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    Fuca2Fuca2

    @Fuca2Fuca2

    筆が速いのが取り柄です、Twitterで書いたものをここに入れます。
    責任ある大人しか見ちゃダメなものもぶち込みます。(ちゃんとR表示します)
    書いてる人は、品性下劣かつ下品で助兵衛です。
    だから、そんな作品しかありません。
    ※シモの話は♡喘ぎデフォです。
    最近拠点を支部に移したので、ここは跡地のようなものです。

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    Fuca2Fuca2

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    ドゥとYou、少しだけ前日譚の彼が出てきます。
    バラの花シリーズの番外編🌹

    「あなたはあくまで私のもの」「やあ、親愛なるバイヤー。またお会いしましたね。」
    真っ赤なスーツに、スラリと伸びた背中。
    グレーの髪をきっちりセットした男が、Youに声をかける。
    「…あー、…どうも。」
    彼の顔を認識して、Youの顔が無意識に引き攣る。
    若干の気まずさと後ろめたさから視線を逸らすように、Youはスマホに視線を落とした。
    明日は休みなのに、ついてない。
    ちょっと奮発して寄り道したスターバックスで、ミルクがスチームされる間だけとはいえ、面倒な人物に見つかってしまった、とYouは内心悪態をついた。
    Uncanny Valley引越し初日、ガスどころか家の鍵を貰えなかった散々な思い出が、目の前の営業マンの張り付いた笑顔と共に蘇る。
    「……えっと、なにか用ですか?」
    ちらりと横目でレジを確認する。
    更についてないことに、Youのオーダーまでは時間がかかりそうだ。
    「いえ、なに。…ちょっとした営業で外に出たところで偶然お見掛けしたものですから。」
    「…そう。……随分と…、目がいいのね。」
    気の利いたセリフも出てこず、再びスマホに目を落とす。
    興味のないニュースフィードに目を滑らせながら、どうか私のホットチョコレートが早く完成しますように、と念じる。
    「優秀な営業というものは、決してお客様の顔を忘れないものですよ。」
    コツリ、と足音がYouに1歩近付く。
    「それが例え…、家の目の前で、内見をキャンセルしたお客様だったとしても…。」
    ぞわっ、とYouの背筋が粟立つ。
    ぞろりとした声は、覆い被さるような圧迫感を与え、Youは乾いた喉をごくりと鳴らす。
    「…あ、」
    声が掠れて、上手く話せない。
    スマホを握り締める指先が、白く強ばる。
    「……あぁ、親愛なるバイヤー。」
    コツリ、と革靴の先端がYouの視界に入る。
    「…あなたに、是非これを…。」
    男はゆったりと上品な仕草で、懐に手を入れた。
    「You、Youー」
    溌剌としたレジ係の声で、弾かれたように顔を上げる。
    「ぁ…、はいはいっ、私よ」
    慌ててポケットにスマホを捩じ込む。
    わざわざ手を挙げてカウンターに進み、わざとらしく「ありがとう」と大きく声に出してドリンクを受け取る。
    暖かいホットチョコレートは、緊張で冷えきったYouの指先をじわりと温め、思わずため息をこぼす。
    ほんの少し落ち着いたYouは、視線を赤いスーツの男に向けた。
    心做しか不機嫌そうな彼は、それでも顔に笑顔をべったりと貼り付けたまま、こちらを見ている。
    「ええと…、家の事は残念だった、…ごめんなさいね。…えと、実は今、…恋人と同棲していて…。あのアパート、気に入っているの…。だからやっぱり、引越しはしない。」
    たどたどしくもキッパリと言い切ると、手にしたホットチョコレートを1口含む。
    じゅわ、と染み込む甘さと温度に、Youは深く深呼吸する。
    「…じゃあ、これで。」
    脇を抜けようとするYouの目の前に、彼は音もなく立ち塞がった。
    ごく、と思わず生唾を飲み込む。
    「大変残念ですが、バイヤー。……しかし、私は諦めざるを得ませんね。」
    悲しそうに首を振る彼に、Youは警戒しながら視線を向ける。
    「…それでは、これだけでも。我が社のキャンペーンフラワーです。」
    懐からするりと取り出されたのは、人差し指程のサイズの小さな黒いバラだった。
    本物ではなく、紙とリボンで出来た作り物。
    「次回こちらをお持ちくださったお客様に、次回使えるお得なクーポンをお渡ししているところです…この花だけでも、お受け取りいただけませんか?なにせ、これを配るのにもノルマがございまして…。」
    「………。…それだけなら。」
    恐る恐る、バラを受け取る。
    彼は相変わらずの笑顔のまま、腰を折って感謝を述べると、くるりとこちらにに背を向けて歩き出した。
    コツコツ、と革靴の音が響く。
    …振り返りもしない。
    彼女も思い出した様に踵を返す。
    もう一度ホットチョコレートを口に、バス停まで急ぎ足で。

    「た…、ただいま。」
    「You〜おかえり」
    いつもよりもぐったりしているYouに、ドゥはいつも通り勢い良く飛び付く。
    ぎゅう、と愛情いっぱいのハグ。
    ぐりぐりと顔を押し付けながらのキス。
    「……つ、疲れた…。」
    いつも通りの彼に酷く安心して緊張が緩み、Youはへなへなとドゥに凭れかかる。
    そんな彼女の身体を受け止めながら、ドゥは心配そうに彼女の顔を覗き込んだ。
    「ダーリン大丈夫?…疲れたの?もう寝る?」
    「……そうする。ご飯は…、起きたらでいいや、明日休みだし…。」
    ドゥから身を離すと、Youはゆるゆると通勤カバンを降ろした。
    コート、スニーカー、セーター、ジーパン、シャツ、靴下…。
    ばらばらと身につけている物を床に落としながら、Youはフラフラとベッドまで一直線に進む。
    はぁ……、と深いため息をひとつ。
    いつもの家の匂いを、肺いっぱいに吸い込む。
    そのままベッドシーツに倒れ込み、モゾモゾと緩慢にブラを外すと適当に放り投げた。
    「…ねぇ、You。」
    ひょっこり現れたドゥの頭に、丁度よくブラが着地する。
    「……、なに?」
    眉間に皺を寄せたYouが、ずりずりと顔だけをドゥに向ける。
    Youの身に付けていたものを抱えていたドゥは、その中からあの黒いバラを差し出す。
    「これ、なに?」
    Youの眉間により深い皺が刻まれる。
    「…あー…。……もらった。」
    手を伸ばし、枕を手繰り寄せ顔を埋める。
    (本格的に眠りの体勢に入ったYouには、ドゥがどんな顔をしているか分からない。)
    「…そう。……えっと、これ、必要?」
    「要らない、捨てて。」
    枕越しのくぐもった声に、ドゥは耳をそばだてる。
    「いいの?」
    「要らない、思い出したくない、忘れたい。捨てといて。」
    「うん、わかった。捨てておくね。」
    ドゥの声のトーンが僅かに高くなる。
    Youは何も言わず、返事の代わりにヒラヒラと手を振った。
    ドゥは、頭に乗ったままのブラを回収して胸に抱きとめてから、その手を取って自分の頭に押し付ける。
    ふわふわ、と触れた物を確かめてから、彼女の手はいつものようにドゥのくせ毛をくるくる掻き回す。
    手探りでドゥの頬に触れ、ぺたぺたと軽くはたく。
    その後で鼻先を軽く摘むと、そのまま手を引っ込めて眠りについた。

    ざわざわと、髪が揺れる。
    「許さない、許さない、許さない、許さない。」
    ひとり、電気も付けずにリビングに戻ったドゥは、握り締めた黒いバラを睨めつけるとブツブツ独り言を繰り返す。
    リボンと、紙で作られた。
    なんてことは無い小さな造花。
    しかし、そのバラから漂う気配が、ドゥの内側をこの上なくざわつかせる。
    自分以外の"ナニカ"が、僕の、僕だけのYouを奪おうとしている。
    「許さない。」
    ドゥは小さなバラに言い聞かせるように、そっと唇を寄せる。
    「Youは、僕のものだ。」
    低いささやき声に合わせ、バラの花を髪の毛が覆っていく。
    「お前らなんかに、やるもんか。」
    ガチャン、何かが壊れる様な音とノイズが走る。
    次の瞬間、ドゥの手に握られていたはずのバラの花は綺麗に消えていた。
    何も無い手元見つめた後、ドゥはパッと手を開くと、くるりと身を翻す。
    「…ベッドに行こ、っと」
    今頃、うつ伏せになって眠りについているYouの事を想像する。
    ひとりほくそ笑むと、上機嫌に変わった彼は、ふんふんと鼻歌を歌いながら寝室へと向かった。
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