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    Fuca2Fuca2

    @Fuca2Fuca2

    筆が速いのが取り柄です、Twitterで書いたものをここに入れます。
    責任ある大人しか見ちゃダメなものもぶち込みます。(ちゃんとR表示します)
    書いてる人は、品性下劣かつ下品で助兵衛です。
    だから、そんな作品しかありません。
    ※シモの話は♡喘ぎデフォです。
    最近拠点を支部に移したので、ここは跡地のようなものです。

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    Fuca2Fuca2

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    ドゥとYou

    ピグマリオンとガラテアの神話をモチーフにしました。

    「ピグマリオンの恋びと」ブチ、と嫌な音がして、指先に鈍い痛みが走る。
    「うわ、最悪…。」
    お気に入りのジャンパーのファスナーを引き上げようとしたら、スライダーで親指を食ってしまった。
    これからドゥと買い物に行くところだと言うのに、全く持ってツイてない。
    慎重に噛み合わせをほどき、指先にくっきり刻まれたファスナー型の傷口を睨み付ける。
    次第に血が滲みはじめた親指を咥え、今度はジャンパーの方を確認する。
    ファスナーの下止めが完全に壊れ、スライダーがぐちゃぐちゃに噛んでいる。
    「…あー、……そろそろ捨て時か。」
    何とか前併せを外すことには成功した。
    しかしスライダーが完全に壊れてしまったのでは、首元まで包んでくれる防寒具としての効果は望めない。
    ハイスクール時代から愛用していたジャンパーで、寄宿舎生活が決まった時に母が贈ってくれた、中々質が良いものだった。
    フードも付いていて、防水性があり、暖かく、軽い。
    長年愛用していたが、そろそろ寿命だったのか…。
    「他にアウターなんて持ってないし……。」
    仕方なくジャンパーを脱ぎながら、とりあえずダイニングに向かう。
    「You準備は出来た?」
    いつもの格好をしたドゥが、そわそわとテレビを見ながらYouの到着を待っていた。
    「あー、ごめん。…もう少し待って。」
    再び血が滲み始めた親指を口に含み、ジャンパーをソファの背もたれにかける。
    突然、ドゥが慌てて立ち上がる。
    「ど、どうしたの…怪我してるじゃないか」
    「ファスナーで挟んだだけ、大丈夫だよ。」
    Youの言葉を全く聞いていない彼は、彼女の口から指を無理矢理引っこ抜き、目の前に持って来てじっくりと観察する。
    唾液でてらつく親指に、小さな赤紫色の歯型と薄く滲む血液。
    不意に、ドゥの髪の毛がざわざわと揺らめきだす。
    「……、誰にやられたの?」
    ぞわぞわする低い声。
    ドゥの指が、ぎゅっと音を立ててYouの手に食い込んだ。
    何かよくない勘違いを始めたドゥの腕を、反対の手でゆさゆさと揺すぶる。
    「ファスナーが壊れたの。指を挟んだだけ、誰にもやられてない。…ね?」
    ふと、ドゥの毒気が抜ける。
    「そ、そうなの?」
    「うん。」
    ドゥは安心してため息を漏らすと、ハッと我に返り、問題の親指を凝視する。
    「き、傷が残るといけないから…消毒のためだから」
    そう言い訳して、Youの親指をぱくりと咥えた。
    ……消毒のため、と言う割にはじゅるじゅると音を立て指をしゃぶり、ぬるぬると舌が絡み付くのを感じる。
    鼻息荒く頬を紅潮させはじめた彼に、Youは肩を竦める。
    「…消毒より、絆創膏が欲しいんだけど。」
    「…。」
    「…ドゥ?」
    Youの顔を残念そうに見上げ、ドゥは未練がましく口を離した。
    「…絆創膏だね、持って来るよ。」
    「ありがとう。バスルームのキャビネットの中、救急箱ごと持って来て。」
    ドゥの後ろ姿と、唾液でべたべたになった手の平を見比べ、Youはため息をついた。



    「あ、そうだ。」
    Youは絆創膏を貼った親指を曲げ伸ばししながら、救急箱を抱えているドゥに声をかける。
    「ねぇ、ドゥ。…悪いんだけど、あなたの上着、貸してくれない?」
    「構わないけど、…どうして?」
    「そのジャンパー、ファスナーが壊れてちゃって着れないのよ。…捨てようと思うけど、とりあえず今日羽織る何かが欲しいの。」
    ドゥはいつものパーカーを脱ぎながら、自分が背もたれにしていたジャンパーを見る。
    「……要らないの?」
    「うん、…前閉められないし。」
    ドゥの温もりが残るパーカーに袖を通しながら、ファスナーを首元まで上げて一息つく。
    「あ、……でも、そのままだとドゥが寒いか。」
    半袖のTシャツと傷だらけの両腕を一瞥するが、ドゥは首を横に振る。
    「気にしないで、ダーリン僕は寒くないし、…君が気になるって言うなら。」

    カシャッ、とシャッターが切られた様な音が響く。

    Youが瞬きしている間にドゥの半袖Tシャツが、黒とグレーのボーダーの長袖シャツに変わる。
    彼が使う"魔法"について詳しくは知らないが、こんな風に、ドゥは持ち物や衣装を変えて見せるのだ。
    「ほらっ、長袖だよ」
    「Nice、…じゃあ遠慮なく借りるね。」
    「喜んで♡……それはそうと、」
    ドゥはテーブルに救急箱を置くと、ジャンパーを広げて胸の前に翳す。
    「……、これ、貰ってもいい?」
    「いいけど…。ファスナー壊れてるし、ドゥには小さいよ。」
    Youの静止を聞かず、ドゥはいそいそとジャンパーに袖を通す。
    …袖は7分丈だし、そもそも前身頃がぱつぱつでドゥの脇の辺りに併せが来ている。
    「……ほらね。」
    「大丈夫…ちょっと待ってね。」
    ドゥは立ち上がって、くるりと後ろを向く。
    パキパキ…、ぽきぽき…、とあまり心地好くない音が、背中を向けたドゥから聞こえてきた。
    「…ドゥ?」
    「よし、出来た」

    カシャンと、再びシャッターの音が響く。

    「どう?」
    くるりと振り返ったドゥは、ジャストサイズでジャンパーを着こなしていた。
    肩周りもスッキリしているし、袖はドゥの手首までをすっぽり覆っている。
    前身頃にも問題は無く、もしファスナーが壊れていなければ、彼はきちんと首までスライダーを上げられただろう。
    「……ピッタリね。」
    「えへへ ♡…じゃあ、買い物行こ?」
    ジャンパーに合わせたせいか、いつもよりもほっそりとしたドゥの腕が、Youの腰に回される。
    ついでに、抱き寄せられた胸板のボリュームも、なんだか物足りない。
    「……。」
    「えへへ、…この服、Youの匂いがするから好きなんだぁ……♡♡」
    ジャンパーの袖にすんすんと鼻を押し付けているドゥを、Youは複雑そうに見上げる。
    「…ドゥ、あのね。」
    「ん〜?」
    「…なんて言うか、その。……あんまり、何でもかんでも私に合わせなくて良いんだよ?」
    「?」
    「その服だって、ダメになったから捨てるだけだし。…欲しいなら、否定はしないけど。……前に、言ったでしょ?」
    Youはドゥの顔を心配そうに見上げ、その頬に手を伸ばす。
    「私、あなたのそのままが好きなの。…だから、私の為にって、あなたが自分を変える必要なんてないの。……分かる?」
    ぽっ、と頬を染めるドゥの下顎をなぞり、彼の長い毛先を一筋掬って引き寄せる。
    ちゅ、と口付けを落とすと、毛先がぴくりと跳ねてYouの唇をくすぐった。
    「You…♡」
    「どんな姿だって、あなたが好きよ。」
    「……ありがとう、You♡」
    ドゥはYouを正面から抱き締めると、その頬に優しく、ちゅ、ちゅ、とキスを繰り返した。
    「僕も、君が大好き♡……、僕はYouが大好き♡」
    だからね、と前置きして彼は着ていたジャンパーをそっと脱ぐ。
    「僕は、君のためなら何だって出来るんだ。…何だって出来るし、何だってしたいし、何だってなるよ。」
    Youの肩にふんわりとジャンパーを掛けると、彼女が身に付けていたパーカーが、ジリジリとノイズを立てながら溶けていく。
    「…僕の持つ、全ての力を使ってね。」
    溶けたパーカーだったものは、Youのジャンパーに吸収されていく。
    「忘れないで、You。…僕は、…"僕のこの身体"は、君に愛されるために出来てる。」

    カシャン、と優しいシャッターが切られる。

    ジャンパーのフロントが補強され、ファスナー部分を覆うようにボタン付きの併せに変わっている。
    「うん、やっぱりこの服はYouに良く似合うね♡」
    Youの腕を取り、袖に通してやりながら、しっかり首元までボタンを留める。
    「ほら、行こう?」
    そっと抱き寄せられたドゥの身体は、いつも通りの厚みだった。
    「……ドゥ、」
    「なぁに?」
    「…ありがとう、直してくれて。」
    「どういたしまして♡」
    ぎゅ、と手を繋ぎ合うと、2人は玄関に向かった。
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