「七回」
決して楽では無いけれど負ける要素もなかった戦闘が終わり、路地裏の壁に寄りかかってゆっくり煙草をふかしていると、ムルソーが唐突に話しかけてきた。
「何がだ」
「昼時に貴方が私の方を見やった回数」
いつもの言葉足らずだと聞き返したら、次に続く言葉にむせそうになった。何とか平静を保って細く長く煙を吐く。
しらけた目を向けてやっても顔色一つ変えずにさらに言葉を続ける。
「それから、先の戦闘中、状況確認以外で私を見た回数が十二回」
「それが何だってんだよ」
煙草を取り落とした。誤魔化すのにそのまま始めから吸い終わるつもりだった風を装って、落とした煙草の火を消すのに靴の裏を押し付ける。
……いやぁ、結構見てるな、俺。というかなんでこいつはそれを把握してるんだ。
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