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    OTuraisan

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    OTuraisan

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    モブの抜歯をするふみやと止血する天彦
    ふみ天

    RBBふみ天がモブからおはなしをきくよ 男が目を開くと紫色の瞳にジッと見据えられていた。
     ズキズキと痛む頭から流れた血は赤黒くワイシャツを染め上げる。ロープで椅子に固定された男の腹はギチりと締め上げられ、両方の足首と後ろ手にされた両手首が結束バンドで止められている。
    「うぁ……」
     カラカラになった喉から漏れた微かな声に目の前で男を見つめていた青年が微笑んだ。ソファに足を組んで座る青年は幼く見えながらも尊大な態度で後ろを振り向きながら奥にいた男に声をかける。
    「お、天彦。起きた」
    「あっ、無事に起きましたか。良かったぁ、猿川くん力加減がなぁ……」
     ゆるりと歩いてきた天彦と呼ばれた男は肉体美をこれでもかと見せびらかすように上半身に何も着ておらず、胸元に彫られたWSAの文字は汗に濡れる。
    「どぉーこ、見てんの?」
     いつの間に近づいていた青年が縛られた男の顎を掴んだ。
    「ひっ……」
    「ふみやさん、めっ! これから色々聞くんですから」
     ふみやは少しだけ不満げな表情を浮かべてから天彦は手にした写真をトランプのように男の目の前に広げる。
    「この中に貴方にお薬売るように指示した人います?」
    「ッ……」
     ぐっと男が口を閉ざすのに天彦は指先を男の唇に滑らせた。艶かしく濡れた目が媚びるように見つめ、トントンと優しく下唇を叩く。
    「お喋りしちゃいましょ? どうせうちのシマで粗悪な薬物売ってたグループなんてすぐに潰れちゃいますから、ね?」
    「っ、そんな、喋る訳ねーだろ! 舐めてんじゃねぇぞ!」
     ぎろりと睨みつけて声を上げる男に天彦は眉を八の字にした。
    「ですって、ボス」
    「ん」
     うちのシマ、ふみや、ボス、と情報が男の頭の中でカチリと符合する。ここら辺を仕切る新参ながら恐ろしく有能な者たちを揃えたマフィア。ボスはどこかの大きな組織に属していたとか、人外の強さだとか噂で囁かれていた。こんな若いとは思わなかったがと男は痛む頭や体に顔を歪ます。
    「じゃ、やろっか」
     ふっと笑うとふみやは男の口を閉ざさせないように専用の固定具を口にはめた。
    「あ、知ってますか? うちのボス、凄い力強いんですよ。脳の機能とかイジられてるのかなぁって天彦は興味津々なんですけど」
    「天彦、喋りすぎ」
     ふみやは黒手袋をつけたまま、男の口の中に指を入れると奥の下の歯を親指と人差し指で摘んだ。
    「ぐ、うぐがッ!」
    「あ? 喋んないのが悪いんだろ? 喋れるようにしてあげてるんだからさ、感謝してよ」
     ぎりぎりと顎が軋む。麻酔もなく、ゾッとする痛みが走った。神経がぶちぶちと千切れ、ベキッ、ベキベキと根の部分が折れる音がする。痛みで脂汗と震えが止まらなくなり、ぐるりと目が白目になった。
    「あがッ……ごッ、ごぶっ……」
     血が噴き出しているのか口の中に生温い液体が溜まり、泡になって口から漏れ出る。ふみやが手首を捻って男の口から血塗れになった白い歯を取り出した。
    「取れたよ、天彦」
    「はぁい」
     天彦が溢れ出る血をガーゼで押し込んだ。まだ残った歯が押された痛みで男の顔の穴という穴から液体が溢れる。
    「奥歯、取れちゃいましたね。もう生えないんですよね、歯って。歯だけで済むと良いんですけどねぇ、うちのボスってばちょっとやんちゃさんだから」
     喋りながら天彦が処置をしていく。残ったかけらをピンセットで取り、止血用のテープのようなもので傷口を塞いだ。
    「はい、それでどうです? この中にいます?」
     ブルブルと震える指が一枚の写真を選ぶ。触れた写真に血のついた跡が残った。
    「ふぅん、こいつか」
     血に濡れた手袋をふみやは外して床に投げる。伏せた紫が写真を見つめた。
    「あと取引をどこでしてるかだっけ?」
    「ええ、喋れます?」
    「ッ、が……ぃ、あ……○○っ、みせっ……」
     痛みを堪えながら必死に声を出す男の言葉にふみやはスッと表情を消した。
    「あー……あの店か」
    「明日お話しに行きましょうね、ボス」
     ちゅ、と天彦は宥めるようにふみやの額にキスを落とした。
    「ぅ、ん……ぐっ……ぅ……」
     痛みで唸り声を上げる男にふみやが少し眉を上げ、ガゥンッと銃声が響いた。硝煙を上げる拳銃を手にした天彦が朗らかに笑う。
    「もう、いらないですよね」
     懐に銃を仕舞いながら天彦はふみやの頬に自分の頬を擦りつけた。
    「まぁね……天彦、俺のため?」
    「五月蝿かったでしょう?」
     噛みつくようにふみやが天彦に口づける。
     血と硝煙の匂いと、ガタガタと男の痙攣に合わせて椅子が揺れる音を聞きながら天彦は目を閉じた。
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