうか。万が一世界樹に揺らぎが生まれているのだとしたら、ナヒーダに相談するべきかもしれない。となると、実物を確認するのは早い方が良い。可能なら――。
    「――びと、旅人!」
     完全に逸れていた思考を場に戻す。目を動かすと三人が心配そうに蛍を見ていた。
    「大丈夫? 無理してないよね」
    「大丈夫。双頭蓮、今晩にでも見にいけるかな、と思って」
     微笑む蛍に、提案したニィロウは満足そうに顔を綻ばせた。独特な人だから少し心配もあったのだけれど、この様子ならそんな心配は無用だったようだ。
     そうか、気をつけて、良いことが起こるといいねと口々に言う三人に相談に乗ってくれてありがとう、と蛍は話を畳もうとする。すると、笑みを潜めたニィロウが、旅人あのね……と蛍の手を両手で握りながら意を決したように話し始めた。
    「『買い出しをしたり、探索に付き合ってもらったり、論文を書くために互いの家を行き来することもある』って言ってたよね」
    「? うん……?」
     たしかにそのことは二人にじっくり聞き出された内容だ。相違ないと頷くと、ニィロウが真剣な顔をして言う。
    「それも【デート】だと思う」
    「……そうなの?」
    「アルハイゼンさんに聞いてみて」
     分かったと頷くと左手が開放される。ファルザン、レイラを見ると二人とも深く何度も頷いていた。
     恋愛初心者の自分は【デート】の定義さえ理解できていなかったようだ。蛍は、脳内のアルハイゼンと話し合うことリストに【デートとは何か】を書き足した。
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