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    Fuca2Fuca2

    @Fuca2Fuca2

    筆が速いのが取り柄です、Twitterで書いたものをここに入れます。
    責任ある大人しか見ちゃダメなものもぶち込みます。(ちゃんとR表示します)
    書いてる人は、品性下劣かつ下品で助兵衛です。
    だから、そんな作品しかありません。
    ※シモの話は♡喘ぎデフォです。
    最近拠点を支部に移したので、ここは跡地のようなものです。

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    Fuca2Fuca2

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    ドゥとYou
    少しホラーな表現あり。
    2人して海辺を歩く話、Youを守ってくれるドゥ。

    砂浜のこもりうた「You〜っ、待ってよぉ〜」
    悲鳴にも似たドゥの声に、Youはゆっくりと振り返る。
    後ろ手に組んだ指先にサンダルのストラップを引っ掛けた彼女は、履き慣れたデニムを脛までたくし上げた格好で水平線を背に立っている。

    ざざぁ…、波の音が響く。

    波打ち際を歩く彼女の足首を、寄せては返す波がくすぐる。
    そんな彼女を、ドゥは離れた砂浜から見守っている。
    ドゥの顔は不安そのもので、珍しく唇を固く引き結んで、その両手を固く胸の前で組んでいる。
    「大丈夫よ、ドゥ。…怖くないから。」
    「で、でも…。」
    足元を膝まであるレインブーツで守っているというのに、水を怖がる彼は、Youが幾ら手招いてもこちらに来ようとはしない。
    波の音を背景に、Youは小さくため息を零すと、サンダル片手に砂浜へと戻る。
    さく、さく、さく、とYouが砂浜に足跡を残す。
    遂にドゥに辿り着いたYouは、しっかりと指を絡めてその手を引く。
    「ほら、…おいで。」
    「…。」
    自分のレインブーツと、繋がれた指先、潮風に煽られるYouの髪の毛を順繰りに確認したドゥは、最後に彼女の目を覗き込む。

    ざざぁ…、波の音が響く。

    「…手を、……離さないでくれる?」
    「勿論、…ほら。」
    もう一度、繋いだ手に力を込める。
    ドゥは小さく頷くと、1歩、また1歩とYouに釣られて歩き出した。
    優しく彼の手を引きながら、Youは水平線に向かってゆっくりと歩き出す。
    「What shall we do with a drunken sailor…」
    再び砂浜に足跡を残しながら、彼女はドゥの知らない歌を口ずさむ。
    スローテンポで紡がれる旋律は、何故だかとてもこの場所に似合っている気がした。
    ざあざぁと、その細い歌声を飲み込もうとする波の音に顔を顰め、思わず水平線を睨んだ。
    「……。…いつか、あなたと海を見たかったの。」
    ふと、思い出した様にYouが零す。
    彼女は立ち止まると、振り返ってドゥの目を見つめる。
    「……海ね、好きなんだけど。…地元の海は危険だからって、ママもパパも近寄らせてくれなかった。」
    潮風に弄ばれる髪を耳にかけて、Youはまた海に向かって歩き出す。
    「だから、大人になって、地元を離れたら。……誰かと一緒に海に行きたかった。」
    「…。」
    「砂浜に腰掛けて、波打ち際を歩いて、舟唄を歌うの。」

    ざああっ、波の音が大きく響く。

    「ほら、到着。…ドゥもおいで。」
    Youは笑いながら手を離すと、波打ち際まで駆け寄った。
    パシャ、パシャ、とステップに合わせて飛沫が上がる。
    「うっ…、You…危ないよ…、濡れるよ。」
    おっかなびっくり、自分の足がまだ乾いた地面を踏んでいる事を確かめながら歩いていたドゥは、視線を上げてYouの背中を見る。
    「あはっ…、レインブーツだから濡れないよ。」
    口を大きく開いて笑う彼女は、随分と浮かれているらしい。

    ざあざあ、波の音がうるさい。

    「What shall we do with a drunken sailor…、」
    (酔いどれ水夫をどうしてやろうか?)
    Youはさっきの歌を歌い出す。
    くるりと水平線に顔を向けると、1歩足を進める。
    「What shall we do with a drunken sailor…、」
    ばしゃ、ばしゃ、と彼女のデニムを海水が濡らす。
    「…What shall we do with a drunken sailor.」

    、波の音が。

    「You?」
    波の音に、ドゥの声が飲み込まれる。
    「………Early in the morning.」
    Youはドゥに背を向けたまま、相変わらず歌を歌っているらしい。
    彼女の声も、波の音に包まれてよく聞こえない。
    ドゥは一度深呼吸すると、固く目を閉じる。

    ガチャン、重い金属がぶつかった様な音が辺りに響く。

    Youの目の前に誰かが佇んでいる。
    随分と大柄な人物で、服はぐっしょりと濡れている。
    所々破れた服の隙間から覗く皮膚には、奇妙なぶつぶつが見え隠れして、"それ"は灰色のぶよぶよとした腕を、彼女の肩に伸ばす。
    「「Trapped in waves and taken away.」」
    (波に閉じ込めて、攫ってしまおう。)
    Youの声と、"それ"の声が重なる。
    ざぶん、とYouの足が大きく1歩踏み込む。
    「やめろ。」
    グジュリ、と嫌な音を立ててドゥの指が灰色の腕に食い込む。
    反対の手をYouの腰に回し、素早く抱き寄せる。
    「Youに触るな。」
    自分の足が海水の中に浸っていることも構わず、ドゥは"それ"を睨め上げた。
    めきり、と灰色の腕が音を立てる。

    ざぁあっ、波が低く唸る。

    「Youは、僕のものだ。」
    ざわめく黒髪が、Youの身体を包み込む。
    威嚇する様に、髪が大きくうねる。
    伸びた毛先が、猛禽類の爪や肉食獣の牙を思わせる鋭さで目の前の相手に向けられる。
    「お前なんかにやらない。」
    地を這う獣の唸り声を携えて、ドゥは"それ"に対峙する。

    ざざぁ…、波の音が響く。

    「…ん、……ドゥ?」
    波打ち際で、自分を後ろから抱きすくめたまま動かないドゥの腕を、Youが軽くはたく。
    彼は何も言わず、Youの肩口に顔を埋めたまま、彼女を抱き締める力を強くした。
    様子のおかしい彼に、仕方なく彼女は水面に視線を落とした。
    Youの2本の足を閉じ込めるように、その両脇をぴたりとレインブーツが固めている。
    潮が満ちて来たせいか、いつの間にか海水はYouの脛を濡らしていた。
    レインブーツに守られているとはいえ、跳ね返る海水のせいでドゥのボトムスも少し湿っている。
    「…ドゥ、1回砂浜まで上がろ。」
    腹に回されたドゥの両腕を優しくさすってやる。
    ドゥは何も言わず、腕の力を少しだけ緩めた代わりに、Youの腕を取った。
    ざぶざぶと波を踏み分けながら、2人して砂浜に上がる。
    「…ねぇ、You。」
    Youの腕を引いたまま、彼は背中越しに語り掛ける。
    「…海、楽しかった?」
    「え、…あぁ、うん。」
    「また、来たい?」
    何故かその声が、酷く寂しげに聞こえて、Youは彼を後ろから抱き締めた。
    ぼすり、と彼のパーカーに顔を押し付け、その腹に腕を回す。
    「あなたと一緒ならね。」
    「…。」
    ドゥは何も言わず、前で組まれたYouの腕を自分の手で包んだ。
    「ねぇ、You。」
    「ん?」
    「あの歌…、僕にも教えて。」
    「…Drunken Sailor?」
    「うん。」
    「いいけど、…どうして。」
    ドゥはYouの腕の中で身を捻ると、いつもの笑顔を彼女に向ける。
    「今度は、僕が一緒に歌ってあげるから。」
    そう言って、彼女の頬を両手で包み唇を重ねた。
    「だから、僕以外の誰かとなんて、行かないでね。」
    ぎゅっ、とYouの身体を抱き締めると、その耳に囁く。
    ……どうやら、いつもの嫉妬だったらしい。
    Youは安堵のため息を零し、彼の背中に腕を回した。
    「分かった、…ドゥ以外とは行かない。」
    「ひとりもだめ。」
    「はいはい。」
    「絶対、僕と、2人で。…いい?」
    「分かってるわ、ハニー。」
    苦笑するYouを抱き締めながら、ドゥは彼女の背後の水平線を見詰める。
    「愛してるよ、ダーリン。」
    まるで誰かに見せ付けるように、彼は自慢げに微笑むとYouのこめかみに唇を寄せた。
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