菫青石は砕けない3「……何で」
「ん?何がでござるか?」
「何でここにいるんだよ、お前」
眉間に指を押し当てて皺を伸ばしながら、アガレスは面倒くさそうに問いかけた。ここはアガレスの実家で、当たり前みたいな顔をして玄関前にいるのは、ガープだ。アガレスの問いかけに、きょとんとしている。
見慣れた、見慣れすぎた、どこまでも他人との間合いが分かっていない剣士の、ポンコツな姿である。
「アガレス殿に会いたくなったでござる!」
「……明日学校で会うだろうが」
「そうでござるが、明日は学校に行っても別行動でござるし、今日は家にいると聞いたので」
「俺は、休みの日は家でのんびりしたいの。知ってるだろう」
「そうでござるが……」
「何だよ」
別に何も間違っていない主張をするアガレスに、ガープはしょんぼりと肩を落とした。少しずつ、少しずつガープとの距離を取ろうと努めているアガレスにとって、休みの日に押しかけられるのは困る案件だった。気持ちが揺らぐ。
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