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    ParAI_t

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    ParAI_t

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    いずれ貴方へと続く導 / クロアス

    クロービスさんキャラスト公開記念第二段!
    ようやく予定がとれてほっとしています←
    今回のお話は、1話目公開分が不機嫌な黒魔道士~クロービスと視察へ、という読みからの、クロービスと視察へ~怖くないからの間の話のつもりです。
    繋げるつもりで書いており、プライベートエピソードの内容をやや含むので、これからキャラスト読む方は各自ご自衛・ご判断をよろしくお願いします。

    ##クロアス

    ---------------------------------------------------------------------------------------














    先日の酒場から少し距離のあいた店の先。クロービスが戻ってくると、そこで待っているはずの人影はなく。また妙なことに巻き込まれたか?、と警戒しつつ辺りを見回せば、やや離れたところに見慣れた三つ編みが揺れていた。
    声をかけようとして、見知らぬ子供が不安げにアステルのスカートの裾を掴んでいるのが目に入る。当のアステルは、近くの露天の店主を巻き込んでなにやら話し込んでいた。何度かのやり取りの後、花が咲いたような笑みを浮かべ、子供へと向き直る。屈んで何やら身振り手振りを交えていると、仕舞いに、ありがとうお姉ちゃん、と少し弾んだ声が響いていた。
    小さな手が曲がり角に消えるのを見送り、アステルは小走りでクロービスの元に駆け寄ってくる。

    「お待たせしました! すみません、迷子がいたのでつい……」
    「……君は城下に明るくないから、私に着いてきたのではなかったかね?」
    「はい。だから近くのお店の人に道を聞きました!」

    無邪気な回答にクロービスは痛みを増した頭を押さえる。人助けは結構だが少しは計画性というものを持ちたまえ、という苦言も、効いている気はしなかった。

    「地図は持ってるんですけど……」

    勇者になった時に支給された地図を広げ、アステルは曖昧に笑う。故郷にいた間はずっと暮らしていることもあって必要がなかった。ときたま村外に出かける際には一応見る機会があったものの、山道と街中では勝手が違う。迷路のように複雑な通りはどれもこれも似ていて、中々うまく覚える事が出来ていない。

    「地図程度は読めぬと、勇者として話にならぬぞ」
    「うう……。すみません」

    謝りながらも一向に理解できる気配がなく意気消沈していくアステルに、クロービスは深くため息をついた。

    「まず、今いるこの通りの名前はわかるな?」
    「ええと、ちょっと待ってくださいね…。これですか?」
    「正解だ。この通りには別名があってな…」

    クロービスはさらさらと、地図には示されない地域での呼び名や特徴をあげていく。アステルは必死に聞き取りながら、走り書きを地図へ書き連ねていった。

    「…この道についてはこんなところか」
    「はい。ありがとうございます!」

    ついさっきまでの沈んだ顔はどこへやら、アステルは弾けるような笑顔となっている。くるくると変わる表情に、クロービスは騒がしいことだな、と零し次の行き先を告げた。

    「先ほどの用向きで確認したい資料がある。あそこに場所を変えるぞ」

    指し示す先には、小さなカフェがあった。言うなりすたすたと歩き始めたクロービスをアステルは急ぎ早足で追いかける。
    席について紅茶を注文すると、クロービスは書類を取り出し、目を走らせていた。アステルはその間、急いで書いた文字を読み返しつつ、推敲していく。
    クロービスが一通り目を通し終えたタイミングで店員が頼んだものを運んできた。砂時計の砂が落ちるのを待つ間、アステルはクロービスへと質問を投げかける。

    「さっきの道なんですけど、ここってなんでしたっけ?」
    「む、説明が足りなかったな。そこは…」

    ゆっくりと語られるようになった説明をアステルは書き留める。話の弾みで近くの通りや治安、イベントの情報を追加していると、砂時計がその役目を終えつつあった。

    「このお店よく来るんですか?」
    「ああ。小さい店だが、品揃えは悪くないな」

    アステルは、二つのカップへと紅茶を注ぐ。ふわりと漂う知らない香りは、クロービスの言うとおり上品なものだ。

    「あ、美味しいです」
    「この店のオリジナルブレンドでね。月替わりで新作が出ているな。確か茶葉も販売しているはずだ」
    「そうなんですね。それなら買っていきたいです」

    何の気なしに会計の横の缶を見たアステルは硬直する。想定していた値段より上の桁が大きいそれは、とても気軽には手が出せそうにはなかった。
    一つ気付くと色々な事が気になり始めるもので、手に持ったカップもまじまじと見ると優美で繊細な花柄が描かれている。座っているテーブルと椅子も、年代を感じさせながらも状態が非常に良く、至る所に細かな装飾が散りばめられていた。席へ座った時には気が付かなかったが、店の奥には立派なガラスケースに色とりどりの輝きを放つ技巧を凝らしたケーキが鎮座している。

    「上質なものが値が張るのは当たり前だろう」
    「あ、あの、それじゃあ、今飲んでるのって…!」
    「相応の値段になるな。安心したまえ、ここは私が出しておく」
    「えっ、私も払います」
    「いらぬ」
    「でも、悪いです」
    「くどい。大体、持ち合わせは足りるのかね」
    「ぎ、ギリギリでなんとか…!」

    アステルは頑として譲らぬという姿勢を崩さない。この私相手に強気なことだ、とクロービスは閉口する。例の酒場近くで絡まれた件は、待たせた場所を不用意に選んだこちらの落ち度も多少はあった。あんなことでグランロットの印象が悪くなり、士気を下げられても困る。だから、城下の良い場所の一つでも紹介してやろうというつもりだったのだが、支払いが負担となっては意味がない。どうしたものかと店の奥をちらりと見やり、クロービス攻め口を変えることにした。

    「ほう。私は追加でケーキを注文するが、君はいらぬのだな」
    「……!」
    「ここの店のパティシエはイリュミナシア全土で一、二を争う有名店で修行していた者だが」
    「……!?」
    「季節毎にメニュー変更があるため、次同じ物が出てくるのは一年後だろうな」
    「…すみません、ご馳走になります!」
    「フッ、よろしい。…次からは注意したまえ。いいように付け込まれかねぬぞ」

    アステルは気後れしながらも、菓子への期待を隠せていない。そんな様子に、クロービスは少しだけ口の端を上げ、ようやく紅茶へと口をつけた。



    「道は多少はわかるようになってきたか?」
    「はい。まだちょっと怪しいですけど」

    店から出た二人は視察を再開していた。地図に加えた事柄はどれもこれもが正確で、アステルの城下の道の把握を助けている。

    「クロービスさん、普段から街のことをよく見ているんですね。すごいです」
    「当然だ。これが職務だからな」

    賞賛を顔色一つ変えずに切り捨てるクロービスに、アステルはやっぱりいい方なんだなぁと独り言ちる。地図と実際の道を見比べると、クロービスが先立って用事を済ませてきたところは、少々治安の悪い地帯で、待ち合わせ場所は安全が確保されていた。一方、今通っているルートは最短ルートではなく、比較的治安の良い道が選ばれている。

    「君、置いていかれたいのかね」
    「あっ、待ってください!」

    地図を畳み、追いついたアステルは、クロービスさんはいい方ですね、と笑いかける。それに対し、君の思考は理解し難いな、と素っ気のない返事が返っていた。
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    ParAI_t

    MOURNING11月のカレンダー没案です。
    クリスタニア編でリーン様が不穏なこと言ってた印象が濃い辺りの頃に書いたので、今思うと「とにかく無事に終われ!?」みたいなノリをひしひしと感じる←
    アプリ版だと第一部のラクリモッサでしばらく三柱でお茶会してないみたいな話があったので、こんな風な日常に戻ってたらいいよねぇみたいな願いを込めてます。
    いやぁ、今週のクリスタニア編も楽しみですね☺️
    11月カレンダー没案(サシャ・リーンハルト) ほう、とついた息が白く漂う。もうそんな
    季節になったんですねー、としみじみとして
    サシャは陶器の音をテーブルに響かせた。
     本日の茶会は鮮やかに色付いた秋を
    鑑賞しようと屋外で行うことになっている。
    外気での冷却も計算に入れてあるから、
    ティーポットの中身はそろそろ飲みごろに
    なるはずだ。あとは二人を待つだけですね、
    と視線を上げれば、はらりと赤や黄が高い
    空に散っていた。かつての戦いと同じ季節が
    これほどまでに穏やかに過ごせているのだ、
    とサシャはゆるりと目を細める。
    「おや、あいつはまだ書類と格闘中かな」
    「年の変わり目も近いですからねー。魔道
    交信ではもうすぐ来ると言ってましたがー」
     そうしてさらりと金の髪を揺らす赤い鎧も、
    358

    ParAI_t

    DONEドロライ参加作品です。お題は「いい夫婦の日」。
    モブ秘書がクロアス夫婦+子供を観察してる謎の話になります。需要は私にある(澄んだ瞳)
    キャラスト3話で父さん母さん呼びしてたのに、なんか今は父上母上呼びしてるから、つまり結婚後はこんなんじゃない?みたいなノリで書きました。
    いずれ職場で「パパは〜」とか言っちゃう話も書きたい。結婚後でなくても天惺獣関係ならスレイヤー全員やらかせる余地はあるしな…!←
    困惑メラビアン−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−































     どうも直属の上司は厳しい人柄、らしい。風の噂でそんな評判を聞きつけて、グランロット王国宮廷魔道士長、クロービス・ノア付となった新任秘書は、緊張に身を固くして部屋の扉を叩いていた。出迎えた予想と違わぬ鋭い眼光に気圧されつつも、準備をしていた甲斐もあり用件は滞りなく進んでいく。
     魔王との長きにわたる戦いを終えたグランスレイヤーともなればこの威厳も当然か。多方面に渡る業務内容を迅速かつ正確無比にこなしていく姿に、秘書は自分なりに答えを得て、一礼し退出しようとする。そうして顔を上げた刹那、廊下からかすかに幼子の声が聞こえてきた。
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    ParAI_t

    DONE※いつも以上に原作の行間にクロアスをねじ込んでいます
    ※※特に本筋ではないのですが、若干ガレル・パレル編のネタバレを含みます

    オトメ勇者初恋Webアンソロジー寄稿作品になります
    ほぼほぼ謎の青年C(AとBがないのが作為的とか言わない)が活躍しているクロアス(?)な雰囲気ですが、お楽しみいただければ幸いです
    今週のクリスタニア編と矛盾しないといいなあ…(直し入るとめんどいなという顔)
    キャンディタフトは甘やかに揺れる / クロアス----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
















     その名の通りに飴で出来ているかのように、小さな白い花は甘く香っていた。

    「クロービスさん。頼まれてたもの持ってきましたけど、どこに置いておきますか?」
    「ああ、机に空きがあるだろう。そこに頼む」
    「はーい」

     年代物の深緑の図鑑から目を上げ指示を出したクロービスは、すぐに意識を机に戻すとリストへチェックを入れる。本日この時間のクロービスの業務は、実験室での魔法薬の調合だった。王城に併設された植物園から運んできた花の色と香りに、何かを思い出したアステルはなんの気なしに口にする。
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    ParAI_t

    DONE※オトメ勇者最新話(第57話)ネタバレ
    お題は「神無月」です
    今週もまたすごい展開でしたねえ
    推しの心情深掘り第2弾ということで、今週の展開を踏まえた今回もまるで先行きが明るくはないお話です
    毎週のお題に合わせて可能な限り続けていきたいけど、多分そのうち矛盾すると思う(確信)
    書いてて思ったけど、メインストがトゥルー爆走してるなあと思うと同時に箸休め回をくれ…!
    イチャコラさせる暇がないんだよなあ
    裁きの光は虚ろにて / クロアス----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------



















     勇者は、死んだ。エルドアの淡々とした発言を聞いたクロービスは、しばし呆然と立ち尽くしていた。六天魔という異常事態を片付けねばならない、と理性が警告を発しているものの、目の前の光景はとうに現実味を感じられなくなっている。
     いつかの悪夢のように魔物に命を狙われたとしても、守ってやれるはずだった。それがこの現状はどうだろう。女神の声を聴く者は、これほどに呆気なく希望の光を握りつぶし平然としている。傷つき悩み、憂い惑い、それでも譲れないもののために何度でも立ち上がって剣を振るっていた少女を切り捨てる事が、この聖なる地の正義だった。
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