一応現役の警察官であろう男がこの風貌で佇むのは如何なものだろうか。
火も付いていない煙草を咥えてぼんやりとしている男を遠目に眺める。これは何徹目だ。一体どこの沖田くんに逃げられたんだ。
「おつかれさん、大丈夫? 生きてる?」
「いきてる、一応な」
「一応生きてるってどんな状況?」
土方はぐっと肩甲骨を付けるように伸びをしたあと深く息を吐いた。これは相当お疲れのようだ。
「……癒しが欲しい」
彼の目線の先にはぽてぽてとご機嫌そうに歩くふわふわのポメラニアンがいた。ああ、確かにもふもふふわふわは癒されるよな。俺も疲れたときは定春に顔を埋めてあの香ばしい香りを吸い込んでいる。寝ているときのにおいは格別だ。
「仕事は?」
「一段落はついた。昨日が山場でな、今朝方漸く落ち着いた。今日はこのまま直帰したら休みだ」
「ふーん、じゃ、うち来る?」
「あ?」
「そんなんじゃ帰るまで持たないだろ。どうせ沖田くんもどっかでサボってるんだろうしこんな天気がいい日に馬鹿やらかすやつらもいねーでしょ。じゃあこのままうちに来てちょっくら休んでってもいんじゃね?」
どうよ? と首を傾げると一瞬の間のあと小さく「行く」と返ってきた。
「んじゃさっさと帰ろうぜ。うちにはそれなりに癒しアイテム揃ってますよ〜」
今週のジャンプでしょ、あー、えーっと、うちのイチオシ定春くんでしょ。あとは、えー、あ、昨日依頼のお礼に貰ったあずきバーが一本だけ残ってる! 特別出血大サービス持ってけドロボー! どうだ、すごいだろう。
「ん……」
大変眠そうである。または全く興味が無い反応である。ちくしょう、うちの自慢の品々が……ちくしょう。
「んもー、じゃ、俺とかどう?」
「いる」
さっきまで話聞いてるのかこいつ、ちくしょう殴ってやろうか、とか思ってたのになんだ今の即答は。なんだそれ。
「すげぇ即答じゃん、なに、おっぱい揉む?」
「揉む」
即答である。ちゃんと返事してるから聞いてるんだろうが、やっぱり疲れているらしい。ツッコミがないというか、こいつはガチだ。
「揉むし吸わせろ、しゃぶらせろ、おれを乳幼児のように甘やかせ」
「乳幼児はおっぱいをそんないやらしい目でみませーん」
「じゃあ29歳児を甘やかせ」
「へいへい。ぽんぽんなでなでしながら寝かしつけてやりますよ」
「そこはなでなですんのはぽんぽんじゃなくてちん」
「副長さんだいぶお疲れだね? キャラ変わってんよ、さっきも大概だったけどね? 帰ってさっさと寝てくれ」