吉デン.
「腹減った〜」
ぐぅ、と腹から音が鳴る。目の前の机の上には真っ白な課題のプリント。デンジは力が抜けたように机に突っ伏す。ゴン、と頭を打ち付ける痛そうな音と、グシャ、と紙が揉みくちゃにされた音がした。色んな音を出せる男だな、と、どうでもいいことを思いながら、吉田は読んでいた本から顔を上げる。
「その課題早く終わらせないと帰れないよ」
「わかってるってのー」
でも腹減ってんの! 死ぬ! と、デンジは小学生のように喚く。教室には他に生徒がいないのが幸いだった。
「ああ。そういえば俺、お菓子持ってるよ」
「は? それ早く寄越せよ!」
吉田が鞄から取り出した赤い箱を、目を輝かせたデンジが早速取ろうとしてくる。掴まれる寸前で、吉田はその手を躱した。
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