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    ParAI_t

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    ParAI_t

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    「オトメ勇者版週末創作一本勝負」の参加作品です。テーマは第一回の「勇者の目覚め」と「笑顔」のつもり。
    本当はストレートにお題を解釈したメイン寄りの話にしようと思ってたんですけど、「6月だしジューンブライドネタは入れたいよな…」とか欲を出し変則的な話になりました。まあ、今月またそんな感じのテーマ来たらもっかい書けるしいいよねって←
    タイトルに指輪と雄弁をかけたつもりはあるけど、指輪でてきてないな…。

    ##クロアス
    ##ドロライ

    はじまりは銀色な / クロアス 祭壇へと長く伸びる赤い絨毯を、アステルは歩いていた。天井のステンドグラスから注ぐ光は、淡い彩りで床に影を落としている。一歩、また一歩とそちらへ近づいていけば、永遠の愛を誓う相手の様子がはっきりと見えた。
     着慣れない裾の長いドレスやこれからの一連の儀式に緊張しているアステルへ、『大丈夫だ』と言うように優しい眼差しが向けられる。とくんと胸が高鳴ると、張りつめていた気持ちは身体の奥から沸き上がる柔らかで温かい想いに解されていった。足が進むごとに、これから始まる未来への喜びと幸福が満ちていく。祭壇の前に着く頃には、頬が色づく理由は希望に溢れたものに変わっていた。そのまま、いつの間にか諳んじる事ができるようになった宣誓を終え、隣の男性と向かい合う。
     目の前に立つクロービスは、穏やかな笑みを湛えアステルを見つめていた。



    「という夢を見たんですけど」
    「……本人に直接その話をする度胸だけは評価してやろう」
    「ええっ、でも他の人に話すのは少し気恥ずかしいですし」
    「なぜ他人に話す前提なのかね……!」
    「すみません。起きてからずっと頭を離れなくてつい」
     テーブルの対面に座る申し訳なさそうなアステルに、まったく、とクロービスは深い溜息をつく。話を聞いている間は手をつけることができなかったティーカップを傾ければ、適温を失った紅茶が冷たく喉を濡らした。ここ最近は勇者として実績を上げ、サミットでは世界の希望として存在を示したものの、それは魔王との戦いが着実に迫っているということでもある。グランスレイヤーが決定していないこの状況で他の者に同じ事を言ったら妙な勘違いをされかねぬぞ、と釘を刺そうとしたところで、アステルの口から思いもかけない一言が飛び出した。
    「それに『悪い夢は人に話すと正夢にならない』って先生から教わったので」
     ぴしり、とここまで和やかだった空気が一瞬にして固まる。クロービスは僅かに目を見開き、急速に温度を失った声を努めて冷静に絞り出した。
    「くだらぬ迷信だな。それに不本意かもしれぬが、仕方がないであろう。夢とはそういうものだ」
    「でも、放っておいて好きでもない人と結婚する事になるのは嫌なんじゃ」
    「……人の夢の中にまで責任は持てぬよ。それほど不快ならさっさと忘れたまえ」
     眉間のシワをいつになく深め、クロービスは紅茶を飲もうとカップに口をつける。空になっているそれに一段と溝を深くすれば、困惑した顔のアステルと目が合った。
    「なんだ。まだ言い足りないことがあるのかね」
    「ええと、クロービスさんが私と結婚するのは嫌なんじゃないか、というつもりだったんですけど」
     語った内容の通り、アステルにとってあの夢は、ふわふわとした心地で落ち着かなくはあったが、決して嫌なものではなかった。ただ、恥じらいから心の内に秘めることと、万が一にもクロービスの意思を無視するような結果となることを秤にかければ、結果は言うまでもないもので。怒られるか呆れられるといった反応を覚悟して話し始めたのに、蓋を開けてみればそのどちらでもない少し困ったような色が瞳へと宿っていた。
     そこから正夢の話をした途端に、暗く何かを思い詰めたような翳りが過り、瞬時に消えた。そのまま続いた会話にどこか噛み合わないものを感じてよくよく反芻すれば、アステルが嫌がっている前提であり、クロービスから否定的な見解は返ってきていなかった。
     それなら、と変わった表情が指し示す答えが、夢と同じく頬を染めていく。困らせてしまうかも、という躊躇いを押しのけて、確かめるための質問がアステルの口から滑り出ていた。
    「つまり、その。もしかして、話さない方がよかった夢ってこと、ですか……?」
     どのような回答であれ著しく物事の順序を変えかねない問いに、クロービスは言葉を詰まらせる。火傷をしそうなほどの熱が、舌に乗り意味を持ってしまうのは時間の問題だった。
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    ParAI_t

    MOURNING11月のカレンダー没案です。
    クリスタニア編でリーン様が不穏なこと言ってた印象が濃い辺りの頃に書いたので、今思うと「とにかく無事に終われ!?」みたいなノリをひしひしと感じる←
    アプリ版だと第一部のラクリモッサでしばらく三柱でお茶会してないみたいな話があったので、こんな風な日常に戻ってたらいいよねぇみたいな願いを込めてます。
    いやぁ、今週のクリスタニア編も楽しみですね☺️
    11月カレンダー没案(サシャ・リーンハルト) ほう、とついた息が白く漂う。もうそんな
    季節になったんですねー、としみじみとして
    サシャは陶器の音をテーブルに響かせた。
     本日の茶会は鮮やかに色付いた秋を
    鑑賞しようと屋外で行うことになっている。
    外気での冷却も計算に入れてあるから、
    ティーポットの中身はそろそろ飲みごろに
    なるはずだ。あとは二人を待つだけですね、
    と視線を上げれば、はらりと赤や黄が高い
    空に散っていた。かつての戦いと同じ季節が
    これほどまでに穏やかに過ごせているのだ、
    とサシャはゆるりと目を細める。
    「おや、あいつはまだ書類と格闘中かな」
    「年の変わり目も近いですからねー。魔道
    交信ではもうすぐ来ると言ってましたがー」
     そうしてさらりと金の髪を揺らす赤い鎧も、
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    ParAI_t

    DONEドロライ参加作品です。お題は「いい夫婦の日」。
    モブ秘書がクロアス夫婦+子供を観察してる謎の話になります。需要は私にある(澄んだ瞳)
    キャラスト3話で父さん母さん呼びしてたのに、なんか今は父上母上呼びしてるから、つまり結婚後はこんなんじゃない?みたいなノリで書きました。
    いずれ職場で「パパは〜」とか言っちゃう話も書きたい。結婚後でなくても天惺獣関係ならスレイヤー全員やらかせる余地はあるしな…!←
    困惑メラビアン−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−































     どうも直属の上司は厳しい人柄、らしい。風の噂でそんな評判を聞きつけて、グランロット王国宮廷魔道士長、クロービス・ノア付となった新任秘書は、緊張に身を固くして部屋の扉を叩いていた。出迎えた予想と違わぬ鋭い眼光に気圧されつつも、準備をしていた甲斐もあり用件は滞りなく進んでいく。
     魔王との長きにわたる戦いを終えたグランスレイヤーともなればこの威厳も当然か。多方面に渡る業務内容を迅速かつ正確無比にこなしていく姿に、秘書は自分なりに答えを得て、一礼し退出しようとする。そうして顔を上げた刹那、廊下からかすかに幼子の声が聞こえてきた。
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    ParAI_t

    DONE※いつも以上に原作の行間にクロアスをねじ込んでいます
    ※※特に本筋ではないのですが、若干ガレル・パレル編のネタバレを含みます

    オトメ勇者初恋Webアンソロジー寄稿作品になります
    ほぼほぼ謎の青年C(AとBがないのが作為的とか言わない)が活躍しているクロアス(?)な雰囲気ですが、お楽しみいただければ幸いです
    今週のクリスタニア編と矛盾しないといいなあ…(直し入るとめんどいなという顔)
    キャンディタフトは甘やかに揺れる / クロアス----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
















     その名の通りに飴で出来ているかのように、小さな白い花は甘く香っていた。

    「クロービスさん。頼まれてたもの持ってきましたけど、どこに置いておきますか?」
    「ああ、机に空きがあるだろう。そこに頼む」
    「はーい」

     年代物の深緑の図鑑から目を上げ指示を出したクロービスは、すぐに意識を机に戻すとリストへチェックを入れる。本日この時間のクロービスの業務は、実験室での魔法薬の調合だった。王城に併設された植物園から運んできた花の色と香りに、何かを思い出したアステルはなんの気なしに口にする。
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    ParAI_t

    DONE※オトメ勇者最新話(第57話)ネタバレ
    お題は「神無月」です
    今週もまたすごい展開でしたねえ
    推しの心情深掘り第2弾ということで、今週の展開を踏まえた今回もまるで先行きが明るくはないお話です
    毎週のお題に合わせて可能な限り続けていきたいけど、多分そのうち矛盾すると思う(確信)
    書いてて思ったけど、メインストがトゥルー爆走してるなあと思うと同時に箸休め回をくれ…!
    イチャコラさせる暇がないんだよなあ
    裁きの光は虚ろにて / クロアス----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------



















     勇者は、死んだ。エルドアの淡々とした発言を聞いたクロービスは、しばし呆然と立ち尽くしていた。六天魔という異常事態を片付けねばならない、と理性が警告を発しているものの、目の前の光景はとうに現実味を感じられなくなっている。
     いつかの悪夢のように魔物に命を狙われたとしても、守ってやれるはずだった。それがこの現状はどうだろう。女神の声を聴く者は、これほどに呆気なく希望の光を握りつぶし平然としている。傷つき悩み、憂い惑い、それでも譲れないもののために何度でも立ち上がって剣を振るっていた少女を切り捨てる事が、この聖なる地の正義だった。
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    recommended works

    ParAI_t

    DONE予期せぬエラーが発生しました / クロアス

    みみみさんのツイートを思い出し笑いしてたら、興が乗ってしまったので書きました
    予定では前者を採用するはずだったのにおかしいな…?🤔
    いつも以上にやらかしているクロービスさんをお楽しみください←
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    書庫の貸し出しカウンターの奥にある、司書室の休憩スペースにて。平素はグランロットの死神と恐れられる黒魔道士が、生気を失いテーブルに突っ伏していた。

    「いっそ殺してくれ……」

    クロービスとは長いつき合いになるがこんな顔は初めて見るかもしれない、とサシャとリーンハルトは苦笑する。
    先日レースで出くわした魔物からアステルをかばった際に、クロービスは一時的に記憶をなくしていた。現在は記憶を取り戻したものの、喪失中に恋人へ酷い態度をとった事が忘れられないらしい。顔を合わせるのが気まずいためか、ここ連日アステルから逃げ回っている。

    「魔物の影響ですし、彼女も気にしないといってましたよー?」
    「だからといって許されることではないだろう……!」
    「そもそも普段から、落差を感じられるほど優しくもしていないでしょうに」
    「……うるさい」

    キッと睨み付けるクロービスに、彼女から聞いた話が元なんですが、という言葉をリーンハルト 2801