年下×年上春を迎えて弘が年長に上がり通ってる幼稚園にも新人の保育士が就任した。出稼ぎで居ない父親と外せない残業で仕事が長引く母親に代わり、進級して高3になり進路に追われている実弥は多少のストレスを抱え面倒臭いなあと思いながらも、よちよちと付いて回る甘えん坊の可愛い弟のお迎えに行った。
出入り口に立つと早速ウロウロしていた子供が実弥に気付き大きな声で弘を呼んだ。同じ組の子が口々に、ひろくんのお兄ちゃんだ!と挨拶してくるものだから思わずストレスで凝り固まった頬も緩むというものだ。そうこうしている間に奥の方からてちてちと聞いたことも無い足音が聞こえそちらを向く。
長い黒髪、白い肌、分厚い睫毛と黒目がちな大きい目、小さく色付いた唇でふんわりとした微笑みを浮かべ、二度見三度見したくなるような美人が弘の手を引いて立っていた。
「弘君のご家族の方ですか?」
「兄ちゃん!」
初めまして、と桜と同じ色をした唇がパクパクと動くのをぼーっと見つめる。
実弥に向かって手をふる弘は、どうしてか美人の手を離そうとしない。
あざとい仕草で小首を傾げる美人に釘付けになっている実弥をきょとんとした顔で見上げた弘は、嬉しそうにパッと瞳を輝かせると先生達から教わった様に腹の底から声を出して、園中に響き渡るような大声で叫んだ。
「ひろもね!ぎゆ先生大好き!」
兄ちゃんといっしょ!
その日から弘のお迎えは頼んでもないのに実弥が行くようになり義勇先生が居ない日は園児達がわざわざ「今日はぎゆ先生居ないよー」とお知らせしてくれるようになる。仕方無く実弥に代わり玄弥が行くこともあるんだけど何故か実弥よりぎゆ先生と仲良くなって無駄に敵視される。
義勇さんの方が少しだけ年上のパラレルワールド。義勇さんは子供と遊ぶのが好き。実弥のことは大きい子供と思ってる。
可愛い可愛いって思ってたら数年後、痛い目見る。痛い目見た。全然可愛くなかった。