1輪の赤い薔薇You「これは?」
Youが仕事から帰ると、ドゥがいつもの笑みを浮かべて、ダイニングテーブルに掛けていた。
彼女が「これ」と示したのは、手頃なマグカップに活けられた1輪のバラだった。
John Doe「うん、今日散歩してたら、"あなたの大切な人へ贈りましょう"って広告してたからYouは僕の大切な恋人だからね」
歯の浮くようなセリフに似合わず、彼は満面の笑みを貼り付けたまま足をプラプラとさせて頬杖をついている。
Youは、ふっと表情を緩めると、コートを脱いでハンガーラックにかけながら、ドゥのくせ毛に手を伸ばして、軽くかき混ぜる。
You「ありがとう、ドゥ。……花は嫌いじゃないわよ、嬉しい。」
John Doe「本当に?」
嬉しそうに頬を染めると、ドゥは目を細めた。
You「ええ。……でも世話は苦手だから、あなたが頑張って長持ちさせてあげてね。」
John Doe「勿論だよ、ハニー♡♡」
うっとりするドゥの髪が、Youの腕にも絡まり出した辺りで、彼女はそっと腕を引く。
You「……そう言えば、バラの花言葉って、本数によって変わるって知ってた?」
少し残念そうに、それでも素直に身を引いたドゥは居住まいを正すと、Youの言葉に耳を傾ける。
John Doe「そうなんだ、Youは物知りだねぇ。」
楽しそうに、嬉しそうに目をうっそりと細めたドゥは、少しだけ得意げなYouの薄い唇を見つめる。
You「まぁ、流行とかはあなたの方が詳しいけどね、テレビよく見てるし…。そうそう、1本のバラの花言葉は。」