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    kokoaoko2

    @kokoaoko2

    好きなものは増えたりする。尾勇の都合のいい幻覚文章を書きます。R18は鍵付き。

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    ■ここにあるもの
    ぴくしぶに掲載した現代転生話のその後でぽいぴくクリスマス尾勇の後日。話題だけの尾形。DK勇作さん。年齢差。友人(同級生)としての杉元と白石。


    現実的なことは一旦忘れてお時間と心に余裕のある時に。
    上記全てご了承の上でご覧下さい。
    2022年最後の尾勇の日ということで、年末の尾勇のお話です。

    案ずるより産むが易し「忘年会なんだしさぁ~今年の隠し事は今年の内に話しちゃおうぜぇ~」
    「白石は何かあんのかよぉ?」
    「俺ぇ?俺はねえ~ないよぉ~お前らに隠し事なんてしねぇよ~いつだってオープンだぜぇ~」
    「白石くん嘘くさ~い。ついでにお口もくさぁ~い」
    「シンプルな悪口やめて」
    テンポのいい二人のやりとりを見守りながら、私は思わずフフ、と笑ってしまう。
    街が慌ただしさを増す年の瀬。
    私は杉元と、もう一人の友人と三人で忘年会を開いていた。
    忘年会といっても、私たちはまだ飲酒が出来ない年齢である。
    なので、ノンアルコールの飲み物と食事を楽しんでいた。
    白石、と呼ばれているのは、白石由竹。
    杉元を介して知り合った、最近出来た友人である。
    コミュニケーション能力が高い彼とは、直ぐに仲良くなれた。
    それに、彼も私や杉元同様に前の生の記憶があり、その時代に杉元と関わりが深かったと聞いている。
    杉元からその話を聞いた時は、こんな奇跡的なことが頻発するものなのかとひどく驚いたものだ。
    「杉元、何かあるぅ?」
    「俺ぇ?うーん…」
    「杉元こそ、隠し事なんかしなさそうだよねぇ」
    「えーそう?そうかなぁ〜?」
    「うん、自分のための嘘じゃなくて相手を想っての嘘は吐きそうだけど」
    「えー何それ~杉元めっちゃカッコいいじゃん~俺ん時と全然違うじゃん~」
    「よせやぁい」
    照れくさそうに、被っていたキャップで顔を隠す杉元。
    その様子を微笑ましく眺めていると、白石が私の顔を覗き込んできた。
    「ねえねえ勇作ちゃんは?勇作ちゃんは何かない?」
    「え、私?」
    「勇作ちゃんみたいに真面目で誠実そうなイケメンが隠し事とかさあ~ミステリアスじゃん?」
    「いや白石お前単に勇作の粗さがししたいだけだろ」
    「ぅぐ…ッ!だって…この子ったら完璧なんだもんっ!何か一個ぐらい他人には言えない秘密とかさあ…あれよ!あってくれよ!!」
    「し、白石、落ち着いて…」
    ノンアルコールのはずなのに絡み酒のようなノリになっている白石を宥めながら、私は自分の秘め事に想いを馳せる。
    私が二人に隠していることがあるとすれば、ひとつだけだ。
    (話をするなら、今かも知れない)
    私は手元のグラスをぎゅっと両手で握り締め、心の中で覚悟を決めた。
    「ある…よ」
    「へ?」
    「あるよ、隠し事。ある、というか…ふたりに初めて話すことなんだけど……」
    「え!マジで!?」
    「勇作、それ、マジなやつ!?」
    「うん」
    「聞きたい聞きたい聞きたい!!」
    「白石黙れ」
    「クゥ~ン…」
    先ほどまでノリで話をしていた杉元の顔が、一気に真面目な表情に変わる。
    「……勇作、それは俺たちが聞いていい話なのか?」
    「うん。ふたりには…いずれ聞いて欲しいなって思ってたから」
    私が落ち着いた声でそう返答すると、杉元がうんと頷いた。
    「分かった。で…その話ってのは…」
    「実はね、私……お付き合いしている方がいるんだ」
    一瞬の、間。
    直後に白石の大声が店内に響き渡る。
    「はァァァァァァァァッ!?」
    客が多く賑やかな店内ではあるが、流石に声が大きいと思ったのか白石が慌てて口元を手で抑えた。
    テーブル上に身を乗り出し、私との距離を詰め声を潜める。
    「恋人!?恋人が居んの!?マジで!?」
    「うん」
    「恋の…お話……?」
    「相手美人?どんな子!?」
    「うん。整った顔立ちをされている…と、思う」
    「ヤダ―ッ!もうヤダ聞きたくないッ!イケメンの恋人はやっぱり美人なのかよクソぉぉぉぉぉ!!」
    「白石のアホはほっとけ。勇作、お話の続き、聞かせて…?」
    「えっと……それでその……真剣なお付き合いなんだ」
    「うんうん」
    「一時の気の迷いとかでなくて…その…」
    「……ん?」
    「ちゃんと考えてお付き合いに至ったっていうか…」
    私の必死な様子に何か感じたのか、杉元たちの顔色がサッと変わった。
    「………え、まさか、勇作それは……」
    「うん」
    「「不倫………!!!」」
    「違うよ!!」
    「違うの!?よかったぁ…」
    あからさまにホッとした表情をする杉元。
    「だって…!言いにくそうじゃん…しかも隠し事って……」
    「ちゃんと独身の方だよ!!ただ……」
    「ただ?」
    「兄弟……なんだ」
    再び一瞬の、間。
    「んんんんんんん?」
    「………勇作、それって、」
    「兄様だよ。私がお付き合いしてるのは、異母兄にあたる方なんだ」
    私の言葉に、二人が困惑したような表情を見せる。
    恐らく、脳内で情報を整理しているのだろう。
    私は黙ったまま、二人が発言するのを待った。
    「アニサマ…って、一緒に住んでるっていう…」
    先に整理が終わったらしい白石が、呟くように言う。
    「そうだよ」
    微笑みながら私がそう答えると、杉元が静かに口を開いた。
    「………そっか。そうだったんだな」
    言いながら、納得するように小さく頷く。
    「幸せ、なんだよな?」
    「うん、すごく。幸せだよ」
    「なら、いいよ。勇作が幸せなら、それがいい」
    笑顔でそう言ってくれる杉元。
    心の底からそう思ってくれているのが、声音からも分かる。
    「杉元……」
    「んー……ま、そだね。勇作ちゃんが幸せなら、それでいいよね」
    「白石……」
    母が違うとはいえ、兄弟で恋仲になるということ。
    私はそのこと自体を咎められたり、反対されるのではないかと心配していた。
    それなのに、そんなことは全く口に出さずに笑顔で祝福してくれる。
    二人の優しさに、涙が出そうになった。
    「ありがとう」
    「いや、俺の方こそ。ありがとな、話してくれて」
    「杉元……」
    「んで?勇作ちゃんを射止めた兄貴ってのはどんな美形なの?」
    「白石おまえ……」
    「いや、ヤロウの顔なんざミリも興味ないけど、勇作ちゃんの恋人ってんなら一回くらい見ときたいじゃん。画像とかないの?」
    「勇作、無理して見せなくていいぞ」
    「心配いらないよ、杉元。兄様に興味を持って貰えるのは嬉しいんだ。それに私も自慢したいから」
    「え~何ぃ~?惚気られちゃうのぉ?」
    いそいそと鞄から携帯を取り出し、私は最近密かに待ち受けにしていた兄様の画像を二人に見せる。
    「この方が私のお付き合いしてる方だよ」
    「………………っ」
    「………………?」
    明らかにギョッとした表情をした白石と、眉を顰めた杉元。
    「え…あれ…?」
    先ほどまでとは打って変わった二人の表情に、私は背筋がひやりとしてしまった。
    「オガタヒャクノスケ!!?」
    「オガタちゃん…だよねえ…?」
    「え!?」
    「あの野郎も生まれていやがったのか」
    「ふたりとも……兄様の前の生……知ってるの……?」
    「知ってるも何も……」
    「白石」
    何かを言おうとした白石を、杉元が制止する。
    よく考えてみれば、杉元は前の生で兵役に就いていたのだから兄様と接点があってもおかしくはない。
    けど、軍とは関係がないはずの白石まで知っているのは―――――
    (何より、)
    二人の反応が、怖い。
    白石は微妙な表情を浮かべて困惑している様子だ。
    そして、杉元。
    いつも優しい彼が、見たこともない恐ろしい形相をしている。
    (ちょっと待って……)
    一体、兄様と二人の間には何があったのだろう。
    少なくとも、二人の様子から絶対にいい印象は持っていないことは察しがついた。
    「おまえがいつも話してた兄貴って、オガタのことだったんだな」
    おもむろに口を開いた杉元が、私の顔を正面から見据える。
    真っすぐ私に向けられた瞳。
    その瞳を見つめながら、私は深く頷いた。
    「うん…」
    「………俺から見たアイツの印象は、勇作とは違うけど……でも、勇作から聞く兄貴はいつもおまえを大事にしてた」
    「……うん」
    出会って、仲良くなってからずっと、私が語る兄様の話に耳を傾けてくれた杉元。
    私から彼に伝わった兄様の印象が、少なくとも今現在の印象では悪くないようで良かったと心底そう思った。
    「今生ではエビフライを選ぶって、おまえ言ったもんな」
    「ん?」
    「うん」
    「うん???」
    「勇作にとって、オガタがエビフライだってことだよな?」
    「うん。兄様は間違いなく、私にとってのエビフライだよ」
    「なんて???」
    大真面目にやり取りをしていた私と杉元の間に、困惑顔の白石が割って入る。
    「怖い怖い怖い。ねえ、二人とも俺を独りにしないでよ…エビフライって何ぃ…?」
    「白石、ごめんね。あとでちゃんと説明するから」
    「本当〜?頼むぜぇ…?」
    一旦白石に待って貰い、私は改めて杉元に向き直った。
    「私ね、ちゃんと選んだんだ。悩んで、諦めようと思ったこともある。でも、やっぱり兄様がいいって…兄様じゃなきゃ嫌だって、そう思ったんだよ」
    私の言葉を聞いた杉元の目元が少し緩んで、いつもの杉元の顔に戻っていく。
    「……だったら、いい。アイツがちゃんと勇作を大切にしてて、おまえが幸せなら。俺はそれでいい」
    「……顔引きつってるけど?」
    「うるせえな!余計なこと言うんじゃねぇよ白石!」
    「怖ぁ~い」
    場の空気を和ませようとしたのだろう。
    白石はわざと、杉元をからかっているように見えた。
    杉元もそれを分かっていて、大袈裟に深呼吸をしたりしている。
    「フゥ…ま、あの野郎が勇作を泣かせるようなことがあれば、承知しねえけどな」
    「…勇作ちゃん、今後こいつに恋愛相談はしない方がいいかもよ」
    「あはは…」
    白石は冗談ぽく言っていたけど、気をつけたいとは思った。
    杉元が『尾形百之助』に対して抱く想いは、強い怒りだと感じたから。
    (私は、)
    幸せ者だな、と改めて思う。
    複雑な想いがあるのであろう杉元や白石。
    そんな彼らが私の気持ちを受け入れてくれただけで、もう、充分だと思える。
    (ふたりにちゃんと話せて、よかった)
    テンポのいい二人の会話を聞きながら、私はまたほっこりした気持ちで楽しそうな様子を眺めていた。
    (新しい年も、幸多き一年になりますように)
    願わくば、兄様にとってもそうであって欲しい。
    (来年もたくさん一緒に過ごしましょうね、兄様)




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