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    ParAI_t

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    ParAI_t

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    ささやかな秘め事 / クロアス

    新刊『黒猫シンクロナス』の後日談になります。
    BOOSTのお礼が間に合わなかったんですが何かはしたかったので、今回は全体公開という形に相成りました。

    ##クロアス

    ---------------------------------------------------------------------------------------------------















    結婚式からしばらくたったある日。私達は今日も業務に追われている。

    「クロービスさん、追加のお手紙持ってきました!」

    執務室へと帰った私は、机の向こうのクロービスさんに声をかけると、預かってきた郵便物を定位置へと収める。空になっていたレターケースはすぐさま底が見えなくなった。ここのところ日常と化しつつある光景だ。

    「それにしてもすごい量です…!」
    「慶事や弔事は外交の糸口に使いやすいからな。君が世界を平和へ導いた時もそうだったろう。しばらくはまだ慌ただしいぞ」
    「これが終わったら、各国の視察もありますもんね」

    私とクロービスさんは、いずれロードオブグローリーで訪れた各地を巡る事になっている。勇者とグランスレイヤーの目で見た報告書を用意せよ、という王の課題の一環だ。道中の様子も重要な調査対象だから、長い旅になると言われている。不在の間の仕事の引き継ぎもそろそろ始めなくてはならない。

    「君、これを大臣に届けてくれたまえ」

    クロービスさんはペンを片手に目の前の文面を思案しながら、処理の終わった書類を私へと差し出す。ふと、白い波の合間から、見慣れないきらりと光るものが見えた。

    「あれ、手袋してないんですね」

    魔法薬の調合や魔道士の方々の訓練等の関係で、クロービスさんは常に手袋を身に付けている。浴衣や誕生日のときのような特別な格好の時は別にして、基本的に外しているのは寝室でしか見たことがない。
    ゆらゆらとした羽ペンの動きを止めて、視線を惑わせていたクロービスさんは、覚悟を決めたように言葉を紡ぐ。

    「この方が効率的に作業ができるのでね」
    「そうなんですか? 今まであまり外してなかったような気がするんですが」
    「…これを眺めていると、君と結ばれた実感がわくと言っているのだ」

    指輪を見ながらクロービスさんは眉間のシワを深めていた。それが不快からくるものでないことは、灰の瞳が物語っている。

    「むぅ…。笑っていないで、早く出かけまえ」
    「ふふっ、はい」

    薬指へと嵌まった同じ重みを確かめながら、私は執務室を後にするのだった。
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    💜💜💜💒💒💕💕💕💕💕
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    ParAI_t

    MOURNING11月のカレンダー没案です。
    クリスタニア編でリーン様が不穏なこと言ってた印象が濃い辺りの頃に書いたので、今思うと「とにかく無事に終われ!?」みたいなノリをひしひしと感じる←
    アプリ版だと第一部のラクリモッサでしばらく三柱でお茶会してないみたいな話があったので、こんな風な日常に戻ってたらいいよねぇみたいな願いを込めてます。
    いやぁ、今週のクリスタニア編も楽しみですね☺️
    11月カレンダー没案(サシャ・リーンハルト) ほう、とついた息が白く漂う。もうそんな
    季節になったんですねー、としみじみとして
    サシャは陶器の音をテーブルに響かせた。
     本日の茶会は鮮やかに色付いた秋を
    鑑賞しようと屋外で行うことになっている。
    外気での冷却も計算に入れてあるから、
    ティーポットの中身はそろそろ飲みごろに
    なるはずだ。あとは二人を待つだけですね、
    と視線を上げれば、はらりと赤や黄が高い
    空に散っていた。かつての戦いと同じ季節が
    これほどまでに穏やかに過ごせているのだ、
    とサシャはゆるりと目を細める。
    「おや、あいつはまだ書類と格闘中かな」
    「年の変わり目も近いですからねー。魔道
    交信ではもうすぐ来ると言ってましたがー」
     そうしてさらりと金の髪を揺らす赤い鎧も、
    358

    ParAI_t

    DONEドロライ参加作品です。お題は「いい夫婦の日」。
    モブ秘書がクロアス夫婦+子供を観察してる謎の話になります。需要は私にある(澄んだ瞳)
    キャラスト3話で父さん母さん呼びしてたのに、なんか今は父上母上呼びしてるから、つまり結婚後はこんなんじゃない?みたいなノリで書きました。
    いずれ職場で「パパは〜」とか言っちゃう話も書きたい。結婚後でなくても天惺獣関係ならスレイヤー全員やらかせる余地はあるしな…!←
    困惑メラビアン−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−































     どうも直属の上司は厳しい人柄、らしい。風の噂でそんな評判を聞きつけて、グランロット王国宮廷魔道士長、クロービス・ノア付となった新任秘書は、緊張に身を固くして部屋の扉を叩いていた。出迎えた予想と違わぬ鋭い眼光に気圧されつつも、準備をしていた甲斐もあり用件は滞りなく進んでいく。
     魔王との長きにわたる戦いを終えたグランスレイヤーともなればこの威厳も当然か。多方面に渡る業務内容を迅速かつ正確無比にこなしていく姿に、秘書は自分なりに答えを得て、一礼し退出しようとする。そうして顔を上げた刹那、廊下からかすかに幼子の声が聞こえてきた。
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    ParAI_t

    DONE※いつも以上に原作の行間にクロアスをねじ込んでいます
    ※※特に本筋ではないのですが、若干ガレル・パレル編のネタバレを含みます

    オトメ勇者初恋Webアンソロジー寄稿作品になります
    ほぼほぼ謎の青年C(AとBがないのが作為的とか言わない)が活躍しているクロアス(?)な雰囲気ですが、お楽しみいただければ幸いです
    今週のクリスタニア編と矛盾しないといいなあ…(直し入るとめんどいなという顔)
    キャンディタフトは甘やかに揺れる / クロアス----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
















     その名の通りに飴で出来ているかのように、小さな白い花は甘く香っていた。

    「クロービスさん。頼まれてたもの持ってきましたけど、どこに置いておきますか?」
    「ああ、机に空きがあるだろう。そこに頼む」
    「はーい」

     年代物の深緑の図鑑から目を上げ指示を出したクロービスは、すぐに意識を机に戻すとリストへチェックを入れる。本日この時間のクロービスの業務は、実験室での魔法薬の調合だった。王城に併設された植物園から運んできた花の色と香りに、何かを思い出したアステルはなんの気なしに口にする。
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    ParAI_t

    DONE※オトメ勇者最新話(第57話)ネタバレ
    お題は「神無月」です
    今週もまたすごい展開でしたねえ
    推しの心情深掘り第2弾ということで、今週の展開を踏まえた今回もまるで先行きが明るくはないお話です
    毎週のお題に合わせて可能な限り続けていきたいけど、多分そのうち矛盾すると思う(確信)
    書いてて思ったけど、メインストがトゥルー爆走してるなあと思うと同時に箸休め回をくれ…!
    イチャコラさせる暇がないんだよなあ
    裁きの光は虚ろにて / クロアス----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------



















     勇者は、死んだ。エルドアの淡々とした発言を聞いたクロービスは、しばし呆然と立ち尽くしていた。六天魔という異常事態を片付けねばならない、と理性が警告を発しているものの、目の前の光景はとうに現実味を感じられなくなっている。
     いつかの悪夢のように魔物に命を狙われたとしても、守ってやれるはずだった。それがこの現状はどうだろう。女神の声を聴く者は、これほどに呆気なく希望の光を握りつぶし平然としている。傷つき悩み、憂い惑い、それでも譲れないもののために何度でも立ち上がって剣を振るっていた少女を切り捨てる事が、この聖なる地の正義だった。
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