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    Fuca2Fuca2

    @Fuca2Fuca2

    筆が速いのが取り柄です、Twitterで書いたものをここに入れます。
    責任ある大人しか見ちゃダメなものもぶち込みます。(ちゃんとR表示します)
    書いてる人は、品性下劣かつ下品で助兵衛です。
    だから、そんな作品しかありません。
    ※シモの話は♡喘ぎデフォです。
    最近拠点を支部に移したので、ここは跡地のようなものです。

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    無断転載禁止です。

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    Fuca2Fuca2

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    ドゥとYou
    彼の誕生日11月35日に合わせて書き上げたものです。

    きみのたんじょうびある寒い日の夕食後、Youはソファに寝そべってスマホを眺めていた。
    お気に入りの曲のミックスリストを、ああでもないこうでもないと弄り回していると、キッチンからドゥがやって来る。
    よく冷やしたコカ・コーラの缶を片手に、Youの足元に近付く。
    Youは彼を一瞥すると、何も言わずにソファに伸ばしていた足を持ち上げた。
    ドゥも何時もの笑顔のままで、彼女の足を支えるとソファに腰をおろし、自分の膝の上に丁重に降ろす。
    膝の上でYouのふくらはぎを受け止めると、手にしたコカ・コーラをYouに差し出す。
    差し出された缶を当然のように受け取り、彼女は欠伸しながらスマホを臍の上に乗せた。
    「ありがと。」
    「どういたしまして」
    もそもそと起き上がろうとする彼女の手を優しく引いてやりながら、ドゥはテレビに視線を移した。
    Youが聞き流していたテレビは、いつの間にかつまらない報道番組に変わっている。
    「何見る?」
    カシュ、という小気味良い音と共に、Youがリモコンをドゥに放り投げる。
    「う〜ん、どうしようかなぁ。」
    リモコンをドゥが受け取ったのを確認してから、Youは缶に口を付けた。
    ぱちぱち、画面が切り替わる。
    ザッピングしながら、手遊びにYouの膝を撫でていたドゥを「くすぐったい」と蹴飛ばす。
    蹴りはリモコンを持つ手にも当たり、衝撃でチャンネルが切り替わる。
    インタビュー番組のようで、世界的に有名な俳優が、司会と談笑しているところでVTRが映し出された。
    どうやら、俳優の幼少期のホームビデオらしい。
    可愛らしい少年に、周りの大人達が目隠しを付ける。
    プラスチックの野球バットを手にした少年は、近くの木にぶら下げられた虹色の木馬を、一生懸命に殴り付けている。
    「…あの子は、何をしているの?」
    テレビを興味津々に見つめるドゥが零す。
    「ピニャータ割りよ。」
    「ピニャータ?」
    Youは、「あー…、」と小さく呻いて視線をさ迷わせる。
    「…あれは紙でできてるの、で、中にお菓子が入ってる。中身を出すために、ああやって棒で叩くの。」
    タイミングよく、テレビから歓声が上がる。
    少年のバットは木馬の土手っ腹を見事に突き破り、内側からバラバラとカラフルなキャンディが飛び散る。
    「へぇ、楽しそうだねぇ」
    目をキラキラさせるドゥの横顔を盗み見て、Youは再びスマホを拾う。
    「…やってみたい?」
    Youは飲みさしのコカ・コーラを、サイドテーブルに避難させながら何気なく尋ねる。
    「いいの」
    キャンディを抱えて大喜びする少年と同じくらい…、それ以上に嬉しそうな顔でドゥが振り返る。
    Youは笑いながら、Amazonのおもちゃカテゴリに指をすべらせた。
    「いいわよ…。折角だから、ドゥの誕生日に合わせて買っといてあげる。」
    「わぁ…、嬉しいなぁ。」
    ドゥはYouの腕の中にするりと忍び込むと、そのままキスをする。
    Youの胸に甘える様に擦り寄り、彼女のデコルテに頭押し付けた。
    「…で、ドゥの誕生日っていつ?」
    ふわふわのくせ毛を指に絡みつけながら、ピニャータの品定めをする。
    「11月35日」
    「…ふふ、いつなのよそれ。」
    Youの指先が、大きな赤いハートのピニャータに止まる。
    「えっとね…、明日、かな?」
    「…はあ!?」
    Youが大きな声を上げて飛び起きる。
    突然の大声に釣られて、ドゥの瞳孔がキュッと窄まった。
    「…なんで言わなかったの。」
    「…き、聞かれなかったから。」
    「…。」
    「…。」
    しばらくの沈黙の後、Youは迷わず「お急ぎ便」のオプションにチェックをいれ、ありとあらゆるものをカートに放り込む。
    「…You?」
    「私、ちょっと忙しいから。」
    ぴしゃりと言い放ち、スマホ越しにオロオロするドゥを睨めつける。
    「…明日の仕事終わり、準備があるから。私が呼ぶまで家に帰って来ちゃダメ。」
    「…」
    「その辺の公園にでも行って、暇潰してて。」
    「そ、…そんな。」
    雨の日の子犬の様に哀れっぽい顔のドゥが、Youの膝に縋る。
    「ダメ。」
    再びぴしゃりと言い放ち、ぐいっと膝で押し返す。
    「…。」
    すっかりしょぼくれたドゥに、Youは大きなため息を零した。
    「…急拵えだけど、ちゃんとお祝いさせて。……あなたは、私の恋人なんだから。」
    「」
    途端、ドゥの顔が明るくなる。
    「You〜っ♡♡」
    Youを推し倒して喜ぶドゥの背中を、ポンポンと叩く。
    「はいはい、分かったから。」
    "注文が確定されました"の表示を確認してから、スマホの電源を落とす。
    「ほら、歯磨いて寝よ。」
    ふわぁ、と欠伸をひとつ。
    温くなったコカ・コーラを一気に飲み干し、立ち上がる。
    「(…後は、サプライズがなにか欲しいわね。)」
    ルンルン気分のドゥを背中に引き連れながら、Youはぼんやりと考えを巡らせた。






    「あ、そうだ。」
    グラノーラバーをカフェオレで流し込んだYouが、ふと立ちあがる。
    ガリガリとナッツを咀嚼しながら、通勤カバンをガサガサと漁る。
    「ドゥ、こっち来て。」
    仕事道具の油性ペンを取り出し、乱暴にキャップを口で外す。
    大人しくやって来た恋人の左手を取ると、ぐいっ、と袖を捲りあげ、傷だらけのその腕にペンを滑らせる。
    『John doe Birthday Party @my home 6:00pm 』
    手首から肘までを使って書き付けると、キャップを締める。
    「ん、…これ招待状ね。」
    ワイシャツのボタンをとめながら、いつものスニーカーに足を入れる。
    「時間になったら帰って来て、それまでは帰宅禁止、いいね?」
    「う、うん…。」
    「…Good boy。」
    腕を擦りながら、頬を染めて頷くドゥの首に手を掛け、頬に挨拶のキスを送る。
    「いってきます、」
    「い、いってらっしゃい…、You…。」
    パタン、と玄関のドアが閉まる。
    1人残されたドゥは、熱を持った頬に手を当て、ふぅとため息をこぼした。
    視線を自身の左腕に向け、へにゃりと情けなく笑う。
    「バースデーパーティー…。」
    指先の文字を指でなぞり、読み上げる。
    我慢出来ないくすくす笑いが零れ、ドゥは自分の身を掻き抱いた。






    レジ打ちの仕事を同僚に押し付けたYouは、さっさと早退すると、スマホを睨み付けながらブツブツと1人考えを巡らせる。
    「ディナーは受け取るだけ、Amazonはあと1時間後、プレゼントはある、……あと、何かいる物は?」
    悩みながら、スーパーマーケットに足を踏み入れる。
    既製品のバースデーケーキを品定めしつつ、飾り付け用のアイシングやロウソクをカートに放り込む。
    「…やっぱり、ケーキよね。」
    ホイップスプレーを手に取りながら、足を進める。
    「あと何か…、サプライズが出来そうなもの…。」
    そう呟いてから、そういえば、ドゥに驚かされた事は数多くあれど、彼を驚かせた事なんて無かったのでは…?と頭を過ぎった。
    「…。」
    小さく舌打ちすると、Youはカート押しながらレジまでの道を進む。
    途中、彼女の目がアルコールコーナーに留まる。
    カラフルな酒瓶と"楽しく呑もう"のキャッチコピーと共に、簡単なカクテルのレシピが配布されている。
    「…"カクテルを恋人と"ねぇ。」
    仲睦まじい様子の男女が、カクテルを手に肩を寄せあっているイラストが添えられ、レシピコーナーを飾り立てている。
    「…。」
    Youは暫くレシピを眺め、口角に笑みを乗せる。
    「…ふぅん、面白い。」
    とあるレシピを1つ取り、ポケットに捩じ込む。
    「よし、後は…。」
    スミノフをひとつカートに入れると、満足気にレジに向かった。



    午後6時きっかり。
    トントン、と玄関のドアを誰かがノックする。
    エプロンで手を拭いながら、Youは玄関まで駆け寄る。
    開いたドアの向こうに居たのは、長い髪をふんわりと結った黒いスーツ姿の男性だった。
    「ただいま、You。」
    …玄関に居たのは、恋人のドゥで間違い無かったのだが、普段とあまりに違う姿に、Youは黙りこくる。
    「……。えっと…、変、かな?」
    ポニーテールを揺らして、少し不安げに首を傾げる。
    黒いシャツに揃いの黒いスラックス、赤いネクタイ。
    自信なさげに頬を掻き、へらりと笑う。
    Youはハッとすると、首を横に振った。
    「ううん、変じゃない。…似合ってるよ、ドゥ。」
    気を取り直した彼女は、彼の背中を優しく押しながら、2人きりのパーティ会場に案内する。
    「……どうしたの、その服。…カッコよくてびっくりした。」
    「へへ……、ちょっとカッコつけてみたんだ。」
    ぎこちなくネクタイを締め直しながら、ドゥは恥ずかしそうに俯く。
    「…誕生日パーティって、初めてで…。すごく嬉しくて、楽しみで。…しかも、大好きな君にお祝いしてもらえるなんて…。だから、ちょっと…おめかししてみたんだ。」
    Youは彼の正面に回ると、襟ぐりに指を差し込み、きつく締められたノットを少し緩めてやる。
    ネクタイ全体を指で軽く伸ばし形を整えてから、Youは満足気に頷いた。
    「とても、良く似合ってるよ Birthday boy。
    ほら、お待ちかねのピニャータ割りよ。」
    そう言ってYouが案内したのは、バスルーム前の扉。
    ドアの上枠に引っ掛けるように、大人でもひと抱えほどありそうなボール紙製の真っ赤なハートが糸で吊るされている。
    「Wow」
    ドゥの目がキラキラと輝き、彼は思わず両手で口元を押さえた。
    「ほら、これがあなたのエクスカリバーよ。」
    そう言って、Youはプラスチックでできた剣をドゥに握らせる。
    「目隠しは無しね、あなたは子供じゃないし。…ここは家の中だから、片付けの事も考えなきゃ。」
    Youはドゥの背中をぽん、っと押すと、ピニャータの前に進ませた。
    「さあ、頑張ってー。」
    ひらひらと手を振って声援を送るYouに、やや緊張した面持ちでドゥはこっくり頷く。
    剣を両手でしっかりと握りしめて、深呼吸をひとつ。
    思いっ切り振りかぶると、真っ赤なハートに一撃を振り下ろす。

    KAPOW

    おおよそ、プラスチックと厚紙がぶつかった音ではない破裂音が響き、ハートは真っぷたつに割れた。
    余りの音に、Youはびくりと肩を震わせ目を見開く。
    バラバラ零れるキャンディの小袋と、舞い上がる金色の紙吹雪。
    「…あ、これ、カエルの形グミ前にテレビで見たやつだミミズのもある…ありがとうYou」
    金色のラメに纏わりつかれながら、大喜びでキャンディを拾い集めるドゥの笑顔に、Youは漸く現実に帰って来た。
    「え…、あ、あぁ。うん、良かった。」
    こっそり深呼吸をしてから、ドゥの頬に付いた色紙を払ってやる。
    「…えっと、次はディナーとケーキね、キャンディは置いといてダイニングまで来て。」
    「分かったよ、You」



    いつものテーブルには、ケンタッキーのバケツと、宅配ピザ、デコレーションされたカップケーキが所狭しと並ぶ。
    「…悪いけど、料理は全部テイクアウト。」
    Youの謝罪に、ドゥはふるふると首を横に振る。
    「とっても素敵なディナーだよ、You僕、チキンバーレル大好き」
    彼は満面の笑みでいそいそと席に着くと、目の前に用意されたカップケーキを指さした。
    「このカップケーキは?」
    行儀よく3個×3個で整列したカップケーキには、たっぷり乗せられたホイップクリームの上に、カラフルなチョコスプレーが振りかけられている。
    それぞれのてっぺんには、色違いのロウソクが突き刺さっていた。
    中心は大きなメッセージクッキーが陣取り、歪んだチョコレートペンの筆跡で、『Happy Birthday Doe』と認められていた。
    「カップケーキも既製品よ。……ホールケーキは2人じゃあ流石に食べ切れないかと思って。……デコレーションだけ頑張ってみたけど。」
    Youはカップケーキから目を逸らし、言い訳のように氷が入ったグラスにスミノフを注ぎ入れる。
    「本当は、ファンフェッティのを買いたかったけど…。あそこのスーパーマーケットには置いてなくって…。」
    マドラーをカラカラと回しながら、Youが少し俯く。
    「わぁ…、これ、…本当に僕のために?」
    そんなYouにお構い無しで、ドゥは無邪気に彼女のエプロンを引っ張っぱると、キラキラの両目でYouを見上げる。
    彼の瞳の中のYouは、緩やかに唇の端に笑みを浮かべると「…勿論、そうよ。」と呟いてドゥの額にキスを送る。
    「マッチを取ってくるから、待ってて。」
    ドゥの髪を優しい手付きで撫でた後、Youは微笑んでキッチンに向かう。
    マッチと、オレンジジュースのボトルを手にして戻ってくると、手際良くロウソクに火を付けた。
    照明を落として、部屋はロウソクの灯りだけに包まれる。
    「……バースデーソングもいる?」
    皮肉っぽくYouは笑うが、オレンジ色に照らされたドゥは満面の笑みを浮かべた。
    「もちろん」
    「そう言うと思った……。」
    煩い程の期待の眼差しに、Youはため息を零した。
    …咳払いを少し。
    「Happy Birthday to you…、」
    ぼんやりと明るいロウソクの火と落ち着いたYouの歌声に、ドゥはうっとりと頬杖を着く。
    「Happy Birthday to you…、」
    自分の為だけに用意された料理、自分の為だけのケーキ、自分の為だけの歌声。
    「Happy Birthday Dear …… my Love…、」
    そして、…大切な恋人。
    ドゥにとってかけがえの無い、大切なものだけで満たされた空間で、彼は身体の芯まで幸福に浸っている。
    「…Happy Birthday to you…。ほら、ロウソクを消して。」
    Youに促され、めいっぱい吸い込んだ息を吹き掛けると、煙のにおいと共に、辺りが闇で包まれる。
    パチパチパチ、小さな拍手の音が、しんと静かな部屋に染み渡った。
    「誕生日、おめでとう。」
    手探りで照明を付けようとするYouの手を、暗闇の中でドゥがそっと取る。
    「…ドゥ?」
    「You…。」
    Youの指先に、熱い唇が優しく押し付けられた。
    ちゅ、ちゅ、と柔らかい音を立てながら、手の甲に、手首に、肘に、肩に、首筋に。
    「…You、大好きだよ。」
    ちゅ、と耳たぶにも唇を落とされ、最後にぎゅうっと抱き締められる。
    「…とても、とても素敵な誕生日パーティだ。…愛してる。」
    小さく囁くと、ドゥはYouの髪に顔を埋め、静かに深呼吸する。
    Youも暗闇の中で目を閉じると、熱い彼の背中にゆったりと腕をまわした。
    「……私もよ、ドゥ。」



    「…にしても、ほんとによく食べるわね。」
    チキンバーレルを"行儀よく骨を残して"食べることを覚えたドゥが、得意げに笑う。
    「もちろん君が用意してくれたディナーだもん残さず食べるよ」
    Youはカラカラとグラスを鳴らしながら、食べ切れずに明日の昼食になる予定だったピザが次々消えていくのを黙って見ていた。
    ピザひと切れ、チキン2つ、カップケーキひとつを平らげたYouは既にギブアップしているというのに、目の前の恋人は大振りなピザや、カップケーキを殆ど丸呑みで平らげていく。
    何がそんなに嬉しいのか、どれも代わり映えしないカップケーキをひとつひとつ手に取っては色々な角度から眺めて、最後は笑って口に放り込む。
    ……最初の1個目は、へばりついている紙カップごと飲み込んだので、Youを酷く慌てさせた。
    一切の咀嚼もなく、ごくん、と文字通り丸呑みするドゥを、Youはアルコールでほんのり頬を染めながら眺める。
    「…ねぇ、そう言えば。」
    Youの呟きに、ドゥが反応する。
    彼女は笑って、フライドチキンの欠片をドゥの口角から払ってやり、ドゥの目の前のグラスを顎でしゃくる。
    「飲まないの?」
    Youが飲んでいるのと同じオレンジ色のカクテル、ただし、ドゥは口すら付けていない。
    「…だ、だって。水を入れてたでしょ…?」
    ドゥは急に大人しくなると、視線を足元に落とした。
    「水じゃない、ウォッカ。…それに、少ししか入ってない、ほとんどオレンジジュース。」
    「で、でも…。」
    もごもごと言い訳を重ねるドゥに、Youは舌打ちをひとつ落とす。
    「…A gentleman must not embarras a lady、って分かる?」
    グラスの残りをグイッ、と煽ると、空になったグラスをドン、と机上に叩き付ける。
    「…ぇ、…You?」
    何故か彼女を怒らせてしまったことを悟ったドゥは、冷や汗をかいて慌て始める。
    「お、怒ってるの?…You?ぼ、僕が?……あ、君が用意してくれたものを無駄にしちゃったから?…で、でも本当に僕、水は怖くて…。」
    顔を真っ青に弁明する彼を無視してYouは立ち上がり、ドゥのグラスを奪うと目の前で立ち止まった。
    「うるさい。」
    酔っているせいか何時もより顔が赤い彼女は、縮こまって座っているドゥを跨ぎ、どすり、と乱暴に腰掛けた。
    「」
    今度は顔を真っ赤にしたドゥが、蚊の鳴くような声で悲鳴を上げる。
    薄いルームウェア越しの柔らかい太腿が、まろい輪郭の尻が、自分の膝の上に堂々と乗せられてる。
    彼女の匂いと、アルコールの臭いが混じった吐息を、直接肌で感じる。
    「…You、だ、大丈夫?」
    震える声でYouに問い掛け、ごくりと生唾を飲み込むと、彼女の臀部を(支える為に)両手で包む。
    ドゥの葛藤など知らぬ存ぜぬのYouは、ぐいっ、とドゥの為に用意したグラスを煽る。
    右手にグラス、左手でドゥのネクタイを掴んだYouは虚ろな目付きでドゥを正面から睨んだ。
    「…You?」
    何も言わない彼女に無理矢理ネクタイを引かれ、唇同士がぶつかる。
    がち、と前歯が当たる感触。
    Youの舌がドゥの唇をこじ開け、ぬるくなったオレンジジュースをドゥの口内に流し込む。
    彼女の唾液と混じったカクテルは、少しだけとろみを帯びてドゥの喉を落ちていく。
    彼が反射的に嚥下すると、その喉の動きを確認したYouがゆっくりと唇を離した。
    呆然と、目の前のYouの口角を伝う雫を見つめる。
    Youは、舌を伸ばして唇をひと舐めすると、再びグラスに口をつけた。
    ごく、ごく、と今度はちゃんと彼女自身が嚥下する。
    「……。」
    「スクリュードライバー。」
    「…ぇ、へ?」
    「スクリュードライバー。…オレンジジュースとウォッカのカクテル。…美味しかったでしょ?」
    「あ、うん…。」
    正直味なんて分からなかったが、たどたどしく頷くドゥに、Youは気分を良くして目を細める。
    「…私の好きな味なの、覚えて。」
    「わ、…分かった。」
    「あなたとしか飲まないし、あなたとしか飲みたくないから。」
    グラスを口に付けながらくすくす笑うその仕草に、ドゥの心臓がドキリと震える。
    「…♡」
    「いい?」
    「う、うんっ。」
    強くかぶりを振るドゥに、Youも笑って頷く。
    彼女は今までの蛮行に満足したのか、緩慢に立ち上がる。
    そんなYouの腰を掴まえ、ドゥは彼女の機嫌を取るように小首を傾げながら、彼女をもう一度自身の膝の上に座らせた。
    「…えっと、もう少しだけ、飲ませて欲しいな?」
    ギラギラと興奮して開き切った瞳孔に、普段のYouなら嫌な予感のひとつでも感じそうなものだが、生憎酔いが回った彼女は、いつもの判断が出来なくなっていた。
    「…ん、飲んでいいよ。」
    差し出されたグラスに、ドゥは首を横に振った。
    「…違うよ、You。」
    グラスをそのまま優しく押し返し、Youの唇に宛てがう。
    「ここから、飲ませて…♡」
    ドゥはうっとり微笑むと、薄く開いた唇にグラスの端を噛ませ、軽く角度を付けてカクテルを流し込んだ。
    釣られてYouも飲み込むものの、当然のように彼女の顎やシャツにカクテルが零れる。
    空になったグラスを捨て置き、ドゥは舌なめずりしながらYouの頬を両手で支える。
    「…美味しそう♡♡」
    近くなった距離に疑問を抱く前に、「ああ、キスするんだ。」と認識したYouは大人しく目を閉じた。
    最後のご馳走が、ドゥに食べられるのを大人しく待っている。
    ドゥは体の底から響く様な低い笑い声を漏らし、そっとYouに口付けた。







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